認知症の家族に「財布を盗った」と疑われる…「物盗られ妄想」の対応策を介護福祉士に聞く
認知症の周辺症状の一つである「物盗られ妄想」。家族の介護をしている際、物を盗んだと疑われたら、困りますよね。今回は物盗られ妄想がある方から疑われないようにするための予防策、疑われた場合の対策について、介護福祉士の山田さんを取材しました。
※この記事はMedical DOCにて【物盗られ妄想はなぜ起こる? 原因と症状について介護福祉士に聞く】と題して公開した記事を再編集して配信しており、内容はその取材時のものです。
監修介護福祉士:
山田 亮太(介護福祉士)
編集部
身近な人に物盗られ妄想が起きたらどのように対応すればいいのでしょうか?
山田さん
まずは話を聞くことが大切です。相手の意見を尊重し、傾聴しましょう。また、ご本人の物語に寄り添うのも重要です。物盗られ妄想をしている方にとっては、大切な物をなくしたという重大なことが起きています。そこで「盗られていませんよ」のような否定的な言葉で対応してしまうと、ご本人を興奮させてしまうので、「いつからないのですか?」とその人の世界に寄り添うことが大切です。話しをするときに気をつけることは、会話はゆっくり短く伝えることです。また、動作も取り入れるとご本人に伝わりやすくなります。
編集部
物盗られ妄想は治療で良くなるのでしょうか?
山田さん
物盗られ妄想の原因であるアルツハイマー型認知症は進行を遅らせることはできますが、完治は難しいといわれています。認知症の治療・支援としては、薬物的介入と非薬物的介入があり、薬の副作用による不安感や寂しさが物盗られ妄想につながっている場合もあります。そのため、現在の認知症の支援では非薬物的介入が主流となっています。
編集部
非薬物的介入はどのようなサポートをするのでしょうか?
山田さん
非薬物的介入は、アクティビティを通して支援するのが基本です。まずはご本人の興味や関心を探ります。そして次にアクティビティを選択します。アクティビティは、料理・手工芸・行動療法・オリエンテーションなどたくさんあります。アクティビティを通して「自分にもできた」や「人の役に立った」という体験が、心理的安全や生活の質の向上につながり日々の生活に波及することで、認知症の軽減に役立てていくのが非薬物的介入の目的です。