「肛門がん」は”大腸カメラ”では不十分?早期発見のための6つの検査を医師が解説!

肛門がんは、お尻の出口である肛門に発生する、がん全体のなかでは珍しいがんです。初期の症状がほかの病気と似ているため、診断が遅れることがあります。この記事では、肛門がんの概要と診断方法について解説します。少しでも気になる症状があれば参考にしてみてはいかがでしょうか。
※この記事はメディカルドックにて『「肛門がん」の「原因」はなに?診断や治療についても解説!【医師監修】』と題して公開した記事を再編集して配信している記事となります。

監修医師:
永井 恒志(医師)
平成15年金沢医科大学医学部卒。東京大学医学部附属病院内科研修医を経て東京大学大学院医学系研究科教官時代に大型放射光施設SPring8を利用した多施設共同研究(国立循環器病研究センター、東海大学ほか8研究機関)をリードし、多数の国際医学雑誌に論文を発表した。
特に免疫細胞であるM1マクロファージの画期的な機能の一端を解明した。現在は腫瘍免疫学の理論に基づきがんの根絶を目指してがん免疫療法の開発と臨床応用を手掛けている。
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肛門がんとは?
肛門管というお尻の出口から直腸に向かう約3〜4cmの部分と、肛門周囲の皮膚組織にできるのが肛門がんです。
主に肛門部分の症状は、痔と間違われることがよくあります。肛門がんの症状にはどのようなものがあるのでしょうか。いくつかの種類があるため、その特徴についても解説します。
肛門がんの主な症状
主な症状は、以下のものがあげられます。
- 排便時の出血
- 痛み
- かゆみ
- 肛門付近の腫れ
- しこり
- 分泌物
肛門がんを発症しても、約2割の方は無症状です。症状がある場合は、肛門周囲に硬いしこりとして触れることがあります。しこりはがん細胞によって生じたものです。このしこりが破れると出血する可能性があります。排便時に血が混ざったり、トイレットペーパーに血が付着したりすることが特徴です。
さらに圧迫や炎症によって肛門周辺の痛みやかゆみ、違和感を覚えやすいでしょう。しこりが大きくなるにつれて、排便が困難になったり、便が細くなったりする排便異常が生じます。膿や粘液が分泌される場合は、慢性的な痔瘻が原因の一つです。
肛門がんの種類と特徴
肛門がんは、さまざまな組織型の腫瘍が発生することがわかっています。発生する場所や細胞の種類によって、大きく扁平上皮がんと腺がんに分けられます。
扁平上皮がんは、肛門の皮膚部分に多く発生するタイプです。感染との関連性が指摘されており、性行為を介して発症するケースが多いとされています。進行すると腫瘍が大きくなり、出血を伴うことがあります。
一方腺がんは、肛門の内側に発生するタイプです。直腸がんと同様に、腺と呼ばれる分泌物を出す細胞から発生します。初期症状はほとんどなく、進行してから発見されることも少なくありません。
肛門がんの診断方法
肛門がんの診断は、複数の検査を組み合わせることでより正確に行われます。早期発見、早期治療を行うためにどのような検査が必要か解説します。
視診や触診
まずは医師による肛門周囲の観察です。病変は指による触診で肛門管内に硬いしこりとして確認されることがあります。
また肛門鏡検査は、肛門に専用の鏡を挿入し肛門内部を直接観察する検査です。腫瘤や潰瘍をみることができます。
直腸デジタル検査
先端に小さなカメラが付いた機器を直接肛門に挿入し、肛門・下部直腸を観察します。肛門は大腸カメラではとても観察しにくい場所で、病変が見逃される場合もあるため重要な検査です。
検査を受ける側も画像を確認できる直腸デジタル検査は、導入している施設が増えています。
生検
肛門がんが疑われた場合は、組織の一部を採取(生検)し、顕微鏡で組織を調べて診断を確定します。また粘液や分泌物を色素で染め、悪性細胞がないかを見る細胞診も行います。特にがんにおいては、生検はとても有用です。
がんの種類・悪性度・転移の有無を調べ、治療方針を決めるうえで不可欠な情報を得ることができます。
内視鏡検査
肛門がんの診断は、大腸内視鏡検査が必須です。肛門から内視鏡と呼ばれる細い管状の器具を挿入し肛門や直腸内部を観察します。
病変が見つかった場合は、組織を採取し病理診断を行い、組織型を確定します。組織型の確定は、治療法の選択・予後の予測・再発のリスク評価をするために重要です。
画像診断
画像診断法にはCT、MRI、PETがあります。この装置では、局所の病変の広がりや転移の有無を調べます。病期判定や治療計画、治療効果の評価においてとても重要です。CTやMRIでは、腫瘍の大きさや周囲の組織への浸潤度の観察が可能です。
またPETを用いることで、がん細胞がリンパ節に転移しているか調べることができます。リンパ節にがんが侵入すると、ほかの臓器や組織に転移する可能性が高くなるからです。
HPV検査
HPV感染は、肛門がんの原因となるウイルスとして知られており、HPV検査ではこのウイルスに感染しているかどうかを調べます。
ほとんどのHPV感染はがんを引き起こしませんが、高リスク型HPVの持続感染はがんを引き起こす可能性があります。
肛門がんについてよくある質問
ここまで肛門がんの原因や診断方法、治療法などを紹介しました。ここでは「肛門がんの治療後」についてよくある質問に、メディカルドック監修医がお答えします。
肛門がんの治療後に再発するリスクはどのくらいですか?
永井 恒志 医師
がんは再発の可能性があります。再発率はがん発見時の進行度・治療方法・患者さんの健康状態によりますが、局所再発が特に高く約28%とされています。治療後も便潜血検査や、専門医による直腸肛門指診、ファイバイースコピー検査などを定期的に行うことが重要です。
肛門がんの治療後に日常生活に戻るための期間はどれくらいですか?
永井 恒志 医師
個人差はありますが、手術からおよそ1ヶ月経てば、元通りの生活が可能です。術後の症状は数ヶ月〜数年にかけて徐々に落ち着いてきます。特に食事に関して術後まもない間は、食物繊維が豊富な食べ物や消化しにくい食べ物は避けた方がよいでしょう。
編集部まとめ
肛門がんはあまり聞きなれない病気かもしれませんが、主な要因であるHPVは誰にでも感染する可能性があります。肛門部に気になる症状があれば、痔だと自己判断せず早めに病院を受診しましょう。
初期には症状がないことも多いので、定期的な検診が早期発見につながります。早期に発見されれば、負担が少ない治療法で完治可能です。
以下は肛門がんの予防法です。
- 禁煙
- 安全性の高い性行為
- 痔の治療を行う
これらの予防策を心がけることで、肛門がんになるリスクを減らすことができます。
肛門がんと関連する病気
「肛門がん」と関連する病気は3個程あります。
各病気の症状・原因・治療方法など詳細はリンクからメディカルドックの解説記事をご覧ください。
関連する病気
- 痔核(いぼ痔)
- 痔瘻
- メラノーマ(悪性黒色腫)
メラノーマは発見するのが難しく、発見が遅れる場合も少なくありません。これらは症状が似ているものもあるため、自己判断せずに必ず医師に相談しましょう。
肛門がんと関連する症状
「肛門がん」と関連している、似ている症状は6個程あります。
各症状・原因・治療方法などについての詳細はリンクからメディカルドックの解説記事をご覧ください。
関連する症状
- 出血
- 痛み
- かゆみ
- 腫れ
- しこり
- 排便時の激しい痛み
肛門がんに似た症状はとても多様で、同じ症状でも異なる病気が原因であることがあります。悩んでいる間にも、病気は進行します。長引く場合は早めの受診を心がけましょう。
参考文献