「アルコール性認知症」の治療法・予防法はご存知ですか?医師が解説!
アルコール性認知症とは?Medical DOC監修医がアルコール性認知症の症状や特徴・原因・なりやすい人の特徴・治療法・セルフチェック法・予防法などを解説します。
※この記事はMedical DOCにて『「アルコール性認知症」になりやすい人の特徴はご存知ですか?医師が解説!』と題して公開した記事を再編集して配信している記事となります。
監修医師:
秋谷 進(東京西徳洲会病院小児医療センター)
目次 -INDEX-
「アルコール性認知症」とは?
アルコール性認知症は、文字通り、長期間にわたる過剰なアルコール摂取によって引き起こされる認知障害のこと。
アルコールというと、一時的に酔っ払うだけで、肝臓以外に影響は残らないのではと思いがちですが、そうではありません。
実際、国立がんセンターからの報告によると、5年間飲酒を繰り返していると認知症になるリスクは1.34倍から1.96倍にものぼるのです。
厚生労働省のe-ヘルスネットでは大量飲酒による認知障害を「アルコール性認知症」として、注意喚起を促しています。
アルコール性認知症の治療法
断酒
最も重要な治療法はアルコールの完全な断酒です。
断酒によって、さらなる脳の損傷を防ぎ、症状の進行を遅らせることができます。断酒は専門の医療機関でのサポートを受けながら行うことが推奨されますね。
また、アルコール依存症の方は、ジスルフィラム・シアナミド・アカンプロサートなどといった、抗酒薬や断酒を維持するための薬が使用されます。
栄養療法
アルコール性認知症の場合は、しばしばビタミンB1が不足するために症状が出てくるケースがあります。そのため、ビタミンB1(チアミン)の補充が特に重要です。
その他、バランスの取れた食事を心がけることで、全体的な健康状態を改善していくことも大切になってきます。
リハビリテーション
認知機能の改善を目的としたリハビリテーションも効果的。
特に、認知行動療法や作業療法、記憶訓練プログラムなどを通じて、アルコールによる弊害を十分にすることで再発を防ぎます。
そのため、アルコール性認知症を疑ったら、神経内科や精神科をまず受診することをオススメします。
受診・予防の目安となる「アルコール性認知症」のセルフチェック法
アルコール性認知症は早期発見と適切な治療が大切。まずは、セルフチェックをしてみましょう。以下の質問に答えてください。
日常生活で、最近の出来事や会話の内容を忘れることが多くなった。
- 同じ質問を何度も繰り返す。
- 約束や予定を忘れることが増えた。
- 金銭管理が困難になり、支払いの遅延や過剰な出費が増えている。
- 物事の順序を立てて計画するのが難しくなった。
- 会話の流れが途切れがちになり、相手の話を理解するのが難しい。
- 一つの作業に集中できなくなり、注意散漫になることが多い。
- 複数のことを同時に行うのが難しくなる。
- 長時間の読書やテレビ視聴が困難になる。
- 急に攻撃的になったり、無気力になったりする。
次の10個のうち、4個以上あてはまる場合で、アルコールの消費量が激しい場合はアルコール性認知症を疑います。該当される方は脳神経内科や精神神経科に受診するようにしましょう。
アルコール性認知症の予防法
なるべくアルコールの量を減らしていく
アルコール性認知症がアルコールから来ている以上、普段のアルコールの量を減らしていくのはとても大切。アルコール依存をへらし、脳のダメージを最小限にすることにもつながります。
栄養バランスを改善する
アルコールの消費量が激しいと、ビタミンB1をはじめとして、全体的な栄養不足に陥りやすくなります。まずは、ビタミンB1(チアミン)を豊富に含む食品(全粒穀物、豚肉、豆類、ナッツなど)を積極的に摂取するようにしましょう。
抗酸化物質やオメガ-3脂肪酸を含むような、野菜やナッツ類なども効果的です。
定期的な運動
定期的な運動は、心血管系の健康を改善し、脳への血流を増加させることで認知機能を維持します。また、運動はストレスを軽減し、全体的な健康状態を向上させますね。
特に、有酸素運動(ウォーキング、ジョギング、サイクリングなど)を週に150分以上行うようにしてみましょう。
「アルコール性認知症」についてよくある質問
ここまでアルコール性認知症について紹介しました。ここでは「アルコール性認知症」についてよくある質問に、Medical DOC監修医がお答えします。
アルコール性認知症は完治するのでしょうか?
秋谷 進 医師
アルコール性認知症は完全に治ることは難しいですが、早期に発見し、適切な治療を行うことで症状の進行を遅らせたり、一部の認知機能を回復させることが可能です。
最も重要なことはアルコールの完全な断酒です。断酒により脳のさらなる損傷を防ぎ、リハビリテーションや適切な栄養補給、精神的サポートを受けることで、生活の質を改善することができるでしょう。
アルコール性認知症を発症すると物忘れのような症状が現れますか?
秋谷 進 医師
はい、アルコール性認知症では物忘れのような症状がよく現れます。
特に短期記憶が影響を受け、新しい情報を覚えることが難しくなります。
例えば、最近の出来事や会話の内容を忘れてしまうことが増えるでしょう。また、長期記憶にも影響が及び、重要な出来事や約束を忘れることがあります。
編集部まとめ
長期間にわたる過剰なアルコール摂取によって引き起こされるアルコール認知症は、早期発見と適切な治療が大切です。これを自分自身や家族の中でだけで解決するのは非常に困難です。脳神経内科や精神神経科を早めに受診して相談するようにしましょう。
「アルコール性認知症」と関連する病気
「アルコール性認知症」と関連する病気は5個ほどあります。
各病気の症状・原因・治療方法など詳細はリンクからMedical DOCの解説記事をご覧ください。
精神科・心療内科の病気
- アルツハイマー型認知症
- 血管性認知症
- 若年性認知症
- うつ病
- アルコール依存症
長期間にわたる過剰なアルコール摂取によってアルコール依存があって認知症症状があるとアルコール性認知症が疑われますが、類似の症状が見られる病気には上記のような病気などが考えられます。
「アルコール性認知症」と関連する症状
「アルコール性認知症」と関連している、似ている症状は6個ほどあります。
各症状・原因・治療方法などについての詳細はリンクからMedical DOCの解説記事をご覧ください。
関連する症状
- 数分前の会話内容や出来事を忘れてしまう
- お金の管理ができない
- 集中できない
- 判断に時間がかかる
- 言葉数が減る
- 気分の変動が大きい
これらの症状に加えて、アルコールの消費量が多い場合はアルコール性認知症が疑われますので、早めの医療機関への受診をお勧めします。