道重さゆみさんが公表した「強迫性障害」とは? 症状・原因も医師が解説
元モーニング娘。の道重さゆみさん(34)が「強迫性障害」の診断を受けたことを、所属事務所の公式サイトが発表しました。今後は、一部の活動については改善が見られるまで制限するそうです。コンサート活動については医師に診てもらいつつ、症状に留意しながら継続の方向とのこと。
そこで、Medical DOCでは道重さんが診断を受けた、強迫性障害の概要や症状、原因、受診科目などについて解説していきます。生活の上で、家を出たあとに「ちゃんと鍵をかけてきただろうか」「火の元を締めてきただろうか」「自分の手は菌やウイルスなどで汚れているのではないだろうか」など、不安に感じることは誰にでもあります。ただし、不安や不安を確認するための行きすぎた考えや行動は「強迫性障害」とみなされます。
※この記事はMedical DOCにて【「強迫性障害」とは?原因・症状・受診科目についても解説!】と題して公開した記事を再編集して配信しており、内容はその取材時のものです。
監修医師:
稲川 優多(医師)
目次 -INDEX-
強迫性障害とは
強迫性障害とはどのような病気ですか?
日常生活において「ドアに鍵をかけただろうか」「手はきれいになっているだろうか」などの心配ごとは、多くの人も感じることです。しかし、こだわりすぎて日常生活が上手くいかなくなる場合や、人間関係に支障をきたしてしまう場合は強迫性障害とみなされます。
自分では意味がないことだとわかっていても、考えや行動をやめられずに日常生活や社会生活に影響が出てしまうのが強迫性障害です。
強迫性障害の症状
強迫性障害ではどのような症状がみられますか?
自分では望んでいないのに頭の中に思い起こされ、退けることができない考えが強迫観念です。また、ひどく不安に感じ、自分では意味がないことだとわかっていても行わずにはいられない行為が強迫行為です。
不安やこだわりといった強迫観念と、行動せずにはいられない強迫行為は、一人で同時にかかえている場合が多い症状です。代表的な症状として、不潔恐怖・洗浄、加害恐怖、確認行為・儀式行為、数字へのこだわり、対称性へのこだわりなどがあります。
強迫観念の症状
強迫観念はどのような症状が現れますか?
強迫観念では、次のような症状がみられます。
- 汚れや細菌汚染に対して恐怖を感じる
- 他人と共有して触れるドアノブや手すりなどが不潔だと感じる
- 運転中にミスを犯して人に怪我を負わせていないだろうか、傷害を起こしてないかという不安にかき立てられる
- 戸締りをしただろうか、火の元は安全だろうかという心配に押しつぶされそうになる
- 自分の決めた手順でものごとを行わないと恐ろしいことが起きるという不安が頭から離れない
- きちんと物の配置があっていないと不安に感じる
- 左右対称にしないと不吉なことが起こるのではないかと不安になる
- 正確にしなければならないと固執する
- 4や9の数字を避ける、幸運な数字にこだわるなど、縁起を担ぐレベルを超える数字への強いこだわりがある
強迫行為の症状
強迫行為はどのような症状が現れますか?
強迫行為では以下のような症状がみられます。
- 何時間も手を洗う、何回も入浴する、何度も洗濯を繰り返す
- ドアノブや手すりなどの不潔だと感じるものは触ることができない
- 手が荒れるほど消毒を繰り返す
- 汚染の恐怖から入浴や着替え、掃除を避けるようになって不衛生になる
- 自分がだれかを傷つけたかもしれないと不安になり、ニュースで取り上げられていないかをチェックしたり、警察やまわりの人に聞いたりする
- ドアの鍵やガスの元栓、電気製品のスイッチを何度も確認する、じっと見張り続けて指差し確認する、手でさわって確認するといった行為をやめられない
- どのような場面においても同じ方法で仕事や家事を行う
- 順序の正確性にとらわれるあまり、物事が進まない
- 何度も数える、心の中で呪文を唱えることをやめられない
- 配置にこだわって物を置きなおしてしまう、物を対称に並べてしまう
- 他人からみたらどうでもよい物がどうしても捨てられず、物がたまっていく
強迫性障害の原因
強迫性障害の原因について教えてください。
脳のはたらきの関与も考えられています。喜怒哀楽や不安、恐怖などの情動に関連する大脳皮質領域の活動の変化が関与しているといわれています。研究によって、脳内でセロトニンを神経細胞内に取り込むタンパク質が減少していることも解明されました。
また、強迫性障害は家族の間で遺伝し、遺伝子が関わっていることも研究によってわかっています。病気やストレスが、強迫性障害に関わる遺伝子を活性化させると考えられています。
強迫性障害の受診科目
強迫性障害と思われる症状が現れたら何科を受診すればよいでしょうか?
戸締りしたかどうかの心配や火の元の始末をしたかの確認は、生活において誰もが経験することです。そのため、少し神経質なだけであるのか、行き過ぎた考えや行為であるかの判断は簡単ではありません。
日々の強い不安や、自分では確認せずにはいられない行為によって心身が疲労している場合、生活や仕事に支障をきたしている場合は受診しましょう。自分の困りごとだけではなく、気づかないうちに周りの人を巻き込んでいることもあります。家族や友人など、自分の周りの人々が困っている場合も受診の対象です。
強迫性障害は、脳炎や脳腫瘍などの脳の病気でも認められます。統合失調症、うつ病、不安障害、心気症、強迫性人格障害、摂食障害、発達障害、アルコール・嗜好品・ギャンブル・買い物などの各種の依存症でも、強迫性障害と似たような症状が認められます。
適切な診断、治療を受けるためにも専門の医師の診察を受けることが大切です。
強迫性障害の性差・年齢差など
強迫性障害に性別差や年齢差などはあるのでしょうか?
10歳~12歳の早期に症状がみられる場合と、10代後半~20代前半にかけて症状が確認される場合があり、患者の90%が15歳~25歳で発症しています。男性の方が女性よりも若い年齢で発症する傾向にあります。
200人に1人の児童、10代の若者が強迫性障害をかかえていると推定されています。
編集部まとめ
強迫性障害は日常生活で誰もが感じる不安や、不安から起こる行動の延長線上にあります。少し心配性なだけか、それとも行きすぎた考えや行動なのかの見極めは簡単ではありません。加えて、ほかの病気でも強迫性障害に似たような症状が現れることもあり、専門的な医療機関での診断が必要です。
強迫性障害の症状で、日常生活や仕事に支障をきたす場合や、自分のまわりの人が困っている場合は精神科・心療内科を受診しましょう。