【おしりからの出血】実はがんの可能性も…病院ではどんな検査をしているのか医師に聞く
おしりから出血があった際、「痔だろう」と軽く考えていませんか? 実際に痔であるケースが多いのは事実ですが、中には「大腸がん」だったというケースもあるそうです。クリニックでは、「おしりから出血」があった場合、どのような検査で原因を特定しているのでしょうか。お茶の水駿河台クリニック院長の山田先生に教えてもらいました。
※この記事はMedical DOCにて【おしりから「出血」 何科を受ければいい? どんな検査が必要?】と題して公開した記事を再編集して配信しており、内容はその取材時のものです。
監修医師:
山田 篤生(お茶の水駿河台クリニック)
編集部
おしりから血液が出た場合は、どのような検査を行うのですか?
山田先生
おしりからの出血でもっとも多いのは、痔です。痔が疑われる場合は、肛門付近から出血しているということなので、直腸診を行うのが一般的です。これは医師が肛門から指を入れ、視診、触診によって患部を診察します。肛門や直腸の状態を直接たしかめ、痔核や腫瘍がないかも確認します。また、肛門鏡という金属の筒を挿入して、より深く痔の状態を確認します。
編集部
そのほかにはどんな検査が行われますか?
山田先生
黒色の便が排泄される下血の場合には、胃や十二指腸など上部消化管での出血が疑われるため、胃の内視鏡検査を行います。これにより、出血している部分を特定することができますし、粘膜を直接採取して生検に出すこともできます。また、その場で止血治療を行うこともできます。
編集部
下部消化管からの出血が疑われる場合は?
山田先生
鮮血色の便が排泄される場合は、大腸など下部消化管での出血が疑われるため、大腸内視鏡検査(大腸カメラ)を行います。大腸カメラでは、肛門から内視鏡を挿入し、直腸から盲腸までの大腸全域の粘膜を直接観察します。この検査をすることで、出血している部分を特定することができますから、すぐに止血治療を行うこともできます。また、病変や炎症がないかどうか確認したり、組織を採取して生検を行ったりすることができます。
編集部
受診したその日に検査を行うことができるのですか?
山田先生
大量に出血している場合など、医師が緊急で検査を行う必要があると判断したら、その場で検査を行うこともあります。ただし本来、大腸カメラを行うときは、事前に大量の下剤を飲み、腸の中をきれいにしておく必要があります。緊急の場合はすぐに下剤を飲んでもらい、検査を行いますが、もしお尻に血液がついた程度であれば、改めて検査日を予約していただくこともあります。
編集部
上部消化管でも下部消化管でも、内視鏡検査を受ける必要があるのですね。
山田先生
おしりから出血した場合は、上部消化管でも下部消化管でも内視鏡検査を受ける必要があります。内視鏡検査を受けることで出血する原因を見つけることができるからです。また、痔や潰瘍などの良性の病変から出血することもありますが、胃がんや大腸がんなど悪性の病変から出血することもあるため出血する原因を見つけることはとても大切です。内視鏡は辛いというイメージがあるかもしれませんが、静脈麻酔を使ってウトウトとした状態で検査を行うなど、苦しくない方法もあります。検査が怖い人は、医師に相談してみると良いでしょう。
編集部
最後にメッセージをお願いします。
山田先生
おしりから出血した場合、「きっと痔だろう」と油断しがちです。しかしあとで検査を行ってみると、胃がんや大腸がんが見つかるケースも少なくありません。しかも、がんである場合におしりから出血しているということは、かなりがんが進行している状態であることも多いのです。おしりから出血しているというのは緊急性の高い異常事態と捉え、早急に医師の診察を受けましょう。また痔がある場合でも、奥に大腸がんが見つかることもありますから、痔の有無にかかわらず、大腸カメラを受けることをお勧めします。