医師が薦める睡眠の質を高めるコツや理想の睡眠時間・生活習慣とは
「1日の理想の睡眠時間は7時間」という説を耳にした人は多いと思います。はたして、この説に根拠はあるのでしょうか? 今回は、適切な睡眠時間や睡眠の質を高めるコツについて「リブ再生クリニック」の住吉先生に解説していただきました。
監修医師:
住吉 公洋(リブ再生クリニック)
編集部
理想的な1日の睡眠時間は「7時間」と聞いたことがあります。実際はどうなのでしょうか?
住吉先生
たしかに、様々な疾患率が低かった睡眠時間は「7時間」という研究結果があります。統計的にはそうなのですが、満足できる睡眠時間には個人差があるでしょう。また、高血圧症による夜間頻尿のように、「抱えている不具合が、満足できる睡眠時間を左右する」こともあります。こうした前提条件や属人性を外して、あくまで一般的なデータとして考えると、「理想的な1日の睡眠時間は7時間」なのだと思います。
編集部
なかなか寝付けない状態は病気なのでしょうか?
住吉先生
それぞれの人の「睡眠のリズム」に左右されるためなんとも言えません。例えば、夜勤などが多ければ、入眠リズムは後ろに引っ張られます。この状態が病気かと言われると、難しいですよね。他方で、寝付けないことで何かしらの不都合が出たら、その中身によっては病気とみなされます。加えて、眠れないことを悩んでうつ状態などに至れば、「こころの病気」とみなされることもあり得ます。
編集部
睡眠のリズムが乱れる原因はなんでしょうか?
住吉先生
一例を挙げると、寝る前にスマホを使うことにより、ブルーライトの光で昼間だと勘違いしてリズムが狂うことが考えられます。また、ブルーライトが睡眠ホルモンと言われている「メラトニン」の分泌を減らしたり、レム睡眠とノンレム睡眠のリズムを狂わせたりするという研究報告もあります。スマホに限らず、例えばパソコンでゲームなどをしていても、脳が興奮します。そのため、就寝の1時間前には、スマホやパソコン操作を控えるようにしましょう。
編集部
ほかにも、睡眠の質を高める方法があったら教えていただきたいです。
住吉先生
朝起きたときに日差しを浴びることでしょうか。これで、1日のリズムが整います。あるいは「朝の味噌汁」ですね。味噌のような大豆食品には、メラトニンの素となる「トリプトファン」が含まれています。また、寝る前に湯船に浸かって体温を高めるのも効果的です。入浴によって上がった体温が“下がるとき”に眠気をいざなうとされています。
編集部
睡眠障害としての治療が必要なのは、どのレベルからなのでしょうか?
住吉先生
日中の眠気が気になるなど、「生活に支障をきたしていたら」相談しましょう。また、肥満の人は、睡眠時無呼吸症候群(SAS)になりやすく、睡眠の質を下げている可能性が高いですね。そのため、自分の睡眠の状態を気にかけてみてください。なお、治療の進め方として、ただちに睡眠薬の処方となるかどうかはわかりません。高血圧のように「今、すでに起きている不具合」の治療を優先する場合もあります。
編集部
あらためて、睡眠とどのように向き合えばいいのでしょうか?
住吉先生
睡眠不足を「時間」という軸だけで捉えないでいただきたいですね。睡眠が足りていないかどうかは、ご本人の感覚や睡眠のリズム、抱えている不具合などによって左右されます。ですから、まずは、健康診断の結果に留意してみましょう。何かしらの指摘があったら、それと、自分の睡眠の状態を結び付けてみてください。自営業や主婦の人で健診機会がなければ、「睡眠の不満」を受診動機としていただいて構いません。
編集部まとめ
朝起きたらまず日の光を浴び、寝る前はスマホやパソコンを触らないことで、徐々に睡眠のリズムが整ってくるとのことでした。睡眠の質の低下は生活にも影響が出てくるので、意識的に正しい習慣を取り入れていきたいですね。