「日中の強い眠気」は何科を受診したらいい? 治療・検査方法を併せて医師が解説
日中に異常な眠気をきたす「ナルコレプシー」。病気だと気づかず、放置している方も多いと思います。しかし、睡眠に関する治療は何科で受けることができるのでしょうか。眠りと咳のクリニック虎ノ門の栁原先生に伺いました。
※この記事はMedical DOCにて【日中に強い眠気「ナルコレプシー」を医師が解説 セルフチェック・セルフケア方法などを知りたい!】と題して公開した記事を再編集して配信しており、内容はその取材時のものです。
監修医師:
栁原 万里子(眠りと咳のクリニック虎ノ門)
編集部
「ナルコレプシーかも」と思ったら、何科を受診すれば良いのでしょうか?
栁原先生
※日本睡眠学会のHP
https://jssr.jp/list
編集部
「眠気」という症状を起こす疾患は、ナルコレプシー以外にもあるのですか?
栁原先生
あります。睡眠に関しては、例えばナルコレプシーと同じ中枢性過眠症群である特発性過眠症、ほかにも睡眠時無呼吸症候群やむずむず脚症候群、周期性四肢運動障害などの睡眠障害が原因となる眠気もあります。睡眠不足や交代勤務などの睡眠習慣の問題や蒸し暑い、騒音が気になるなどの寝苦しい寝室環境が原因となることもあります。
編集部
知らないだけで、いろいろあるのですね。
栁原先生
睡眠障害以外にも、甲状腺機能低下症や低血糖などの眠気を生じる内科疾患、神経筋疾患、脳神経疾患もありますし、痒みや痛みのために深く眠れない場合や使用中の薬剤の影響による眠気もあります。発達障害でも突発的な眠気を生じるケースもあります。精神疾患であるうつ病では不眠を生じることが広く知られていますが、逆に過眠を生じるケースもみられます。このように「強い眠気」を生じる原因はたくさんありますので、これらを丁寧に鑑別し、適切にナルコレプシーの診断・治療を行える睡眠専門医とつながる必要があります。
編集部
ナルコレプシーはどのような検査を行うのですか?
栁原先生
ナルコレプシーを診断するために必要な検査は2種類あります。全身にたくさんのセンサーを装着して1晩病院に泊まる(眠る)「終夜睡眠ポリグラフ検査(polysomnograph/PSG)」と呼ばれる検査と、その翌日に行う「睡眠潜時反復検査(multiple sleep latency test/MSLT)」です。
編集部
検査はどのように行うのですか?
栁原先生
まず「PSG」で、眠りを浅くさせるようなほかの睡眠障害がないか、REM睡眠(夢をみる睡眠)の出方にナルコレプシーの特徴がないかなどを確認します。翌日に施行する「MSLT」では、脳波のセンサーをつけた状態で午前から午後にかけて2時間ごとに寝たり起きたりを繰り返します。MSLTでは、入眠までにかかる時間の平均やREM睡眠の出方にナルコレプシーの特徴がないかを確認します。
編集部
ナルコレプシーと診断されたら、どのような治療を行うのですか?
栁原先生
ナルコレプシーの原因は、脳髄液中のオレキシン濃度の低下や遺伝要因の可能性が考えられています。オレキシン関連についてはここ10年間で飛躍的に研究や創薬が進んでいるため、ナルコレプシーを原因から治療する方法が遠くない将来に開発されるのではないかと期待されています。しかしながら、現時点では原因からナルコレプシーを治す「根本治療」の方法がありません。このため、症状である「自制のできない強い眠気」をコントロールするために、目を覚まさせる薬を内服する「対症療法」を行います。
編集部
治療の効果はどれくらいで現れるのですか?
栁原先生
早ければ治療を開始したその日から効果は得られます。効果が不十分な場合には、必要に応じて用量や薬の種類をその人それぞれに合わせて調整します。ナルコレプシーの眠気は歳をとるにつれて徐々に軽減すると考えられていますが、日常生活や社会生活で支障のないレベルになるまで長期間を要します。困っている場合には、できるだけ早いタイミングで診断を受け、治療を開始することで人生の中で眠気に支配される時間が減り、就労や修学、日常生活での居眠りによる弊害を改善することができます。運転免許も適切に治療していることを前提に、取得することが可能です。ナルコレプシーは診断・治療をすることにより社会的にも個人的にもQOLを改善できる疾患と言えるでしょう。