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慢性膵炎の症状・原因とは?

 更新日:2023/03/27

慢性膵炎(読み方:まんせいすいえん)とはどんな病気なのでしょうか?その原因や、主にみられる症状、一般的な治療方法などについて、医療機関や学会が発信している情報と、専門家であるドクターのコメントをまじえつつ、Medical DOC編集部よりお届けします。

この記事の監修ドクター:
河島 祥彦 医師(医療法人河島医院 理事長)

慢性膵炎とは

膵臓は、多くの消化酵素を含む膵液を十二指腸に分泌して食べ物の消化吸収に重要な臓器です。
慢性膵炎とは、長期間にわたって膵臓の炎症が持続することによって、膵臓の機能が低下する病気です。膵液(消化酵素)は本来食べ物を消化しますが、膵臓自身を溶かしてしまい、繰り返し炎症を引き起こすことで、膵臓の正常な細胞が徐々に破壊されます。膵臓が硬くなったり、膵臓の中に石(膵石)ができたりします。
2011年の1年間に慢性膵炎の治療を受けた患者さんは人口10万人あたり52.4人(全国で約6万7千人)であり、この数は1999年から12年の間で1.5倍以上に増えています。
また、慢性膵炎を新たに発症した患者さんは人口10万人あたり14.0人と推計され、こちらも12年間で2倍以上に増えています。
また、慢性膵炎の患者さんは膵癌になりやすいことが知られています。

河島祥彦先生 医療法人河島医院 理事長監修ドクターのコメント
急性膵炎の原因はアルコールの場合が多いですが、慢性膵炎は原因不明の場合も多く、アルコールが原因と断定できるケースばかりではありません。ごくまれに、ストレスが原因で自律神経のバランスを崩して慢性膵炎を発症する場合もあります。また、発症する年代は50代や60代のみに集中しているわけではなく、どの年代の方でも慢性膵炎になる可能性はあります。

慢性膵炎の症状

膵臓は胃の後ろにあるので、みぞおちの辺りの痛みや背中の痛みを感じます。食欲不振、悪心・嘔吐、腹部膨満感、倦怠感なども見られることがあります。
膵臓の機能が悪化する前に、消化吸収が悪化し、下痢(脂肪便)や糖尿病を発症することもあります。膵臓に近い、胆汁の通り道である胆管が狭くなり、黄疸になることもあります。

河島祥彦先生 医療法人河島医院 理事長ドクターの解説
慢性膵炎の症状は患者さんによって個人差が大きいことが特徴で、なかには自覚症状がまったくない方もいらっしゃいます。医療機関を受診される方は上腹部痛や背部痛を訴えることが多くなっています。少なくとも上腹部や背部に慢性的な痛みか、食事に伴う痛みを感じているケース、また脂肪性の下痢が続いているケースなどは、慢性膵炎を疑ってみる必要があるでしょう。消化器疾患の専門機関を受診して、慢性膵炎になっていないかチェックしてみることをおすすめします。糖尿病の方は合併症の予防が最も重要ですが、代表的な合併症の神経障害、網膜症、腎症だけでなく、慢性膵炎を合併するケースもありますので、予防や早期発見を心がけましょう。

慢性膵炎の原因

最も多い原因は飲酒(アルコール性)です。
喫煙や脂質異常症、副甲状腺機能亢進症なども原因として知られています。原因不明の特発性膵炎は20%程度といわれます。一部には遺伝子異常によるものもあります。

慢性膵炎の検査法

腹部超音波検査やCT検査、MRI検査などで診断されます。
胃カメラを使って、十二指腸から膵管を造影し、主膵管と膵管の分枝を明瞭にみる検査(内視鏡的逆行性胆道膵管造影法)や、胃カメラの先端に超音波装置がついた超音波内視鏡検査も有用な検査方法です。

河島祥彦先生 医療法人河島医院 理事長監修ドクターのコメント
慢性膵炎の診断は日本消化器病学会が定めた診断基準に沿って行われます。慢性膵炎は人間ドックで発見される場合もあり、特に膵臓に石ができているケースでは、無症状の方でもCT検査や腹部超音波検査で病気が明らかになることがあります。慢性膵炎の検査は外来で日帰りで実施できますので、医師の診察で慢性膵炎の可能性を指摘された場合は、病気が悪化して膵臓の機能が低下する前にチェックしておくことをおすすめいたします。

慢性膵炎の治療方法

病気の原因、活動性(急性膵炎が繰り返し起こっているか)、重症度(消化不良や糖尿病、外科的治療が必要な合併症などがあるか)を調べて、それらに応じて生活指導や食事療法、薬物治療を始めていきます。
アルコール性慢性膵炎の場合、治療の基本は禁酒です。喫煙も慢性膵炎を悪化させるので、禁煙も重要です。
慢性膵炎による痛みには、鎮痛薬や蛋白分解酵素阻害薬の内服を行います。
膵管の狭窄(細くなったところ)や膵石が痛みの原因である場合には、内視鏡を用いた治療として、膵管にステントを留置して通り道を確保したり、膵石を除去したりします。膵石が大きい場合には、ESWL(体外衝撃波結石破砕術)を併用します。
膵液の不足による、消化・吸収不良(脂肪便など)の症状に対しては、膵酵素薬の内服(膵酵素補充療法)を行います。

河島祥彦先生 医療法人河島医院 理事長監修ドクターのコメント
治療中は体調管理のために食生活にも気をつけましょう。油っこいもの、辛いもの、甘いもの、カフェインなどを日常的に多く摂取している方は、この機会に食生活を改めてみてください。軽度の慢性膵炎で、膵臓の機能がある程度維持されている方であれば、内服薬による治療が可能です。その他の治療法としては内視鏡を使う方法もあり、狭くなった膵管の拡大や膵管内の石の除去などが可能です。しかし、内視鏡治療は高度な技術を要するため、実施している医療機関は限られています。

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