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臍ヘルニアとは?赤ちゃんだけでなく大人も発症する?手術が必要?

 更新日:2023/03/27
臍ヘルニア

臍ヘルニアとはどんな病気なのでしょうか?その原因や、主にみられる症状、一般的な治療方法などについて、医療機関や学会が発信している情報と、専門家であるドクターのコメントをまじえつつ、Medical DOC編集部よりお届けします。

この記事の監修ドクター:
村上 友太 医師(東京予防クリニック)

臍ヘルニアとは

おへその内側にある穴に腸管が入り込んで、おへそが大きく飛び出した状態のことです。もともとは胎児のときに臍の緒(へそのお)が通っていた穴で、ほかの部位に比べて弱い部分でもあります。

生まれてしばらくの間は穴があいたままになっていて、ここに内臓である腸管が入り込んでしまうと、おへそが大きく腫れたように。臍ヘルニアは赤ちゃんだけでなく、大人になっても発症することがあります。

村上友太 医師 東京予防クリニックドクターの解説

俗に言う「でべそ」の状態です。ヘルニア(脱腸)とは、お腹の臓器がお腹の外に飛び出した状態を言いますが、臍ヘルニアは、臍が突出した状態でその中に腸管が飛び出しています。

臍ヘルニアは新生児10人に対して約1人に発生します。低出生体重児ではさらに高く発生します。成人でも発症することがあります。

臍ヘルニアの症状

臍ヘルニアになっていた場合、盛り上がったおへそを押し込むことができ、おへその中にある腸管の内容物によってグジュグジュとした感触があります。

臍ヘルニアの大きさは、その時々で変化します。始めは小さなサイズですが、泣くなどの強い圧力が繰り返しお腹に加わって少しずつサイズが大きくなっていきます。また、排便などで腹圧をかけたときにだけ大きく突出し、小さく戻るのも特徴です。

まれに飛び出した腸管がおへその穴で血流障害を起こし、ヘルニア嵌頓(かんとん)になることがあります。子どもの臍ヘルニアに比べて、大人になると14倍も嵌頓を起こしやすいようです。嵌頓になると、緊急手術が必要になることもあります。おへその盛り上がりが戻らなくなって、痛みや吐き気を伴うだけでなく腸管が壊死するリスクがあるからです。

村上友太 医師 東京予防クリニックドクターの解説

強い腹圧などが加われば臍輪を超えて臍の突出が起こります。はじめは小さな突出ですが、子供が強く腹圧をかければ、突出はどんどん大きく5cm程度にもなります。
嘔吐、腹痛、へその盛り上がりがみられます。

臍ヘルニアの原因

子どもが臍ヘルニアになる大きな原因は、臍の緒が取れたあとの穴がふさがっていないことです。臍の緒は筋膜にまで穴が通じていて、傷が治るのと同じ原理で穴が徐々に小さくなり閉じていきます。

しかし、穴がまだ閉じきらない新生児期や乳幼児期はお腹の内側から強い圧力が加わるとヘルニア(脱腸)を起こしてしまいます。全ての赤ちゃんは臍ヘルニアを起こす可能性を持っていて、10人に約1人の新生児が臍ヘルニアを発症しており、低体重児ではさらに発生しやすくなっています。

大人で臍ヘルニアを起こすのは、肥満、妊娠、腹水の貯留など高い腹圧が長期的にかかっていることが原因とされています。当然、臍の緒があった穴は閉じている状態ですが、腹筋の低下や筋膜の代謝がうまくいかないことで、内臓を抑える力が弱くなって内臓が飛び出ると考えられています。

村上友太 医師 東京予防クリニックドクターの解説

小児例
臍の緒が取れたあとの筋膜の穴(臍輪)がふさがっていないことが原因です。へその緒が取れた部位では、臍輪が収縮して、腹膜と癒着してへそになりますが、完全にへそが出来上がる前に強い腹圧などが加われば臍輪を超えて臍の突出が起こります。全ての赤ちゃんは臍ヘルニアを起こす可能性があります。

成人例
肥満、妊娠、腹水の貯留など高い腹圧が長期的にかかっていることが原因です。へそは完全に出来上がっていますが、もともと弱い部位であることから、腹筋組織の低下などにより内臓を抑える力が弱くなることが影響する、と考えられています。

臍ヘルニアの検査法

臍ヘルニアの診断には超音波検査とCT検査を行います。ヘルニアを起こしている出入口の大きさや、飛び出している臓器も確認できます。

村上友太 医師 東京予防クリニックドクターの解説
腹部診察、腹部超音波検査、レントゲン、CT検査などで診断可能です。

臍ヘルニアの治療方法

子どもの臍ヘルニアの約9割は自然に治るので今まで経過観察をしていましたが、2000年頃からは積極的に圧迫療法をするようになりました。圧迫療法は早く受けるほど効果的で、ヘルニアが大きくなってしまうと治療期間が長くなり、思ったような形にならないことも。治らなかった・形が悪く治ったという場合には、小児外科で1~2歳頃に手術を行います。

大人の臍ヘルニアは自然に治ることはないので、治療方法は手術になります。穴が小さければ縫い縮めていくこともできますが、耐久性が弱く再発もあります。基本的には大人であれば人工膜(メッシュ)を使って補強します。手術には切開法と腹腔鏡があり、身体の状態によって選択します。

村上友太 医師 東京予防クリニックドクターの解説
小児の臍ヘルニアは8−9割が自然治癒するため、かつては経過観察が主流でした。最近は圧迫療法を行う施設が増えています。圧迫療法に用いる材料はさまざまです。圧迫療法はヘルニアが小さいほど早く治る傾向があります。生後早いほど効果が高く、生後6ヶ月以降では圧迫療の効果は低くなります。
経過観察または圧迫療法にて治らなかったなどの場合には、1〜2歳頃に手術を行います。成人の臍ヘルニアは自然に治ることはありませんので、手術治療を必要とします。小さいヘルニアは縫合閉鎖を行いますが、ヘルニアが大きい場合や肥満や左右の腹直筋の距離が離れている場合は人工膜(メッシュ)を用いた修復が必要になります。

臍ヘルニアの予防方法

子どもであれば、おむつ替えなどで泣いているときにおへそが膨らんでいないか観察して、気になれば、触って感触を確かめておくことです。症状を疑うときには、自宅にあるガーゼで圧迫しながらかかりつけの小児科を受診してください。

大人は腹筋が弱くなりすぎないように注意して、普段から適度な筋トレを行うことです。また、肥満にならないように食事や運動に気をつけて過ごしましょう。

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