粘液嚢胞(読み方:ねんえきのうほう)とはどんな病気なのでしょうか?その原因や、主にみられる症状、一般的な治療方法などについて、医療機関や学会が発信している情報と、専門家であるドクターのコメントをまじえつつ、Medical DOC編集部よりお届けします。
この記事の監修ドクター:
杉本 圭介 歯科医師 杉本歯科クリニック 院長
粘液嚢胞とは
口の粘膜を咬んだり、異物が刺さることなどにより、唾液が出てくる管が閉塞して唾液が貯まったり、唾液の出る管が破れて、唾液が漏れだしてその周囲を線維性の薄い組織が取り囲むことにより生じる嚢胞です。下唇や舌下面に多くみられます。なお、舌下腺から分泌された唾液が口底部に貯留して生じる粘液嚢胞をラヌーラ(ガマ腫)といいます。
口腔外科領域における軟組織嚢胞の大部分が本症です。
引用:日本口腔外科学会
https://www.jsoms.or.jp/public/disease/setumei_noho/
ドクターの解説
粘液嚢胞を生じる際のよくあるきっかけは、唇を噛んでしまったとか、アクシデントで唇を何かにぶつけてしまい外的な強い力が加わった、というケースです。外傷によって唾液腺の出口が塞がることで起こるため、免疫力の低下など体の中の状態はあまり影響しないと考えられます。腫れの大きさには個人差があります。放っておいてどんどん大きくなってしまうと治療する際の傷が大きくなるため、粘液嚢胞を見つけたらまずは歯科医院に相談してみてください。また、粘液嚢胞は自然に治ることもゼロではありません。小さなお子さんの粘液嚢胞で、外科的処置に抵抗がある場合は、ひとまず様子を見る場合もあります。
粘液嚢胞の症状
自覚症状としては、唇が少し腫れているような感じがするだけで多くの場合、痛み等はありません。それを噛んだり針で刺して中の唾液が流れ出すと、腫れは一時的に消えますが、数日で再び腫れてきます。
引用:医療法人恵優会
https://keiyoukai.jp/blogs/article.php?id=1140
ドクターの解説
粘液嚢胞は基本的に膨らんでいるだけで、痛みは伴いません。口の中に違和感を感じる程度です。しかし粘液嚢胞ができて、潰れて、ということを繰り返すと痛みが出てくる場合もあります。私が過去に診察した粘液嚢胞の患者さんは、大きいもので2センチ程度まで潰れずに成長していたケースがありました。大きくなると気になって、なかには粘液嚢胞を歯で噛んで潰そうとする人もいますが、なるべくやめたほうがいいでしょう。潰した箇所が傷になり、瘢痕として残ってしまうと、唾液の出口はさらに唾液を排出しにくくなりますし、再発した場合はさらに大きくなる可能性があります。
粘液嚢胞の原因
原因の多くは誤って下くちびるやほほを噛んだり、歯ブラシやかたい食べ物などで口の中を傷つけたりしてできます。思い当たる場合は粘膜を傷つけないように気をつけてください。
引用:東京都立小児総合医療センター
http://www.byouin.metro.tokyo.jp/shouni/section/shounisika_nenneki.pdf
粘液嚢胞の検査法
ドクターの解説
粘液嚢胞は患部を目視すれば比較的容易に診断できるため、レントゲン撮影などの必要はありません。もし血管腫のように内部が血液のような色味になっている場合は、粘液嚢胞ではないと考えられます。血管腫とは、血管の組織が増生されて血管の形状に異常がみられる病気です。
粘液嚢胞の治療方法
嚢胞摘出を基本とします。原因となっている唾液腺も同時に除去します。大きいラヌーラは、嚢胞の一部を開窓する(開窓術 かいそうじゅつ)こともあります。
引用:日本口腔外科学会
https://www.jsoms.or.jp/public/disease/setumei_noho/
ドクターの解説
粘液嚢胞は、上記の通り切除と摘出により治療します。手術において一番大切なポイントは、 嚢胞付近にある小唾液腺も同時に摘出して、手術後に小唾液腺の出口が塞がらないようにしておくことです。粘液嚢胞を切除する際、人によっては小唾液腺がぶどうの房のようにたくさん見つかる場合があります。この中から粘液嚢胞の原因になった小唾液腺を見分けることはできないため、患部を開いて見つかった小唾液腺はすべて摘出して再発を予防するのです。多くの小唾液腺を摘出しても、口腔内の機能が損なわれることはありませんので安心してください。ただし、手術時に周辺の血管や神経が傷つくと、手術後に知覚過敏、あるいは感覚が鈍るなどの後遺症が残ることは、リスクとして知っておきましょう。
この記事の監修ドクター