FOLLOW US

目次 -INDEX-

  1. Medical DOCTOP
  2. 配信コンテンツ
  3. 元横綱・曙が死去 闘病していた「心不全」の前兆となる5つの症状を医師が解説

元横綱・曙が死去 闘病していた「心不全」の前兆となる5つの症状を医師が解説

 公開日:2024/04/11
元横綱・曙が死去 闘病していた「心不全」の前兆となる5つ症状を医師が解説

元横綱・曙太郎さん(54歳)が逝去したと報じられています。2017年4月に急性心不全を患い、入院。闘病を続けていましたが、帰らぬ人となりました。曙さんは米・ハワイ出身で、史上初の外国出身横綱(1996年に日本国籍を取得)となりました。引退後はキックボクシングや総合格闘技、プロレスにも挑戦していました。曙さんが患っていた心不全の前兆やなりやすい人の特徴、予防法、受診すべき診療科などを解説します。気になる症状がある場合は迷わず病院を受診してください。

※この記事はMedical DOCにて【「心不全の前兆」となる5つの症状はご存知ですか?医師が徹底解説!】と題して公開した記事を再編集して配信しており、内容はその取材時のものです。

小正 晃裕

監修医師
小正 晃裕(医師)

プロフィールをもっと見る
京都大学医学部卒業。循環器内科・臨床不整脈を専門とし、これまで関西電力病院、京都大学医学部附属病院などで勤務。主にカテーテルアブレーション、不整脈デバイス診療に従事。現在は大手企業の専属産業医、複数クリニックで内科外来業務に従事しながら医療DX推進に向けて複数事業を運営中。日本内科学会認定内科医、日本循環器学会認定循環器専門医、日本不整脈心電学会認定不整脈専門医、日本医師会認定産業医。

「心不全」とは?

心不全とは、心臓が体全体に十分な血液と酸素を供給するために十分に機能しなくなってしまう状態を指します。この病気は急性または慢性に発生する可能性があり、どちらも生命に重大な影響を及ぼすことがあります。心臓は体全体の細胞と組織に血液と酸素を提供する重要な役割を果たしているため、心不全となってその機能が低下すると、他の多くの臓器に影響が及びます。
心不全の主な原因には、冠動脈疾患、高血圧、心筋炎、弁膜症などの心臓疾患の他にも、代謝障害や薬物の影響などが含まれます。これらの疾患は、心臓の筋肉や栄養血管にダメージを与えたり、心臓のポンプ機能を低下させたりする可能性があり、その結果として心不全を引き起こします。
心不全の症状は、後述するように息切れ、疲れやすさ、腫れ、心拍数の増加、咳や痰の増加、不整脈、および体重増加など多岐にわたります。これらの症状は、心臓が適切に機能しなくなることで発生し、重度の症状では時に即時の医療介入が必要となります。
心不全を診断、治療、管理するためには医師による適切な評価と、適切な薬物療法や生活習慣の変更、そして原因によっては手術が必要となることがあります。心不全は進行性の疾患であり、適切な治療によりその進行を遅らせて生活の質を維持することが重要となります。

心不全の前兆となる初期症状

息切れ・呼吸困難

普段は何気なく行っている動作、運動(平地歩行や階段、上り坂など)で息切れや呼吸困難感が生じることがあります。息切れや呼吸困難は身体からの不調のサインです。そのような症状がある時には無理に運動をしないようにして、症状が改善するまで身体を休めてください。そのうえで、症状が繰り返し起こるようなら早めに医療機関の受診が必要です。
息切れ・呼吸困難がある時には、内科や循環器内科、呼吸器内科などを受診するとよいです。受診時にはいつ頃からどんな症状が起こり、その症状はどんな時に起こりやすいのかなどを答えられると診察がスムーズです。また、症状が増悪傾向にある時や安静にしていても症状が出る時は緊急性が高く、早めの受診が必要です。

下肢浮腫、体重増加、尿量減少

気付いたら足がいつもよりむくんでいて、押すと指の痕が残る場合や、生活や食事が全く変わらないのに体重が徐々に増加してくることがあります。適度に有酸素運動をすることや、長時間の立位や座位を避けることで下肢浮腫が少し改善されることもあります。
しかし、下肢のむくみが徐々に悪化して靴下や靴が履きにくい時、またずっと体重が安定していた人が暴飲暴食もしていないのに体重増加した時などは要注意です。そのような場合には早めに内科、循環器内科を受診してください。受診時には下肢のむくみが診てもらいやすいようにすぐに脱げる靴下やズボンを履くようにして、体重の変化があった場合には何日で何kgくらい増加したのか伝えると緊急性の指標になります。

全身倦怠感、食欲不振、悪心

心不全が進行すると、体うっ血による腸管浮腫などの影響もあり、食欲不振や悪心、全身倦怠感が強く認められることがあります。全身倦怠感、食欲不振・悪心などの症状がある場合には、内科や循環器内科、消化器内科などの受診が望ましいです。特に、症状が強くて食事が全く摂れなかったり、嘔吐が続くようなケースでは緊急での受診が必要となります。

持続する咳、痰の増加

夜間にゼーゼーする呼吸を認めたり、ピンク色のサラサラした痰がたくさん出る咳が続く場合には、心不全に伴う症状の可能性があります。夜間に咳や痰が増えて息苦しくなる場合には、少し上体を起こして眠ることで改善される場合があります。ただし、あくまで一時的な対策であり、早めの医療機関受診が望ましいです。
持続する咳、痰の増加を認めた場合には、内科や循環器内科、呼吸器内科などを受診してください。受診時にはいつからどのような咳(痰が混じるのかどうか)が出ているのか、どんな時間帯に多いのか(夜や明け方にひどくなる)など説明できるようにしましょう。症状が日ごとに悪化するケースでは早めの受診が必要です。

動悸、不整脈

心不全になると、心臓に普段以上の負荷がかかる結果不整脈が生じやすくなります。また、不整脈が頻発するとより心臓に負担がかかり、ますます心不全が悪くなる原因にもなります。不整脈の症状としては動悸や胸痛、ふらつきなどが生じることがあります。
一般的に不整脈が労作時に起こることが多いため、動悸や胸痛などの症状がある時には身体への負担を減らすために安静にすることが望まれます。しかし安静にしていても症状が出たり、労作の度に繰り返し症状を起こしたりするようであれば、早めに内科、循環器内科などを受診して検査を受けるようにしましょう。

心不全になりやすい人の特徴

高齢者

若者と比較すると、身体機能の落ちる高齢者ほど心不全のリスクが高くなります。また、高齢者では高血圧症や脂質異常症など併存疾患が増える傾向にあり、増悪のリスクも高いため適切な治療および経過フォローが必要となります。

併存疾患

年齢や生活習慣にも関連しますが、併存疾患が多いと心不全のリスクが増大することが多いです。中でも喫煙や肥満、高血圧症や脂質異常症、糖尿病や弁膜症、不整脈などを持っている人では持っていない人と比較して心不全を発症するリスクが高くなります。そのため、併存疾患がある場合には適切な治療を受けて心不全リスクを減らす必要があります。

すぐに病院へ行くべき「心不全の前兆」

ここまでは心不全の前兆を紹介してきました。
以下のような症状がみられる際にはすぐに病院に受診しましょう。

息切れがひどい場合や食事も摂れない場合は、循環器内科へ

心不全ではさまざまな症状が現れますが、中でも息切れ・呼吸困難が増悪したり、夜間に咳・痰がひどくて仰向けで眠れない場合、動悸が頻繁になり日常生活に支障を来す場合や全身倦怠感が強く、食事も摂れないようなケースではすぐに医療機関を受診すべきと言えます。
上記のようなケースでは内科、循環器内科などを受診して心不全やその他症状の原因となる疾患が存在していないか、精密検査を受けるようにしてください。その際、症状がいつから起こっているのか、どんな時に悪くなるのか、などはすぐに答えられるようにしておくと診察をスムーズに受けられます。

受診・予防の目安となる「心不全の前兆」のセルフチェック法

  • ・普段と異なる息切れ、呼吸困難感がある場合
  • ・下肢のむくみが気になる、体重が徐々に増加傾向にある場合
  • ・全身倦怠感や食欲不振が続く場合
  • ・咳や痰が増加する場合
  • ・動悸、脈の飛びなどを自覚する場合

心不全を予防する方法

食事

食事については、心不全のリスクを上げる原因になる高血圧症、脂質異常症、糖尿病などの治療と共通の注意が必要です。具体的には、塩分や脂質の摂取量に注意するとともに総カロリーが多くならないように適度な量に留める必要があります。また、年齢とともに筋力が低下して運動量が低下しやすいため、筋量を維持するために良質なタンパク質をしっかりと摂ることも重要です。

運動

心不全の予防、および発症後の進展予防には適度な運動が重要です。激し過ぎる筋力トレーニングなどは血圧上昇の原因となることもあるため、30分程度の有酸素運動が推奨されます。最初は週1-2回から始めて、慣れたら毎日無理のない範囲で続けることを目指しましょう。

定期的な健診

心不全の予防のためには、定期的な健診も重要です。心不全のリスクを上げる高血圧症や脂質異常症などに加えて、不整脈や弁膜症がないかも定期的なチェックを忘れずに受けるようにしましょう。

「心不全の前兆」についてよくある質問

ここまで心不全の前兆などを紹介しました。ここでは「心不全の前兆」についてよくある質問に、Medical DOC監修医がお答えします。

心不全で亡くなる前の前兆となる症状について教えてください。

小正 晃裕小正 晃裕 医師

心不全が悪化してうっ血がひどくなると、安静時でも呼吸苦を認めるようになります。また、心機能が低下して低心拍出量となると、意識障害や不穏、四肢冷感やチアノーゼ、身の置き所がないなどの症状が認められます。こういった症状は心不全が非常に進行した状態であり、突然死のリスクも非常に高くなるため、このような症状が出た場合にはすぐに医療機関を受診するようにしてください。

編集部まとめ

これまで心不全の症状や心不全になりやすい特徴、受診すべきタイミングなどについて記載してきました。心不全の症状は多岐にわたり、他の疾患と重なるものも多いため、症状だけでは心不全と診断できないケースもあります。しかし、心不全は進行性の病気であり、放置しておくと突然死に至るケースもあります。
また、心不全は高齢者だけに起こるものではなく、基礎疾患によっては若者や40代などの働き盛りの世代でも起こりえる疾患です。そのため、日頃から自分の健康状態や自覚症状についてセルフチェックを欠かさないようにして、心不全を疑う症状が少しでもあれば早めに医療機関を受診して検査を受けるように心がけましょう。

この記事の監修医師