「コレステロールの薬」は何種類あるかご存知ですか?【医師解説】
公開日:2025/12/01

メディカルドック監修医がコレステロールの薬の種類などを解説します。
※この記事はメディカルドックにて『「コレステロールの薬を飲み続ける」とどうなるかご存知ですか?医師が徹底解説!』と題して公開した記事を再編集して配信している記事となります。

監修医師:
木村 香菜(医師)
プロフィールをもっと見る
名古屋大学医学部卒業。初期臨床研修修了後、大学病院や、がんセンターなどで放射線科一般・治療分野で勤務。その後、行政機関で、感染症対策等主査としても勤務。その際には、新型コロナウイルス感染症にも対応。現在は、主に健診クリニックで、人間ドックや健康診断の診察や説明、生活習慣指導を担当している。また放射線治療医として、がん治療にも携わっている。放射線治療専門医、日本医師会認定産業医。
目次 -INDEX-
コレステロールとは?(悪玉LDL/善玉HDL)
コレステロールは細胞膜やホルモンの原料など、体内で重要な役割を担う脂質です。 コレステロールは「リポタンパク」という運搬役に乗って、肝臓から血液を通じて全身に届けられます。 コレステロールに「HDL(善玉コレステロール)」と、「LDL(悪玉、コレステロール)」の2種類があります。ここでは、こうしたコレステロールについて解説します。善玉コレステロール(HDLコレステロール)
HDLは全身の細胞から不要になったコレステロールを集めて回り、肝臓に戻すはたらきがあります。 HDLは血管内の余分なコレステロールを取り除くため、「善玉コレステロール」と呼ばれます。HDLが不足すると、動脈硬化のリスクが高まります。悪玉コレステロール(LDLコレステロール)
LDLはリポ蛋白に乗って肝臓から全身の組織や細胞へ運ばれます。細胞膜やホルモンの材料になり、人体を支える材料になります。大事な役目ですが、増えすぎると血管壁に蓄積し、動脈硬化を引き起こします。このはたらきが嫌われ、悪玉コレステロールと呼ばれることがあります。コレステロールの薬の種類
LDL(悪玉コレステロール)を抑える薬は種類が多く、患者さん一人ひとりの体質、生活習慣、重症度などに応じて選定します。 コレステロールは肝臓で生成され、血液を通して全身に運ばれます。細胞はLDL受容体を通して取り入れ、細胞膜やホルモンの材料として使います。余分なコレステロールは小腸から吸収されて肝臓に戻り、胆汁に変化させてから排出されます。 コレステロール薬はこのサイクルのどれかに作用して、LDLの量を減らします。コレステロールの薬の中には、HDLを増やすはたらきがあるものもあります。スタチン系
日本の研究で生まれた薬で、HMG-CoA還元酵素という肝臓で分泌される物質を抑えます。その結果、肝臓内で作られるコレステロールが少なくなります。LDLを下げる作用が強く、LDLは20〜50%、中性脂肪も10〜20%下げるはたらきがあります。 効果がとても高く副作用が少ないため、高脂血症の治療はスタチン系の薬から始まることが多いです。エゼチミブ
小腸からコレステロールを吸収するのを阻害する作用があります(小腸コレステロールトランスポーター阻害薬)。胆汁として消化に利用されたコレステロールは小腸で回収され、ふたたび肝臓に送られます。小腸から回収されなかった胆汁は、そのまま大腸を通して排出されます。作用する場所が異なるスタチン系の薬と組み合わせて、より高い効果を狙うために処方します。レジン
陰イオン交換樹脂剤という種類で、肝臓にあるコレステロールを「胆汁(胆汁酸)」に変える作用があります。胆汁は食物に含まれる脂肪を消化するために欠かせない酵素で、コレステロールから作られます。胆汁酸に替えて体外へ排出する、LDL受容体を増やして細胞に悪玉コレステロールを取り込みやすくする、の2つのはたらきがあります。HDL上昇作用もあります。プロブコール
LDLを胆汁に替えやすくし、コレステロール合成阻害作用とコレステロール吸収抑制作用を促す薬です。特に胆汁酸中へコレステロール排泄を促します。LDLの酸化を防ぎ、血管のプラークを作りにくくする作用もあります。需要の減少で、近年は大手製薬会社で製造中止が続いています。アリロクマブ
スタチン系の薬が使えないスタチン不耐の患者さんや、スタチンでも改善しない患者さん、より強い作用が必要な家族性高コレステロール血症や心血管疾患リスクが高い方の治療に使われます。PCSK9阻害薬という薬で、皮下注射で注入するコレステロール治療薬です。 PCSK9というタンパク質は、LDL受容体を分解し、体内のLDLコレステロールを減らしにくくする働きがあります。アリロクマブはこのPCSK9の働きを抑え、LDL受容体を保護することで、より多くのLDLを肝臓に取り込めるようにします。ニセリトロール
LDLを抑える作用もありますが、主に中性脂肪(トリグリセライド)を抑える作用がある薬です。肝臓内での中性脂肪から脂肪酸に変化するはたらきを抑え、肝臓に貯める脂肪酸を少なくします。コレステロールの薬はいつから処方される?
脂質異常症の治療はまず食事療法、運動療法から始まります。治療薬を使わなくても、生活習慣改善をするだけで改善するケースもあります。しかし、こうした生活習慣の改善を行なってもLDLコレステロールが180 mg/dL以上の場合は、薬の処方を検討します。高齢者、高血圧、喫煙習慣など中等度リスク以上の患者さんは、LDLコレステロールが管理目標値を超える場合に処方を検討します。 冠動脈疾患の方は極めてハイリスクなため、LDLが100未満まで減らすために投薬を開始します。家族性高コレステロール血症の方も生活習慣だけでは改善できないので、ただちに治療を開始します。 脂質異常症は生活習慣や老化とかかわりが深いため、長い期間服用します。患者さんのリスク因子や治療状況によりますが、生涯継続することも珍しくありません。「コレステロールの薬を飲み続けると」についてよくある質問
ここまでコレステロールの薬を飲み続けるとどうなるかについて紹介しました。ここでは「コレステロールの薬を飲み続けると」についてよくある質問に、メディカルドック監修医がお答えします。
コレステロールの薬を途中で止めるとどうなりますか?
木村 香菜 医師
LDLコレステロールが再び増え、動脈硬化が進行する可能性があります。心筋梗塞や脳卒中のリスクを避けるため、自己判断での中止は避け、医師に相談してください。
編集部まとめ
コレステロールの薬はHDLを下げて、血管の健康を守り、心筋梗塞や脳卒中の予防に役立ちます。可能性もあるため、定期的な検査が重要です。服用について不安がある場合は医師に相談しましょう。「コレステロール」の異常で考えられる病気
「コレステロール」から医師が考えられる病気は6個ほどあります。 各病気の症状・原因・治療方法など詳細はリンクからメディカルドックの解説記事をご覧ください。循環器内科の病気
- 動脈硬化性疾患
- 脳梗塞
- 冠動脈疾患
- 家族性高コレステロール血症(FH)



