高安動脈炎(大動脈炎症候群)の症状や原因、治療方法とは?
高安動脈炎(大動脈炎症候群)(読み方:たかやすどうみゃくえん、別名:だいどうみゃくえんしょうこうぐん)とはどんな病気なのでしょうか?その原因や、主にみられる症状、一般的な治療方法などについて、医療機関や学会が発信している情報と、専門家であるドクターのコメントをまじえつつ、Medical DOC編集部よりお届けします。
この記事の監修ドクター:
野中 親哉 医師(野中内科クリニック 院長)
高安動脈炎(大動脈炎症候群)とは
高安動脈炎は大動脈やそこから分かれている大きな血管に炎症が生じ、血管が狭窄したり閉塞したりして、脳、心臓、腎臓といった重要な臓器に障害を与えたり、手足が疲れやすくなったりする原因不明の血管炎です。炎症が生じた血管の部位によって様々な症状がでます。わが国の高安右人教授が1908年に初めて報告しましたので高安動脈炎と呼ばれています。かつて大動脈炎症候群とも言われましたが、病変は大動脈以外の全身に生ずることがあるため、現在は高安動脈炎と呼んでいます。
引用:難病情報センター
http://www.nanbyou.or.jp/entry/141
血管に炎症が起こることで、身体全体が倦怠感に包まれるような、力が入らない状態に陥ります。
この疾患は、別名「脈なし病」とも言われており、9割以上が女性とされています。さらに15歳~35歳の若年層が罹患するケースがよく報告されています。
高安動脈炎(大動脈炎症候群)の症状
炎症の出現した動脈の部位により、めまい、頭痛、失神、視力障害、脈が触れない、血圧の左右差が大きい、足の冷感、脱力感、歩行時の痛みなどの症状が見られます。全身の症状としては発熱やだるさ、体重の減少、関節痛、筋肉痛など特徴的でない所見も見られます。さらに腎動脈や肺動脈に病変がおよぶと高血圧や、息切れ、肺高血圧症、胸痛が見られることもあります。心臓に近い部位での炎症は大動脈弁閉鎖不全症の原因となることがあり、心不全を来たすこともあります。
引用:順天堂大学医学部附属順天堂医院 膠原病・リウマチ内科
https://www.juntendo.ac.jp/hospital/clinic/kogen/about/disease/kanja02_16.html
初期段階では風邪に近い症状を伴いますが、症状が進行してくると、めまいや立ちくらみ、さらには腕のしびれなどが確認されます。失神を起こすこともあります。
大動脈の狭窄が進行した場合、狭心症や高血圧を引き起こすこともあるので、早めの医療機関の受診が大切です。
高安動脈炎(大動脈炎症候群)の原因
明確な原因はわかっておりませんが、血管炎の組織の中にはマクロファージやT細胞といった多くの免疫を担当する細胞が見られること、ステロイドや免疫抑制薬などによる免疫抑制療法が効果を示すことが多いことなどから、免疫異常が関与していると考えられています。また、一部にはHLA-B52やHLA-B39、HLA-Bの近傍にあるMICA遺伝子と発症との間に遺伝的な関連性も指摘されています。
引用:慶應義塾大学病院 医療・健康情報サイトKOMPAS
http://kompas.hosp.keio.ac.jp/contents/000613.html
高安動脈炎(大動脈炎症候群)の検査法
血液検査では、血沈やCRPの上昇、白血球の増加など炎症に伴う異常がみられますが、これらは高安動脈炎に特徴的なものではなく、血液検査では顕著な異常が現れない場合もあります。したがって、CT検査、MRI検査、血管造影検査、PET-CT検査などで血管の形状や病変の分布や炎症の度合いを評価することは、診断や血管病変の進行の評価に有用です。特に若い方に画像検査で大動脈とその第1分枝に閉塞性あるいは拡張性病変を多発性に認めた場合は、炎症反応が陰性であっても、高安動脈炎を第一に疑います。
引用:慶應義塾大学病院 医療・健康情報サイトKOMPAS
http://kompas.hosp.keio.ac.jp/contents/000613.html
また、血液検査では炎症反応(CRP・赤沈)が陽性になります。
さらにCT・MRIや血管造影検査では、狭窄が起きている部分が通常の形状と異なっているので、血管の形を比較することで診断できます。
心臓合併症を引き起こしているかの確認も大切です。その場合、心エコーや心臓カテーテルを用いて調べていきます。
高安動脈炎(大動脈炎症候群)の治療方法
まず、高安動脈炎による炎症を抑えることが基本になります。通常、プレドニゾロンなどの副腎皮質ステロイドを用います。また、血栓ができるのを予防するお薬を使います。
炎症が強く、なかなかステロイドが減らせない場合は、免疫抑制薬を使うこともありますが、副作用がありえますので、主治医と十分な相談の上使用することになります。
炎症が治まった後は、症状に応じてさまざまなお薬を使いますが、血管のつまりが強くて日常生活に大きく差し支える場合は、炎症が治まってから外科的に血管のバイパス手術をすることがあります。研究班の統計では約2割のかたが手術を受けておられます。引用:難病情報センター
http://www.nanbyou.or.jp/entry/141
炎症が強い場合は、ステロイド薬では効かない場合が多いので、免疫抑制薬を用いることもあります。ただ、これらは副作用が出ることが多いので状態を観察しながら慎重に調整することになります。
血管の狭窄が進行していて、日常生活に支障をきたす場合は、血管を拡張するための手術を行う必要もあるでしょう。