【逝去】八代亜紀さんが闘病していた「膠原病」とは? 皮膚筋炎との関係も医師が解説
演歌歌手の八代亜紀さんが2023年12月30日に逝去されたことを、所属事務所が明らかにしました。73歳でした。八代亜紀さんは2023年9月に膠原病の一種である抗MDA5抗体陽性皮膚筋炎(指定難病)と急速進行性間質性肺炎を発症し、療養されていました。
膠原病という病名は聞いたことがあるけれども、具体的にどのような病気かはよくわからないという人もいらっしゃると思います。膠原病は、多数の臓器が炎症を起こす病気をまとめた呼び名で、膠原病という一つの病気があるわけではありません。そこで今回は膠原病の症状や代表的な病気、好発年齢などについて詳しく解説していきます。
※この記事はMedical DOCにて【「膠原病」とは?症状・原因についても解説!】と題して公開した記事を再編集して配信しており、内容はその取材時のものです。
監修医師:
武井 智昭(高座渋谷つばさクリニック)
平成14年慶應義塾大学医学部を卒業。同年4月より慶應義塾大学病院 にて小児科研修。平成16年に立川共済病院、平成17年平塚共済病院(小児科医長)で勤務のかたわら、平成22年北里大学北里研究所病原微生物分子疫学教室にて研究員を兼任。新生児医療・救急医療・障害者医療などの研鑽を積む。平成24年から横浜市内のクリニックの副院長として日々臨床にあたり、内科領域の診療・訪問診療を行う。平成29年2月より横浜市社会事業協会が開設する「なごみクリニック」の院長に就任。令和2年4月より「高座渋谷つばさクリニック」の院長に就任。
日本小児科学会専門医・指導医、日本小児感染症学会認定 インフェクションコントロールドクター(ICD)、臨床研修指導医(日本小児科学会)、抗菌化学療法認定医
医師+(いしぷらす)所属
膠原病とは
膠原病とはどういった病気ですか?
1942年に米国の病理学者であるPaul Klemperer(ポール・クレンペラー)により、提唱された病気の考え方です。
ポールは、多くの臓器が一度に障害されて、どの臓器が根源であるかを特定できない病気があることに気づいたのです。それまでは、一つの臓器が障害されて病気は起こると考えられていました。膠原病という呼び名は、人間の細胞をつなぎ合わせている膠原線維がフィブリノイド変性を起こしていることからつけられました。
膠原病は、自らの臓器を組み立てている細胞やたんぱく質に異常な免疫反応がみられるため、自己免疫疾患とも呼ばれます。
1950年に、全身性エリテマトーデス、リウマチ熱、皮膚筋・多発性筋炎、強皮症、関節リウマチ、結節性多発性動脈周囲炎の6つの病気が膠原病に含まれました。これら6つは古典的膠原病と呼ばれています。
その後に、細菌感染で起こると判明したリウマチ熱は膠原病から除かれ、混合性結合組織病、シェーグレン症候群などの複数の病気が膠原病に追加されました。
膠原病の症状
膠原病ではどのような症状がみられますか?
膠原病に共通する症状として、次の症状がみられます。
- 発熱
- 倦怠感
- 体重減少
- 関節の痛みや腫れ、こわばりなどの関節症状
- 筋力低下や筋の痛みなどの筋症状
- 湿疹、黒ずみなどの皮膚症状
- 手の指が真っ白になるレイノー症状
- 咳や息切れなどの呼吸器症状
- 眼の乾燥やゴロゴロした感じ、視力異常などの眼の症状
- 動悸、高血圧などの循環器症状
- 腹痛、食欲低下、口内炎などの消化器症状
- 麻痺や知覚・運動異常などの神経症状
- リンパ節の腫れ
- 皮下結節(皮膚の下にできるしこり)
膠原病の原因
膠原病の原因は何でしょうか?
遺伝的、体質的な要因、環境因子やウイルス感染なども、膠原病の発症に関与しているといわれています。
膠原病の代表的な病気
膠原病の代表的な病気について教えてください。
多くの膠原病の中から、代表的な膠原病の病気として、全身性エリテマトーデス(SLE)、関節リウマチ(RA)、シェーグレン症候群、強皮症、皮膚筋炎・多発性筋炎が挙げられます。
全身性エリテマトーデス(SLE)
全身性エリテマトーデス(SLE)とはどのような病気ですか?
自己免疫反応によって、発熱、 倦怠感 などの症状や、関節、皮膚、腎臓、肺、中枢神経などにさまざまな症状がみられる病気です。
蝶が羽を広げている形にみえる蝶型紅斑と呼ばれる赤い発疹が、両頬にみられるのが特徴です。顔面や耳、首のまわりにもかさかさした丸い紅斑が現れます。
関節症状として、手指の痛みがよくみられ、数日単位で痛む関節の場所が変わる移動性の関節炎が肘や膝に出ることもあります。
関節リウマチ(RA)
関節リウマチ(RA)とはどのような病気ですか?
手指や手関節、足の指などの小さな関節の腫れやこわばりがみられます。関節の炎症にとどまらず、骨や軟骨が破壊されて、関節や骨の強い変形が起こることもあります。関節の変形が生じると、日常生活動作が障害され、生活の質は著しく低下します。
発熱、筋の痛み、倦怠感、体重減少、うつ症状などの全身症状もみられます。
原因として考えられているのは、自己免疫異常の関与です。
シェーグレン症候群
シェーグレン症候群とはどのような病気ですか?
単独でみられるのではなく、ほかの膠原病に合併して起こる場合が多い病気です。遺伝的な要因やウイルスなどの環境要因、免疫異常、女性ホルモンの関与が原因として考えられています。
強皮症
強皮症とはどのような病気ですか?
冷たいものに触れると手指が真っ白になるレイノー症状や皮膚が硬くなっていく症状がみられます。主にみられるのは、手指の腫れやこわばり、指が曲がって伸びない症状ですが、皮膚の硬さが手背や前腕、上腕、体幹といった体の中心にも認められる場合があります。皮膚の潰瘍や、肺、腎臓、食道に症状が現れる場合もあります。
原因として考えられているのは線維芽細胞の活性化、血管障害、免疫異常の関与です。
皮膚筋炎・多発性筋炎
皮膚筋炎・多発性筋炎とはどのような病気ですか?
自己免疫が筋肉や皮膚を攻撃することが原因で起こる病気です。
膠原病の受診科目
膠原病と思われる症状があれば何科を受診すればよいでしょうか?
関節の痛みや腫れ、倦怠感、微熱、目や口の渇きなどの症状が1か月以上続いている場合など、膠原病が疑われる症状が継続していれば、膠原病内科やリウマチ内科などの専門外来を受診しましょう。
膠原病で行う検査
膠原病ではどのような検査を行いますか?
炎症マーカー、血清免疫検査、画像検査、組織検査などを実施して、疑われる病気を絞り込みます。
膠原病の性差・年齢差など
膠原病に性差や年齢差などはあるのでしょうか?
結節性多発動脈炎の平均発症年齢は55歳であり、男女比は男性:女性=3:1程度で男性に多く発症します。
シェーグレン症候群の男女比は男性:女性=1:9~20で、圧倒的に女性に多い病気です。発症は40歳~60歳に多くみられますが、子どもから高齢者まで発症します。
関節リウマチの男女比は男性:女性=1:4.7と女性に多い病気です。
全身性エリテマトーデス(SLE)は、20代~40代の女性に好発し、男女比は男性:女性=1:10です。
全身性強皮症の男女比は男性:女性=1:12であり、30代~50代の女性に好発します。
編集部まとめ
膠原病は多数の臓器が炎症を起こす病気の総称です。膠原病には多くの病気があり、症状もさまざまです。共通してみられる症状は、発熱や倦怠感などで、初期症状は風邪と似ています。
進行すると関節の変形や臓器の障害が出てくるので、体調不良を感じたらかかりつけ医を受診しましょう。微熱や関節炎などの症状が1か月以上続いている場合も、膠原病内科やリウマチ内科といった専門医を受診し、早めの診断と適切な治療につなげましょう。