パニック障害の症状や治療方法をご紹介
パニック障害(読み方:ぱにっくしょうがい)とはどんな病気なのでしょうか?その原因や、主にみられる症状、一般的な治療方法などについて、医療機関や学会が発信している情報と、専門家であるドクターのコメントをまじえつつ、Medical DOC編集部よりお届けします。
この記事の監修ドクター:
野本裕子医師(医療法人社団一友会 ナチュラルクリニック代々木 院長)
パニック障害とは
突然理由もなく、動悸やめまい、発汗、窒息感、吐き気、手足の震えといった発作を起こし、そのために生活に支障が出ている状態をパニック障害といいます。
このパニック発作は、死んでしまうのではないかと思うほど強くて、自分ではコントロールできないと感じます。そのため、また発作が起きたらどうしようかと不安になり、発作が起きやすい場所や状況を避けるようになります。とくに、電車やエレベーターの中など閉じられた空間では「逃げられない」と感じて、外出ができなくなってしまうことがあります。引用:厚生労働省『みんなのメンタルヘルス総合サイト』
http://www.mhlw.go.jp/kokoro/know/disease_panic.html
パニック障害は、突然胸がドキドキし、息が苦しくなったり、震えや吐き気などの身体症状が発作のように現れます。パニック発作に襲われると、ひょっとすると自分は死んでしまうのではないかというほどの強い恐怖を感じるため、一度パニック発作を経験してしまうと、また同じようになるのではないかという不安(予期不安)が強化されてしまいます。そのため、実際には発作が起きなくても外出するのが怖くなり、それが続くと引きこもりになってしまうこともあるので注意が必要です。そのように強い不安を伴う病気ですが、発作は一時的なもので、大抵は病院に着く頃には治まるので、検査をしても身体的な異常が見つからないのが特長です。
パニック障害の症状
心臓・呼吸器の症状
- 心臓がドキドキする(動悸、心拍数の増加)
- 息切れや息苦しさ
- 喉に何かつまったような窒息感
胸・おなかの症状
- 胸の痛みや不快感
- 吐き気やおなかのあたりの不快感
全身的な症状
- からだの一部のジンジン、ビリビリとしびれるような感じ
- 発汗
- からだの震え
- 寒気または熱っぽい感じ
感覚の異常
- めまいやふらつき感、気が遠くなるような感じ
- 今、起こっていることが現実ではないような感じ、自分が自分でない感じ
(離人症状)不安・おそれ
- コントロールを失う・気が狂ってしまうのではないかという恐れ
- このまま死んでしまうのではないかという恐れ
引用:ファイザー株式会社
http://www.cocoro-h.jp/panic/about_panic/case.html
パニック障害は発作によって患者が強い不安を感じることが特徴です。激しい動悸がしたり胸が苦しくなったり、呼吸が出来なくなったりすることから、初めて発作に襲われた人はパニック障害だと分からず、心臓病や呼吸器の病気をまっさきに疑って循環器系や内科を訪れるケースも多く見られます。
パニック障害を発症すると、発作時の恐怖が思い起こされ、それが強い不安となります。そのため電車に乗れなくなったり、乗っても途中で降りてしまうなど通勤や通学が困難になる人が多いのも特徴です。発作が起こる時期や頻度に規則性はなく、いつ起こるが分からないことも予期不安を大きくしている要因の一つです。ただし食事や生活が乱れていたり、強いストレスを受けている時に起こりやすい傾向があります。
パニック障害の原因
パニック障害は、ストレス性の不安症や神経症、あるいは心の病気とも違います。最近の研究などから、パニック障害の原因は、脳内神経伝達物質(脳内ホルモン)のバランスの乱れであることがわかってきています。
引用:オムロン ヘルスケア
https://www.healthcare.omron.co.jp/resource/column/life/43.html
パニック障害の原因はノルアドレナリンやセロトニンといった神経伝達物質のアンバランスや、脳内のホルモンバランスの乱れが原因だと考えられています。要因としては食生活の偏りや食物自体の栄養不足、睡眠不足や生活リズムが不規則といった生活習慣の乱れ、精神的なストレスのほか、環境によるストレスや過労などの影響が考えられます。
パニック障害の検査法
突発性のパニック発作の繰り返しと予期不安があり、原因になるような身体疾患がないのが診断の主な条件です。
この身体疾患を除外するために、内科的なさまざまな検査が行われます。尿、血液、心電図、場合によっては脳波検査などが行われ、心血管系疾患、呼吸器疾患、甲状腺機能亢進症(こうじょうせんきのうこうしんしょう)、低血糖、薬物中毒、てんかんなどが除外されます。
引用:メディカルiタウン
http://medical.itp.ne.jp/byouki/040514000/
身体的疾患がみられない病気のため、他の病気の可能性を消去していくことでパニック障害に辿り着く場合もあります。発作時の症状から患者自身が心臓病や呼吸器の病気だと思い込んで循環器科や内科を受診し、検査をしても異常がないことからパニック障害だと指摘される場合もあります。
パニック障害の治療方法
治療法には、薬物療法と認知行動療法があります。
通常は、まず抗不安薬(ベンゾジアゼピン誘導体:ソラナックスなど)や抗うつ薬(SSRI〔パキシル、ジェイゾロフト〕など)、その他を使ってパニック発作が起こらないようにする治療を行います。副作用のことも考慮に入れたうえで、発作が起こらなくなるまで十分な量を十分な期間服用し、発作がなくなっても6カ月~1年は薬を続ける必要があります(ただし、ベンゾジアゼピンは抗うつ薬の効果が出てきたら早めにやめる)。
次に、不安が軽くなってきたら、今まで避けていた外出や乗り物に少しずつ挑戦し、慣らしていく訓練(曝露療法(ばくろりょうほう):行動療法の一種)を行います。また、ちょっとした動悸を心臓発作の前触れではないかなどと破局的に解釈する考え方の癖を直していきます(認知療法)。
パニック発作は薬物でほとんど治りますが、予期不安や広場恐怖はその後も長く続くことが多く、これには認知行動療法を併用する必要があります。うつ病が合併した場合は、休養と抗うつ薬療法が必要で、うつ病の治療に準じます。
引用:メディカルiタウン
http://medical.itp.ne.jp/byouki/040514000/
パニック障害にかかると予期不安の強さから、電車に乗れなくなったり、外出すること自体が怖くなって引きこもりがちとなり、更にうつ病を併発する場合があります。通勤に支障が出ると遅刻や欠勤が増え、場合によっては休職や離職を余儀なくされます。復帰する場合は最初から無理をせず、まずは遅い時間に出社して早く帰るなど時短勤務からスタートし、少しずつ馴らしていくといいでしょう。目に見える疾患がないので周囲に理解されにくい病気でもあるので、勤務先や周囲の人に病気であることを知ってもらうことも大切です。
栄養素の過不足も原因になるところから、食生活に問題のある人は栄養学的なアプローチも有用です。特にダイエットをおこなっていて、パスタやサンドイッチといった炭水化物が多めの食事で済ませがちな日本女性は鉄分やたんぱく質が慢性的に不足しており、腸内環境も良好とはいえない人が多いのが特徴です。
これ以外にもダイエットを煽る風潮や野菜そのものの栄養不足、食品添加物の過剰摂取や満員電車での通勤といったストレスも心身のアンバランスを招きます。
またパニック障害は患者さん一人一人の気質に負う部分も大きく、体調を整え、外的要因を取り除いても不安がなくならない患者もいます。そういった患者さんに対しては、カウンセリングなど心理的な治療を行なう場合もあります。