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楳図かずおさん「胃がん」で逝去 前兆となる“5つの初期症状”や予防法を医師が解説

 公開日:2024/11/05
楳図かずおさん「胃がん」で逝去 前兆となる“5つの初期症状”や予防法を医師が解説

「漂流教室」や「まことちゃん」などの漫画作品で知られる漫画家の楳図かずおさんが先月、10月28日に、胃がんのため亡くなっていたことを小学館が発表しました。88歳でした。楳図さんの訃報に接し、胃がんの初期症状・なりやすい人の特徴・予防法などを医師の木村香菜先生に解説してもらいました。気になる症状がある場合は迷わず病院を受診してください。

木村 香菜

監修医師
木村 香菜(医師)

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名古屋大学医学部卒業。初期臨床研修修了後、大学病院や、がんセンターなどで放射線科一般・治療分野で勤務。その後、行政機関で、感染症対策等主査としても勤務。その際には、新型コロナウイルス感染症にも対応。現在は、主に健診クリニックで、人間ドックや健康診断の診察や説明、生活習慣指導を担当している。また放射線治療医として、がん治療にも携わっている。放射線治療専門医、日本医師会認定産業医。

「胃がん」とは?

胃がんは、胃の壁の内側をおおっている正常な粘膜細胞が何らかの原因でがん細胞となり、増殖していく病気です。早期の段階では、がんは粘膜にとどまっていますが、胃の壁の深くまで進行すると、胃の外側にも達し、胃の近くにある大腸や膵臓、肝臓、横隔膜などの他の臓器にも直接浸潤(しんじゅん)していきます。
がんが漿膜を超えていくと、お腹の中にもがん細胞が散らばってしまう、腹膜播種(はしゅ)が起こってしまうこともあります。そして、がん細胞がリンパの流れに乗って、胃の近くのリンパ節や大動脈の周りのリンパ節、また遠く離れた左の鎖骨の上のリンパ節にも転移がみられることがあります(リンパ節転移)。さらに、がん細胞が血流に乗って、肝臓や肺などの別の臓器に転移することもあります(遠隔転移)。
胃がんの原因としては、ヘリコバクター・ピロリ菌への感染が挙げられます。このヘリコバクター・ピロリ菌に感染すると、胃の炎症や胃潰瘍ができることがあり、胃がんになる可能性が高くなってしまうことがわかっています。
胃がんの初期症状については、後ほど詳しく解説していきます。進行した胃がんの場合には、体重が減少する、食事がつかえる感じがする、といった症状が現れます。また、皮膚に激しいかゆみを伴う色素沈着が生じる、黒色表皮種という病気を合併することもあります。この黒色表皮種は、悪性腫瘍に伴う悪性型や、その他の良性型・仮性型といったタイプがありますが、悪性腫瘍の場合には胃がんの頻度が高いとされています。

胃がんの前兆となる初期症状

では、胃がんの前兆となるような症状について解説します。
胃がんは、早期の段階では自覚症状がほとんどなく、健康診断のバリウム検査や内視鏡検査などで発見されることも多いとされています。
一方で、下記のような症状も胃がんの初期症状の可能性として挙げられますので、チェックしていきましょう。

胃の痛み

胃がんの原因の一つであるヘリコバクター・ピロリ菌が胃に感染すると、慢性胃炎から萎縮性胃炎、そして胃の粘膜の変性、胃がんへと進んでいきます。その経過の中の慢性胃炎や萎縮性胃炎の症状として、胃の痛みが出るのです。
また、胃がんそのものによる痛みの可能性もあります。なかなか治らない胃の痛みがあるような場合には、消化器内科を受診するようにしましょう。

胃もたれ

胃もたれも、胃がんの背景となるヘリコバクター・ピロリ菌による慢性胃炎の症状のひとつとして挙げられます。もちろん、すべての慢性胃炎が胃がんに進行するわけではありません。しかし、胃もたれが長引く場合には消化器内科を受診したほうがよいでしょう。

胸やけ

胸焼けも、胃がんの初期症状の一つです。胸焼けは胃がんそのものによる症状というより、胃がんと同時に生じていることも多い慢性胃炎の症状として生じることがあります。

吐き気・げっぷ

胃がんの症状として、吐き気も挙げられます。がんが大きくなってくると、消化管の通過障害が起こり、胃の内容物が消化管を引き延ばすことで吐き気を催す、といったことが起こります。また、消化管内にガスがたまると、げっぷとして、音を伴って食道や口を経て体の外に排出されます。そのため、吐き気を伴うげっぷの症状がみられるような症状が気になるようであれば、念のため消化器内科を受診したほうがよいでしょう。
おならも、排ガスが増えるという点ではげっぷに似ていますが、胃がんによるゲップの原因は通過障害であるため、通過障害を起こしている部分より後ろ側の排ガスである“おなら”は胃がんとの関連は低いです。

黒い便

早期胃がんでも、がんから出血することで便に血が混じり、黒い便がでることがあります。
胃がんからの出血は、貧血の原因ともなります。
自分では気づかないうちに貧血が進行しており、健康診断などで異常を指摘され、消化管のチェックをしたところ、胃がんがみつかることもあるのです。また、排便についても、通常の便と比べて黒っぽいものが出るようなことが続く際には、早めに消化器内科を受診しましょう。

胃がんになりやすい人の特徴

それでは、胃がんのリスクを高めるような特徴を解説していきますので、チェックしましょう。

ヘリコバクター・ピロリ菌に感染している

胃がんの発生には、ヘリコバクター・ピロリ菌の感染が大きな要因となっています。そのため、ヘリコバクター・ピロリ菌に感染しているとわかった場合には、除菌治療を受けるようにしましょう。
近年、簡便な方法で胃がんのリスクを判定できる「ABC検診」がすすめられてきています。
ABC検診は、胃粘膜の萎縮の程度を調べるペプシノゲンの量を調べる「ペプシノゲン法」と、ピロリ菌の感染の有無を調べる検査を組み合わせた方法です。これによって、AからDまでのリスクに分類され、推奨される検診の頻度や方法などがわかります。

塩分が多いものをよく食べる

その他にも、食塩・高塩分食品を摂ることで、胃がんの発生率が高くなることも報告されています。
日本の4地域に住む40〜59歳の男女について、食生活や喫煙などの生活習慣と、その後の10年年間の胃がん発生率との関係を調べた結果、食塩が多い食事を摂ると、特に男性で胃がんのリスクが上がることがわかっています。塩分濃度が高いものとしては、イクラや塩辛、練りウニなどがあったそうです。

タバコを吸う

胃がんの発生には、喫煙も関連しています。
先ほどの塩分の項でご紹介した研究で、喫煙と胃がんの関係についても解析されています。その結果、タバコを吸う人は、吸わない人に比べて2倍胃がんになりやすいことがわかりました。

大量飲酒

日本人の胃がんとお酒の関係について調べた研究の解析によると、男性の方で、お酒を大量に飲むと胃がんのリスクが高まることが報告されています。そして、お酒をたくさん飲む人は噴門部という胃の入り口あたりにできるがんが多くなります。

家族に胃がんの人がいる

親や兄弟といった第一親等の家族の方が胃がんになったことがある場合には、自分も胃がんになるリスクが高まる可能性がある、という報告があります。また、がん家族歴がある人とない人でのがん罹患リスクを調べた報告では、胃がんについて統計学的にリスクが上昇したとの結果が出ています。
しかし、がんの発生に対しては、家族歴の他にもさまざまな要因が関わってきますので、がんリスクをさげるような生活習慣や、がん検診を受けることが望まれます。

胃がんの予防法

それでは、胃がんの予防法をいくつかご紹介していきます。

野菜や果物を食べる

野菜や果物をたくさん食べましょう。野菜や果物には、ビタミンCやカロテンといった、胃がんのみならず、他のがんの抑制にも効果がある可能性がある抗酸化物質が含まれています。また、ビタミンCは特に柑橘系の果物や、緑黄色野菜に多く含まれていますので、積極的に食べましょう。

減塩を心がける

減塩を心がけることは、胃がんのリスクを下げるだけでなく、高血圧の予防にもなります。塩辛や明太子などの塩蔵品については、週1〜2回程度に抑えると良いでしょう。

アルコールをとりすぎない

特に男性では、アルコールを大量に飲むと胃がんのリスクが高まります。
厚生労働省からは、1日の摂取アルコール量として、純アルコール量で約20g程度とされています。お酒の換算の目安としては、以下のようになっています。

  • ・ビール:中瓶1本500ml
  • ・清酒:1合180ml
  • ・ウイスキー・ブランデー:ダブル60ml
  • ・焼酎(35度):1合180ml
  • ・ワイン:1杯120ml

胃がん検診を受ける

胃がん検診を受けるようにすることで、胃がんの早期発見、早期治療につながります。
胃がん検診は、男女ともに50歳以上の人を対象に、2年に1回受けることが推奨されています。問診と、胃部エックス線検査あるいは胃内視鏡検査を行います。もしも、何か症状があれば、検診を待たずに医療機関を受診しましょう。

ヘリコバクター・ピロリ菌の除菌

胃がんの発症リスクをあげる大きな要因である、ヘリコバクター・ピロリ菌の除菌も大切です。検診などでヘリコバクター・ピロリ菌が陽性と判明した方は、早めに消化器内科を受診し、除菌療法を受けるようにしましょう。

すぐに病院へ行くべき「胃がんの初期症状」

ここまでは胃がんの初期症状を紹介してきました。
以下のような症状がみられる際にはすぐに病院に受診しましょう。

胃の痛みや胸焼けがある症状の場合は、消化器内科へ

胃がんは、早期の段階でも、進行した段階でも症状が現れないこともあります。しかしながら、胃の痛みや不快感、胸焼け、吐き気、食欲が低下するという症状が出る場合もあります。
また、がんからの出血による貧血や、黒い便という症状がでる可能性もあります。もちろん、これらの症状は胃がんだけでなく、胃炎や胃潰瘍でも起こりうるため、こうした症状がでる場合には消化器内科を受診するようにしましょう。

受診・予防の目安となる「胃がん」のセルフチェック法

  • ・長引く胃のもたれ症状がある場合
  • ・胃の不快感や痛みがある場合
  • ・ふらつきなど貧血を疑う症状がある場合

「胃がんの初期症状」についてよくある質問

ここまで胃がんの初期症状を紹介しました。ここでは「胃がんの初期症状」についてよくある質問に、Medical DOC監修医がお答えします。

胃がんの手遅れとなる末期症状を教えて下さい。

木村 香菜医師木村 香菜(医師)

胃がん末期の症状としては、胃ががんによって正常に機能しなくなり、胃からの栄養吸収や消化ができなくなることにより体重が減ってきます。また、末期に腹水が溜まり、足のむくみや排尿障害もでてきます。そして、胃以外の臓器にも転移します。胃がんでは肝臓への転移が起こりやすく、その際には腹痛・背部痛や倦怠感、黄疸などが現れます。

編集部まとめ

今回は、胃がんの初期症状について解説しました。
早期の段階では、胃がんではほとんど症状が出ない場合が多いですが、胸焼けなどの症状が出現することもあります。気になる症状があれば、早めに消化器内科を受診しましょう。

※この記事はMedical DOCにて【「胃がんの前兆となる5つの初期症状」はご存知ですか?予防法も医師が解説!】と題して公開した記事を再編集して配信しており、内容はその取材時のものです。

この記事の監修医師