【闘病】後悔は「乳がん」のしこりに気づきながら、病院へすぐ行かなかったこと
乳がんをわずらった闘病者のさほさん(仮称)が経験した治療による体調の変化や、副作用への対処、家族や保険のサポート、さらに心の支えとなった存在について、また日々の生活の中でどのように過ごしていたのか、その具体的なエピソードを語ってもらいました。【前編からの続き】
体験者プロフィール:
さほさん(仮称)
東海地方在住、1984年生まれ。1児の母、子供・夫との3人暮らし。両親も近くに在住。2018年に乳がんと診断され、抗がん剤治療後に右胸の全摘出手術を受ける。術後の分子標的薬による抗がん剤治療や、放射線治療を経て、現在はホルモン療法を継続中。体調は万全ではないものの、普通の日常に感謝しながら過ごしている。ブログ「さほDiary」
記事監修医師:
楯 直晃 先生(宮本内科小児科医院 副院長)
※先生は記事を監修した医師であり、闘病者の担当医ではありません。
編集部
治療中の生活はどのような感じでしたか?
さほさん
抗がん剤治療中で体調がよくないときは、日中ずっとソファーでテレビや撮り溜めたドラマを見ていました。今までこんなにゆっくり毎日を過ごしたことがなかったので、治療中大変なことも多かったですが、「悪いことばかりじゃないな」という気持ちもありました。
編集部
保険も入っていたとお伺いしました。
さほさん
はい。自分は絶対がんになるという謎の自信があったので、がん保険に入っていました。その保険金がまとまってもらえたのと、休職中ということで傷病手当をいただけたので、お金の心配がなくて良かったです。
編集部
副作用で髪の毛が抜けたと伺いましたが。
さほさん
そうなんです。抗がん剤の副作用で髪の毛が抜け始めたとき、鬱陶しくなってバリカンで刈りました。そのとき、笑っていた旦那にムカつきながらも、深刻になりすぎないでいてくれたことに感謝です。娘に髪が抜けた姿を見せるのは心配でしたが「ママかわいい~」って言ってくれて、親バカですがほんとに良い子に育っているなって思いました。ちなみに頭は冬は寒くて、夏は汗が垂れるし、ウィッグが暑いです。
編集部
治療中の心の支えはなんでしたか?
さほさん
娘の存在が大きかったです。当時はまだ3歳だったので、この子を残して死ねないという気持ちでした。「せめて自分のことが自分でできるようになるまで、あわよくば成人するまで、欲をいえば結婚するまで。やっぱり孫を抱くまでは死ねないよね」と思いながら、今も生きています。あとディズニーが好きなので、「元気になって絶対行く」と決めていました。治療が終わって行けたときは本当に嬉しかったです。
編集部
闘病中「やって良かった」と思うことはありますか?
さほさん
ブログ、SNSですね。治療中にもっと活用しておけば良かったなと思っています。私は治療がかなり進んでから、自分の備忘録としてブログ「さほDiary」を始めました。そこでたくさんの乳がんの方と知り合えました。リアルの友達にも病気のことは隠していませんが、気を遣わせてしまっているなと感じることがあります。でも、同じ乳がんで治療を頑張っている仲間がいると心強いです。私の闘病記録はブログにもっと詳しく書かせてもらっています。
編集部
SNSもやっているんですか?
さほさん
私はブログスタートでしたが、TwitterやInstagramでも活発に交流していて、気軽に治療やウィッグ、生活のことなど、なんでも相談できます。乳がんのタイプはすごく多いので、自分と同じ人を見つけると、治療方針や副作用など参考にできることは多いと思います。治療中にSNSをやっていたら、もっと励まし合って治療を頑張れたかなと思いました。なのでまずは、見る専門でもTwitterかInstagramのアカウントを作るのがお勧めです。
編集部
現在の体調や生活などの様子について教えてください。
さほさん
現在はひと通りの治療が終わり、ホルモン療法中ですが、10年続けるらしいので後8年くらいかかります。長いですね。今、30代ですが、職場の50代の方たちと更年期の話題で一緒に盛り上がっています。体調は万全とはいきませんが、こんなもんかなと納得しています。更年期の症状はいろいろありますが、髪の毛が薄くなったのが一番つらいところ。だけど普通の毎日が過ごせています。
編集部
現在、お仕事はされていますか?
さほさん
仕事はフルタイムから週4のパートに変わりました。かなり体が楽です。収入は減ってしまったので、少し副業をしています。20代後半から誕生日がくるのがイヤだなと思っていましたが、今は誕生日を迎えられるのがありがたいです。そして、パートになったことをきっかけに、犬を飼い始めました。癒ししかないですね。
編集部
もし昔の自分に声をかけられたら、どんな助言をしますか?
さほさん
私が唯一後悔しているのは、最初の近所の乳腺科で陰性だと言われたあとの自分の行動です。「じゃあ、このしこりは何だ?」と思ったのに、セカンドオピニオンに行かなかったこと、経過観察中に「もし、しこりが大きくなるなら早めに来て」と言われていたのに、すぐ行かなかったことが悔やまれます。忙しさで不安を隠して後回しにしていたけど、「自分の健康より大切なことはないから早く病院行け」と声をかけますね。
編集部
抗がん剤の治療後に遺伝子検査も行ったと聞きました。
さほさん
はい。「遺伝性乳がん・卵巣がん症候群」(HBOC)を調べる検査をおこないました。保険が適用になったことと、自分が通っている医院でできるようになったからです。結果は陰性でした。娘のためには陰性でよかったけど、自分のためには予防切除したかったですね。
編集部
医療従事者に望むことはありますか?
さほさん
私の治療に携わってくださった先生、看護師さんはみなさんとても親切で優しい方ばかりでした。いつもありがとうございます。
編集部
乳がんを意識していない人に一言お願いします。
さほさん
乳がんは自分で気付くことができる、数少ないがんの1つだし、早く見つかれば治る可能性が高いです。病気が見つかるのが怖くて検診に行かないという人もいるそうですが、知らずに進行してしまうことのほうがもっと怖いです。検診を受けましょう。なにか気になることがあればすぐ病院へ。違ったらラッキー。見つかったら早く見つけられてラッキーです。
※この記事はMedical DOCにて《【闘病】「あのとき乳がんから目を背けなければ…」検診とセカンドオピニオンの大切さ》と題して公開した記事を再編集して配信しており、内容はその取材時のものです。
※本記事は、個人の感想・体験に基づいた内容となっています。2021年8月取材。