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手湿疹の症状や原因、治療方法とは?

 更新日:2023/03/27

手湿疹(読み方:てしっしん)とはどんな病気なのでしょうか?その原因や、主にみられる症状、一般的な治療方法などについて、医療機関や学会が発信している情報と、専門家であるドクターのコメントをまじえつつ、Medical DOC編集部よりお届けします。

この記事の監修ドクター:
中﨑 恵美 医師(emiスキンクリニック松濤 院長)

手湿疹とは

手湿疹とは、手のひらや手の甲、指に赤みのある腫れや水ぶくれ、かゆみ、ひび割れといった症状がみられるものです。症状は丸いかたちであらわれたり、ぶつぶつとした発疹であったり、広範囲に広がったりと多様です。
お湯や洗剤などにより手の油分や角層(皮膚の一番外側にあって外部の刺激の侵入や体内の水分の過度な蒸発を防ぐ機能をもつ組織)の水分を保つ機能が失われることや、職業的に長時間化学物質(染毛剤やマニキュア用品、インクなど)に触れていて、化学的刺激に敏感になって発症すること、アレルギーによるものなどを総称して手湿疹といいます。

中﨑恵美 医師(emiスキンクリニック松濤 院長)ドクターの解説
手湿疹になりやすい季節は冬です。空気が乾いているうえ、水仕事の際にお湯を使う場面も多いことも肌の乾燥に影響します。上記のように特定の職業やアトピー体質など手湿疹の症状を引き起こす要因や環境がある場合、自然に治っていくケースは少ないと考えられます。手湿疹を防ぐためには、まずは水仕事や薬品(家庭の食器用洗剤や掃除用洗剤なども含む)を扱う際に手袋を着用することが大切です。そして、手を洗う際は石鹸で皮脂を落としすぎないことや、こまめな手の保湿を心がけましょう。手湿疹になりやすい冬であれば、最低でも1日10回は市販のハンドクリーム等で保湿してください。

手湿疹の症状

手湿疹の症状には以下のようなものがあります。

角化型手湿疹
手のひらの皮膚表面の角質が厚くなり、ぼろぼろはがれるような状態で、ひび割れができることもあります。同じような症状が足の裏にもみられることが多いです。原因は不明なことが多く、中年以降の男性によくみられます。

進行性指掌角皮症
主婦(手)湿疹の中でも皮膚がかたくなる傾向が強いもののことを指します。指の腹や手のひらの乾燥、ひび割れ、指紋消失などの症状が現れます。急に水仕事が増えた場合のほか、ピアニストや、キーボードを多用し、物理的に指先を酷使する職業の人にも症状が現れることがあります。

貨幣状型手湿疹
刺激性接触皮膚炎、アレルギー性接触皮膚炎、アトピー型手湿疹のいずれでも生じる症状で、主に手の甲に貨幣くらいの大きさで円形の湿疹がみられ、強いかゆみを伴います。

汗疱型手湿疹
手のひらと足の裏に直径2~5mmの小さな水ぶくれが発生し(汗疱(かんぽう))、それがさらに何らかの刺激により手の甲や指側にも拡大し、かゆみを伴う湿疹状態になったものです。通常、原因を回避できれば、自然に治ることもありますが、手を使う仕事の方や、手洗い、消毒の頻度が高い人などは非常に治りにくくなることもあります。

乾燥・亀裂型手湿疹
皮膚のバリア機能が低下することで引き起こされると考えられる手湿疹で、手のひらや指全体の乾燥と亀裂が特徴で、水ぶくれはできません。冬場に症状が悪化することが多いです。

中﨑恵美 医師(emiスキンクリニック松濤 院長)ドクターの解説
手湿疹の患者さんは、手のひら・手の甲が赤みをおびて乾燥していたり、鱗屑や落屑(皮膚のはがれ方が正常ではない状態)が見られたり、角質が切れてしまっていたりするケースが多いです。手湿疹がもっと進むと、指先の皮膚が薄くなり指紋が消えたり、皮膚が切れたりすることもあります。人間は体温が上がった時に皮膚のかゆみを感じやすいので、お風呂上がりや飲酒後などは患部をかいて傷つけてしまわないように注意しましょう。かゆみが気になる場合は冷たいタオルや保冷剤などで患部を冷やすと緩和できます。

手湿疹の原因

何らかの刺激によって皮膚表面の乾燥や炎症を生じることが原因となります。
手の皮膚表面は、他の部位よりも角質が厚く、手を外部からの様々な刺激から守っています。水や洗剤などにより皮膚表面の水分や皮脂が減少する、化学物質に触れて刺激に敏感になる、アレルギー物質に接触する、物理的に摩擦されるなどを繰り返すことにより、引き起こされます。
もともと皮膚のバリア機能が弱っているアトピー性皮膚炎や乾燥肌の人に起こりやすいとされています。

手湿疹の検査法

診察だけで診断がつくことがほとんどであるため、基本的に検査は必要ありません。アレルギー性の接触皮膚炎(かぶれ)が疑われる場合には、パッチテストを行うことがあります。また、手白癬との区別が難しい場合には顕微鏡検査を行います。

中﨑恵美 医師(emiスキンクリニック松濤 院長)ドクターの解説
手湿疹と同じように手に症状が出る皮膚の病気は、小さな水泡や炎症が起きる「汗疱」、膿が溜まった膿疱が手や足に出現する「掌蹠膿疱症」、手に水虫ができる「手白癬」などです。手湿疹を診断する際は、皮膚の状態を見ればわかるケースが多いですが、もし視診のみで他の病気の可能性を排除できなければ詳しい検査を行います。掌蹠膿疱症と鑑別が必要な場合は、局所麻酔で皮膚の一部を切り取って皮膚生検を実施します。また、手白癬と鑑別するには、皮膚の一部を採取して顕微鏡で白癬菌(水虫の菌)の有無をチェックします。

手湿疹の治療方法

日頃の皮膚のケアが重要です。
保湿剤
手の乾燥を防いで皮膚のバリア機能を改善します。手の皮膚を保護してくれる役割をします。手あれが手湿疹に進行するのを予防し、バリア機能の破綻による刺激物質やアレルギー物質の体内への侵入を防いでくれます。
ステロイド外用薬
赤みやかゆみ・水疱などの症状に対して使用されます。炎症を抑え湿疹・皮膚炎を改善します。
抗ヒスタミン薬、抗アレルギー薬の内服
かゆみ・アレルギーを抑制します。就眠中など無意識に掻いてしまって湿疹を悪くしてしまう方も多く、内服することで掻く動作を減らして湿疹の悪化を防いだり、かゆみを抑えたりして日常生活を少しでも楽に過ごせるようにします。
生活改善
普段の生活の中で、手の皮膚を外的な刺激や乾燥からできるだけ守るようにしましょう。 とくに冬季には、温度変化による刺激にも注意が必要です。
例えば、手洗いはぬるま湯で行い冷たい水や熱いお湯は避ける、水仕事をする際は手袋を着用し、石鹸やシャンプーなどは刺激の弱いものに代える、手を濡れたままにせずすぐに清潔な乾いたタオルやハンカチでふく、ふいた後はハンドクリームなどで保湿をする、などを心がけるようにしてください。

中﨑恵美 医師(emiスキンクリニック松濤 院長)ドクターの説明
ステロイドと聞くと副作用を心配される方もいらっしゃいますが、ステドイドは適切に使用すれば患者さんにとってメリットが非常に大きい薬です。手湿疹は症状が長引くほど悪化し、治りづらくなり、ステロイドで治そうとすると治療に長期間を要することになります。逆に、軽症のうちにステロイドを短期間で集中的に使用すれば、早く治るうえに副作用の心配もほとんどないのです。この際は市販の薬ではなく、皮膚科で医師に適切なステロイド外用薬を処方してもらうことが大切です。軽症の手湿疹であれば、ステロイドを使って1週間程度で大幅に改善します。一方、重症の方はステロイドを長期間使用する傾向がありますので、手湿疹の原因となる仕事や生活環境の見直しも検討する余地があるでしょう。また、症状が改善した後も、こまめな保湿を習慣化して、手湿疹を繰り返さないように気をつけてください。

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