「透析中の低血圧対策」を医師が解説 普段の生活から意識しておくべきこととは
透析治療中、血圧が下がることがあるのをご存知でしょうか。透析中に低血圧が起こるのはよくありますが、どのように対策しているのでしょうか。医療法人社団大坪会 東和透析クリニックの大坪先生にを取材しました。
※この記事はMedical DOCにて【血液透析中や透析後の不快な症状、その原因と対処法を解説】と題して公開した記事を再編集して配信しており、内容はその取材時のものです。
監修医師:
大坪 茂(東和透析クリニック)
編集部
低血圧の症状を起こさないようにする対処法には、どのようなものがありますか?
大坪先生
「体液量が適正で、透析中に過度の血圧低下を生じることなく、かつ長期的にも心血管系への負担が少ない体重」をドライウェイトと言います。透析後の目標体重に関与しますが、そのドライウェイトの設定が低すぎて、除水しすぎると、血圧が下がります。それゆえに、適切なドライウェイトの設定が極めて重要です。ドライウェイトの適正値は、患者さんの体調や食事内容などに応じて、透析ごとに見直していきます。夏場は痩せて、冬場は太るなど、季節によって変わる場合もあります。
編集部
ドライウェイトはどうやって判断していくのでしょうか?
大坪先生
透析中の血圧が低下する場合は、除水過剰でドライウェイトの設定を上げた方がいい可能性があります。透析後半や透析後に下肢つり、ふらつき、耳閉感、耳鳴りといった症状が出現する場合も同様に上げた方がいいかもしれません。検査としては、心臓の大きさを胸部X線写真で見る方法があります。「血管の中の血液の量」が多ければ、心臓は通常より膨れています。また、エコー検査なども併用することがあります。もう1つは、血中の「利尿を促すホルモンの量」を測る方法です。体内の水分が多ければ、「オシッコをつくれ」と命じますから、そのサインの程度を血液検査で確認します。一例として、ANPというホルモンの透析後の目標値は、血液1mlあたりだいたい40~60pg(ピコグラム)です。もっとも、ANP値は心臓の病気によっても変動しますから、総合評価が必要です。
編集部
しかし、血圧は血管外からの水分の取り込みでも変わるのですよね?
大坪先生
そのとおりです。ですから、透析の除水スピードと取り込みのスピードのバランスを見ることも大切です。取り込みのスピードが追いつかないと、「体はむくんでいるのに血圧が下がってしまい除水できない」という事態になりかねません。これを防止するには、除水のスピードを緩めて、あえて時間をかけて透析する「長時間透析」という方法があります。しかし、患者さんの自由時間を、より長く拘束してしまう欠点があります。
編集部
時間の拘束を嫌がる患者がいるかもしれませんね。続けて、血圧を安定させるほかの方法についても教えてください。
大坪先生
普段の生活で塩分や水分の摂りすぎによる“過度な”体重増加を防ぐことも重要です。体内に余計な水分を蓄えさせない方法とも言えるでしょう。塩分を摂取するとその分、水分も蓄えられます。また、塩分の濃い食事は水を飲みたくなりますから、塩分制限が欠かせません。