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【認知症の方との接し方③】ケーススタディから学ぶ対処法

 更新日:2023/12/22

現在、65歳以上の約16%が“認知症”であると言われています。「家族が認知症になり、どう接すればいいのかわからない……」という経験をされた方も多いと思います。認知症の家族との接し方について「里村医院」の里村先生に学ぶ特集の第3回。
今回は「ケーススタディから学ぶ対処法」について解説していただきました。

里村 元

監修医師
里村 元(里村医院)

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川崎医科大学卒業。杏林大学医学部付属病院などで高齢者医療を中心に診療を積む。2015年、父親が院長を務める「里村医院」の副院長に就任。特別養護老人ホームの嘱託医も兼任している。日本医師会認定産業医、日本老年医学会専門医・指導医、日本循環器学会専門医、日本認知症学会専門医、日本内科学会専門医。難病指定医、認知症サポート医。

編集部編集部

具体的なケーススタディについても知りたいです。

里村 元先生里村先生

わかりました。仮に、認知症患者さんが「お財布を盗まれた」と訴えていたとします。このとき、認知症患者さんはうすうす、「もしかしたら自分でなくしたかもかもしれない」ことに気づいている可能性があります。しかし、「お財布を盗まれた」と言っておけば、自分が責められることはないと考えるでしょう。いわば自己防衛反応なので、否定されると攻撃を受けたと反発してしまいます。ですから、ご家族の人は心当たりを中心に一緒に探してあげてください。ご本人が発見すると、なくしたことを人に非難されませんから、自尊心は守られます。

編集部編集部

極端な例として、「自分の便を食べるような深刻なケース」も耳にしたことがあります。

里村 元先生里村先生

実際、そのようなケースもあります。認知症患者さんが気にしているのは、「お漏らしをして、人から非難されること」です。そこで最も単純な方法として、便を口に入れて、お漏らししなかったことにしようとするのです。必ずしも便を食べたかったわけではなく、人から怒られるのが嫌なんですね。この場合の解決方法は、お漏らしの防止です。総じて、尿を含めた“排せつの問題”が出てきたら、介護サービスや施設入所などの「外部の助け」が必要ですね。ご家族だけでの対策は難しいと思います。

編集部編集部

あとは、徘徊(はいかい)なども問題になっていますよね?

里村 元先生里村先生

そうですね。おそらくご家族が、認知症患者さんにとって「居づらい環境」をつくりだしているのだと思われます。「嘘をつかれる」「強く指摘される」「信頼できない」などが原因として考えられますね。そこで認知症患者さんは、「自分が必要とされる本来の居場所」を探そうと家出するわけです。「居心地のいい場所で安心して暮らしたい」という正常な感情は、最後まで残ります。ですから、地域のケアマネージャーなどへ頻回に相談し、「居心地のいい環境」を整えてあげてください。

編集部編集部

だいぶ方向性が整理されてきました。最後に、読者へのメッセージがあればお願いします。

里村 元先生里村先生

ぜひ、「認知症のご家族を何もなくとも褒める」という行動を取り入れましょう。ドーパミンという快楽ホルモンは、褒められた側にも褒めた側にも分泌されます。具体的な心当たりがなかったとしたら、「いつも、いてくれてありがとう」でも構いません。親が長生きしてくれると、実際に嬉しいですよね。その感謝の気持ちを忘れずに、いち早く怒りの段階から、平和な割り切りや受容の段階へ移行してください。

この記事の監修医師

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