慢性膵炎の症状・原因とは?
慢性膵炎(読み方:まんせいすいえん)とはどんな病気なのでしょうか?その原因や、主にみられる症状、一般的な治療方法などについて、医療機関や学会が発信している情報と、専門家であるドクターのコメントをまじえつつ、Medical DOC編集部よりお届けします。
この記事の監修ドクター:
河島 祥彦 医師(医療法人河島医院 理事長)
慢性膵炎とは
膵臓は、多くの消化酵素を含む膵液を十二指腸に分泌して食べ物の消化吸収に重要な臓器です。
慢性膵炎とは、長期間にわたって膵臓の炎症が持続することによって、膵臓の機能が低下する病気です。膵液(消化酵素)は本来食べ物を消化しますが、膵臓自身を溶かしてしまい、繰り返し炎症を引き起こすことで、膵臓の正常な細胞が徐々に破壊されます。膵臓が硬くなったり、膵臓の中に石(膵石)ができたりします。
2011年の1年間に慢性膵炎の治療を受けた患者さんは人口10万人あたり52.4人(全国で約6万7千人)であり、この数は1999年から12年の間で1.5倍以上に増えています。
また、慢性膵炎を新たに発症した患者さんは人口10万人あたり14.0人と推計され、こちらも12年間で2倍以上に増えています。
また、慢性膵炎の患者さんは膵癌になりやすいことが知られています。
慢性膵炎の症状
膵臓は胃の後ろにあるので、みぞおちの辺りの痛みや背中の痛みを感じます。食欲不振、悪心・嘔吐、腹部膨満感、倦怠感なども見られることがあります。
膵臓の機能が悪化する前に、消化吸収が悪化し、下痢(脂肪便)や糖尿病を発症することもあります。膵臓に近い、胆汁の通り道である胆管が狭くなり、黄疸になることもあります。
慢性膵炎の原因
最も多い原因は飲酒(アルコール性)です。
喫煙や脂質異常症、副甲状腺機能亢進症なども原因として知られています。原因不明の特発性膵炎は20%程度といわれます。一部には遺伝子異常によるものもあります。
慢性膵炎の検査法
腹部超音波検査やCT検査、MRI検査などで診断されます。
胃カメラを使って、十二指腸から膵管を造影し、主膵管と膵管の分枝を明瞭にみる検査(内視鏡的逆行性胆道膵管造影法)や、胃カメラの先端に超音波装置がついた超音波内視鏡検査も有用な検査方法です。
慢性膵炎の治療方法
病気の原因、活動性(急性膵炎が繰り返し起こっているか)、重症度(消化不良や糖尿病、外科的治療が必要な合併症などがあるか)を調べて、それらに応じて生活指導や食事療法、薬物治療を始めていきます。
アルコール性慢性膵炎の場合、治療の基本は禁酒です。喫煙も慢性膵炎を悪化させるので、禁煙も重要です。
慢性膵炎による痛みには、鎮痛薬や蛋白分解酵素阻害薬の内服を行います。
膵管の狭窄(細くなったところ)や膵石が痛みの原因である場合には、内視鏡を用いた治療として、膵管にステントを留置して通り道を確保したり、膵石を除去したりします。膵石が大きい場合には、ESWL(体外衝撃波結石破砕術)を併用します。
膵液の不足による、消化・吸収不良(脂肪便など)の症状に対しては、膵酵素薬の内服(膵酵素補充療法)を行います。