成人女性10人に1人がかかる「橋本病」の症状・原因・甲状腺への影響はご存じですか?
橋本病とは本来、外部から入った細菌やウイルスを攻撃するはずの免疫細胞が、自分の細胞を攻撃してしまう自己免疫疾患の一種。原因はまだ解明されていないそうです。医師の田口学先生(むさしの糖尿病・甲状腺内科)は、橋本病になると甲状腺ホルモンの働きが低下すると言います。また、喉の下の辺りが腫れたり大きくなったりするとも。詳しく教えてもらいました。
監修医師:
田口 学(むさしの糖尿病・甲状腺内科)
編集部
まず、橋本病について教えてください。
田口先生
一言で言えば、橋本病は自己免疫疾患の一種です。自己免疫疾患とは、外部から体内に侵入してきた細菌やウイルスを攻撃するはずの免疫細胞が、誤って自分の細胞を攻撃してしまう疾患のことを指します。橋本病は、この免疫細胞の攻撃によって「甲状腺」という喉の下のあたりに存在する組織が攻撃されてしまうのです。
編集部
甲状腺が攻撃されると、どうなるのでしょうか?
田口先生
攻撃を受けた甲状腺の組織は徐々に破壊され、代謝など全身の機能の調整をおこなう甲状腺ホルモンの働きが低下します。その結果、「甲状腺機能低下症」という状態になってしまうこともあります。甲状腺機能低下症になってしまうと、全身の倦怠感やむくみ、便秘、寒がりなどを生じることもあります。また、多くはありませんが、月経過多になる女性もいらっしゃいます。
編集部
橋本病には、どのような症状がみられますか?
田口先生
甲状腺が炎症を起こすため、喉の下の辺りが腫れたり大きくなったりするほか、それに伴って喉の圧迫感や違和感を生じることもあります。ところが、橋本病を発症しただけでは自覚症状が乏しいこともあります。
編集部
橋本病になってしまう原因はなんでしょうか?
田口先生
自己免疫疾患の1つなので、免疫の異常によるものと考えられていますが、はっきりとした原因はよくわかっていません。ストレスやホルモンバランスの異常が原因という説もありますが、メカニズムは未だ解明されていないのが現状です。
編集部
橋本病になりやすい人の特徴とかは、あるのでしょうか?
田口先生
橋本病は、成人女性の10人に1人が発症すると言われており、とくに30~40代の女性に多くみられる傾向にあります。また、男性でも40人に1人が発症するということも分かっているため、比較的発症頻度の高い疾患と言えるのではないでしょうか。その一方、子どもで発症するケースは稀です。