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流産・早産を防ぐために! 「頸管無力症」と妊婦健診の重要性を医師が解説

 公開日:2026/01/16
頸管無力症
阿部 一也

監修医師
阿部 一也(医師)

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医師、日本産科婦人科学会専門医。東京慈恵会医科大学卒業。都内総合病院産婦人科医長として妊婦健診はもちろん、分娩の対応や新生児の対応、切迫流早産の管理などにも従事。婦人科では子宮筋腫、卵巣嚢腫、内膜症、骨盤内感染症などの良性疾患から、子宮癌や卵巣癌の手術や化学療法(抗癌剤治療)も行っている。PMS(月経前症候群)や更年期障害などのホルモン系の診療なども幅広く診療している。

頸管無力症の概要

頸管無力症(けいかんむりょくしょう:Cervical Insufficiency)とは、妊娠中の女性の子宮頸管(しきゅうけいかん)がうまく機能しなくなる状態です。

子宮頸管とは子宮の入口にある管状の組織です。妊婦の子宮内で胎児が成長している間は強く閉じていて、通常では出産が近づくまで安定した状態が保たれます。しかし、何らかの原因により早期に子宮頸管が弛緩してしまうことがあり、これを頸管無力症と呼びます。頸管無力症を発症すると、流産や早産など、妊娠が維持できなくなるリスクが高まります。

痛みなどの自覚症状に乏しいことが多く、圧迫感や下腹部の違和感を訴えるケースも一部にはあるものの、まったくの無症状である患者さんも多いのが特徴です。こうした理由により、頸管無力症は検査以外での早期発見が難しいとされています。

頸管無力症の原因はさまざまで、子宮頸管の先天的な弱さを原因とするケースも多く、妊娠中の女性であれば誰でも発症リスクがあります。特に発症リスクが高いとされるのは、双子以上の多胎妊娠である場合、過去に流産や早産を経験している場合、または頸管の手術歴がある場合などです。

治療方法としては、安静を保つなど、妊娠の維持を目的とした管理が中心となります。必要に応じて子宮頸管を縛る手術(頸管縫縮術)がおこなわれます。場合によっては、早産を防ぐためにその他の医療的な介入が行われることもあります。治療法や管理方法は、妊娠の進行状況や患者の体調、リスクの程度に応じて個別に決定されます。

頸管無力症の早期診断と適切な治療は、流産や早産のリスクを軽減し、妊娠を継続するために非常に重要です。妊婦の健康状態を守るためにも、定期的に妊婦健診を受け、医師からの適切な指示に従うことが求められます。

頸管無力症の原因

頸管無力症の原因はさまざまで、すべてが明らかになっているわけではありません。もっとも一般的な原因は、子宮頸管の先天的な弱さや形質異常です。

また、過去に子宮頸部の外科的手術を受けたことが原因で、頸管無力症を発症することもあります。たとえば、子宮頸部の円錐切除術(子宮頸部の一部を切除する手術)やレーザー治療などによって、頸管の構造が弱くなるケースが知られています。

妊娠中に子宮頸管に大きな圧力がかかる状況が続くと、頸管は開きやすくなります。よって、多胎妊娠(双子やそれ以上の多胎)の場合も発症リスクが高くなります。過去に早産や流産を経験したことがある女性も、発症のリスクが高いとされています。

その他、ホルモンバランスの異常や、感染症、外的衝撃などが頸管無力症の原因とされる例もあります。

頸管無力症の前兆や初期症状について

頸管無力症は、通常、妊娠初期から中期にかけて無症状で進行することが多いため、前兆が分かりにくいことがあります。早期発見のためには、妊娠中は定期的に妊婦健診を受けることが大切です。

患者さんによっては、いくつかの兆候や症状が現れることもあります。代表的な症状としては、下腹部の鈍い痛みや圧迫感です。また、腟からの異常な分泌物(透明な粘液や血液)が出ることがあります。子宮が収縮しているような感覚を覚える患者さんもいます。
その他、安静時でも下腹部に重い感じがする場合や、突然の腰痛、骨盤に圧力を感じるなどの症状も報告されています。こうした症状は頸管無力症によるものか判断は難しいものの、普段とは違う痛みや違和感があった場合は、医師に早めに相談することが重要です。

また、前兆や症状とは異なりますが、過去の流産歴や早産歴、手術歴など、この疾患のリスク要因となりうる条件を持つ場合は、できるだけ早期に医師に伝えておくことも、きわめて重要です。

頸管無力症の検査・診断

頸管無力症の診断は、定期的な妊婦健診によりおこなわれるのが一般的です。診断の際にもっとも役立つのは「経腟超音波検査」です。この検査によって、子宮頸管の長さや開き具合を確認することができ、異常が見つかれば早期に対応できます。

経腟超音波検査は通常、妊娠12週から25週の間におこなわれます。頸管が短くなっている場合や、開きかけている場合は、頸管無力症の疑いが強くなります。

頸管に異常が認められた場合、追加の検査が行われることがあります。妊娠を継続した場合のリスクや治療法について検討するために、詳細な検査を受けることが推奨されます。

頸管無力症の治療

頸管無力症が診断された場合の治療法は、妊娠を維持することを目標とした管理が中心となります。

基本となるのは安静による管理です。妊婦の運動などを制限し、できるだけ安静を保つことで頸管がそれ以上開かないようにします。
治療としてもっとも一般的なのは、「頸管縫縮術(けいかんほうしゅくじゅつ)」という手術です。この手術では、子宮頸管を縫い合わせることによって、開き過ぎないようにします。ただし、妊婦や胎児の状態によって手術ができるタイミングが限られることがあり、感染症など他のリスクに対しても十分に考慮する必要があります。

手術がおこなえない場合でも、安静の維持とともに子宮収縮抑制剤(ウテメリンなど)を使って、早産を防ぐことも治療の一環です。いずれの治療手段でも完全に流産や早産を防げるわけではありませんが、多くのケースで妊娠を継続させることができます。

頸管無力症になりやすい人・予防の方法

頸管無力症になりやすい人は、過去に流産や早産を経験したことがある女性、多胎妊娠の女性、また子宮頸管に手術を受けたことがある女性です。これらのリスク要因を単独、あるいは複数合わせて持つ女性は、頸管無力症のリスクが高いとされています。

予防手段としては、定期的に妊婦健診を受け、医師と協力して妊娠中および出産までの過程を慎重に管理することが重要です。頸管無力症を早期に発見できた場合、頸管縫縮術などの適切な治療が受けられ、リスクを軽減することができます。特にリスク要因を持つ女性は、妊娠が確認された時点で早期に産婦人科を受診し、リスク評価のための検査を受けることが推奨されます。

リスク要因がない女性でも、頸管無力症を発症することはあります。定期的に経腟超音波検査で、子宮頸管の状態を確認することが予防につながります。妊娠中に異常を感じた場合には、早急に医師に相談し、適切な対策を講じることが重要です。

過度な体重増加に注意し、妊娠中をできるだけ安静に過ごすことが予防に役立つ場合もあります。ストレスを軽減し、栄養バランスの取れた食事を心がけることも、妊娠中の健康維持に大きな効果があります。

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