インフルエンザとはどんな病気なのでしょうか?その原因や、主にみられる症状、一般的な治療方法などについて、医療機関や学会が発信している情報と、専門家であるドクターのコメントをまじえつつ、Medical DOC編集部よりお届けします。
この記事の監修ドクター:
春名 令子 医師(はるなクリニック副院長)
インフルエンザとは
インフルエンザとは、インフルエンザウイルスを病原とする気道感染症です。通常、寒い季節に流行しますが、最近では、一年を通して散発的にみられるようになり、注意を要します。一般のかぜ症候群とは分けて考えるべき重くなりやすい病気です。
年によって流行する型が異なります。従来のインフルエンザウイルスが大きく変化して大流行する新しいインフルエンザ(新型インフルエンザ)も重要です。
ドクターの解説
大きな流行の原因となるインフルエンザウイルスはA型、B型の2種類あり、A型は香港型とソ連型の2種類が有名です。流行時期は12月から3月で、おおむね1〜2月にピークを迎えます。インフルエンザ予防=ワクチン接種、と考える方が多いのですが、腸管免疫の働きを高めることも重要です。胃腸に負担をかける暴飲暴食をしない、早寝早起きする、カテキンの効果を活用して緑茶や紅茶をこまめに飲んで喉を湿らせるなど、日常生活の心がけが予防に役立ちます。ワクチン接種は、抗体ができるまでに少なくとも2週間程度はかかります。流行のピークは毎年異なるため断言はできませんが、接種を受けるなら11月中が目安と考えてください。
インフルエンザの症状
通常のかぜ症候群とは症状は似ているものの、大きな違いは、かぜ症候群では全身的な症状がないのに対して、インフルエンザでは強い全身症状があらわれることです。
インフルエンザの場合は38度以上の発熱、頭痛、関節痛、筋肉痛など全身の症状が強く、あわせて普通のかぜと同様の、のどの痛み、鼻汁などの症状も見られます。主な合併症として肺炎と脳症があります。
小児では中耳炎、熱性けいれんなどを併発し、重症化することがあるのもインフルエンザの特徴です。
高齢者や、呼吸器や心臓などに慢性の病気を持つ人は重症化することが多いので、十分注意する必要があります。最悪の場合は死に至ることもあります。
ドクターの解説
インフルエンザにかかっても、ワクチン接種をしている人は軽症で済む場合があります。13歳未満の子どものワクチン接種は、十分な効果を得るためには2回接種が原則と言われています。子ども、特に幼児がインフルエンザにかかった際に注意したい「インフルエンザ脳症」は、多くの場合、発熱から24時間以内で嘔吐や意識障害などの重い症状を呈し、年齢が低いほど死亡率は高くなります。まれに大人でも発症する場合があります。死亡や後遺症を予防するには、早期に医療機関を受診して治療を開始することが何より重要です。また、ライ症候群はインフルエンザ脳症と違って、発熱後数日経ってから起こります。原因不明とされていますが、アスピリンなどの解熱剤との関連も指摘されているため、インフルエンザにかかった時は、解熱剤は極力使用しないほうが良いでしょう。
インフルエンザの原因
インフルエンザは感染した人の咳などによって飛び散った、ウイルスを含む粒子(飛沫)を鼻や口から吸い込むことで感染します(飛沫感染)。また、感染した人がせきを手で押さえた後や、鼻水を手でぬぐった後に、ドアノブ、スイッチなどに触れると、その触れた場所にウイルスを含んだ飛沫が付着することがあります。
その場所に別の人が手で触れ、さらにその手で鼻、口に再び触れることにより、粘膜などを通じてウイルスが体内に入り感染します。これを接触感染といいます。
インフルエンザウイルスには、大きく分けてA型、B型、C型の3種類があります。特に大きな流行の原因になりやすいのはA型です。
インフルエンザの検査法
インフルエンザの検査は簡易キットがよく使われます。鼻の中から綿棒でぬぐい取るだけで診断可能です。発熱の出現直後は陰性になることがあるため、検査の時期は熱が出て12~48時間に診断精度があがるとされています。検査キットの種類によりますが、10~20分程度で結果は判明します。
ドクターの解説
インフルエンザの検査は迅速診断キットを使用することがほとんどです。この検査はインフルエンザウイルスが体内で増えていないと反応しないため、正確な結果を得やすいのは発症後12〜24時間を目安に検査した場合です。しかし、中には猛烈な勢いでウイルスが増殖して、激しい寒気を感じるなど急激な症状を呈する人もいて、発熱から数時間で陽性反応が出ることがあります。反対に、熱が出なくても陽性になる「隠れインフルエンザ」の人もいます。医師は検査キットありきで診断しているわけではなく、全身の症状から総合的に判断しますから、症状が激しい場合は発症後12時間を待たずに受診してください。
インフルエンザの治療方法
早期の治療としては抗インフルエンザ薬の投与がよく行われます。その他は、風邪に対する対症療法と同様に、水分補給による脱水の改善や解熱鎮痛薬の使用などです。
インフルエンザの治療薬はノイラミニダーゼ阻害薬、キャップ依存性エンドヌクレアーゼ阻害薬の2種類に分かれます。種類としては内服薬、吸入薬、注射薬があります。
多種の薬剤がありますが、年齢や重症度、投与経路の点を考慮して薬剤が選択されます。
ドクターの解説
タミフルなどの抗インフルエンザ薬の使用は発症後48時間以内が目安ですが、異常行動などの副作用が心配な人もいるでしょう。2018年3月現在、タミフルの10代の患者さんへの使用は原則禁止されています。その一方、新生児や乳児に対しては、重大な合併症を防ぐために2016年から保険適応での使用が認められています。インフルエンザの治療には漢方薬も有効で、最も使いやすいのは麻黄湯です。また、インフルエンザ治療には安静にして水分を十分補給することが大切です。発症から5日目までは自宅安静期間で、4,5日目に2日間熱が出ていなければ、6日目から出勤・登校しても大丈夫です。幼児の場合は、3日目から熱が下がり、3日間熱がなければ登園可能です。ただし、発熱当日は0日目と数えます。また、2018年5月には、1回の服用でウイルスの増殖を直接抑える薬が発売される予定です。
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