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歯の神経を抜くってどういうこと?方法やメリット・デメリットについて解説!

 公開日:2024/12/24

「歯の神経を抜く」といわれると、多くの人は不安感や恐怖心が先立つことでしょう。外からの刺激を感知して、痛みというサインを引き起こす神経そのものを抜くのですから、それ相応の負担がかかりそうなものです。そもそも一般的な病気でも神経を抜くような処置を受けることは稀であるため、その手順や治療に伴うメリットとデメリットについても気になることかと思います。ここではそんな歯の神経を抜く処置について、詳しく解説をします。

歯の神経とは

歯の神経とは何ですか?

歯の神経とは、歯の中心に存在している空洞を満たす軟組織です。専門的には歯髄(しずい)と呼ばれる組織で、動静脈や毛細血管、リンパ管、神経などによって構成されています。ひと言で“歯の神経”といっても、実際はさまざまな組織が集合しており、歯に対して重要な役割を担っているのです。

歯の神経にはどのような役割があるか教えてください。

歯の神経は、次のような役割を担っています。

役割1:歯にミネラルを供給する
歯髄に分布している血管は、血液を介してカルシウムを始めとしたミネラルを歯に供給しています。そうしたミネラルは、修復象牙質などを作る際に使用されることから、歯髄は歯の強度を保つ上で必須といえるでしょう。

役割2:歯に免疫細胞を運搬する
歯髄の血管は、マクロファージやリンパ球といった免疫細胞を運搬する役割も担っています。仮に歯が細菌に侵入されたとしても、免疫細胞が正常に働くことで感染を免れます。

役割3:歯の異常を知らせてくれる
歯の表面がかけたり、むし歯になったりすると、冷たいもので歯がキーンとしみる症状が現れますが、それは単に不快な思いをさせるものではなく、歯の異常を知らせるためのサインであるといえます。歯の神経はそうした異常を検知して警告をするセンサーのような役割も担っているのです。

歯の神経を抜くような症状について

歯の神経を抜くような症状について

歯の神経を抜く必要があるかセルフチェックする方法について教えてください

歯の神経を抜く抜髄の要否は、歯科医院での精密検査を実施してみなければ診断できませんが、大まかな判断であればセルフチェックが可能です。以下に挙げるような症状が認められる場合は、基本的に抜髄が必要となりやすいといえます。

症状1:安静時にも歯が痛む
冷たいものを口にした時だけ、歯が一時的に痛む場合は、歯の神経を抜く必要性は比較的低いといえます。なぜなら病変がまだ歯の神経から遠く離れているからです。それが安静時にもズキズキと痛むようになったら、抜髄の必要性が高まります。専門的には自発痛(じはつつう)と呼ばれるもので、歯の神経に感染が起こっている可能性が高いといえます。そうした自発痛は、ベッドに横たわった時など、副交感神経が優位になることで強まる傾向があります。

症状2:甘いものや熱いものでも歯がしみる
冷たいものだけでなく、甘いものや熱いものまで歯がしみるようになったら、虫歯もかなり進行していることが考えられます。ケースによってはもうすでに露髄をしているため、早急に抜髄しなければなりません。ですから、食事の際にどのような食品が歯にしみるのかどうかも普段から注目しておく必要があるといえます。

症状3:歯の根元が腫れている
虫歯になっている歯の根元の歯茎が腫れている場合は、根尖性歯周炎(こんせんせいししゅうえん)が疑われます。根管内の病変が歯の根の先に漏れ出ていく病気で、抜髄や根管治療が必須となります。

症状4:噛んだ時に強い痛みを感じる
食べ物を噛んだ時や歯ぎしりをした時に強い痛みを感じる場合は、歯根が折れている可能性があります。いわゆる歯根破折(しこんはせつ)では、歯根の折れ方によって治療法が変わってきますが、歯の保存が可能な場合は、抜髄をした上で根管に適切な処置を施し、被せ物を装着します。歯根が垂直的に折れている場合は、抜歯を余儀なくされることが少なくありません。

症状5:知覚過敏の症状が治らない
冷たいものがキーンとしみる象牙質知覚過敏は、軽度から中等度であれば保存的な治療で改善できます。具体的には、象牙細管を塞ぐ処置や歯質を強くするフッ素塗布などで、知覚過敏の多くは改善されていきますが、それでも症状が治まらない場合は、最終的に抜髄をしなければなりません。

歯の神経を抜かないためにできることについて教えてください。

抜髄を免れるためには、次の点に配慮する必要があります。

ポイント1:虫歯は予防、早期発見・早期治療を心がける
虫歯を予防することができれば、歯の神経を抜くリスクを大幅に下げられます。仮に虫歯を発症してしまったとしても、早期に発見して治療を受けることができれば、抜髄をする必要性もなくなるでしょう。ですから、抜髄を回避するためには、日頃から口腔ケアを徹底することと、歯科科検診を定期的に受けることが何より重要となります。

ポイント2:診療技術の高い歯科医師を見つける
抜髄が必要となるかどうかは、歯科医師の技術によっても変わっていきます。まったく同じ症例でも、すぐに抜髄を提案する歯科医師もいれば、可能な限り歯髄を残す方法を模索する歯科医師もいます。ちなみに後者は、高い技術や豊富な知識・経験を持った歯科医師であることが多いです。

歯の神経を抜く治療

歯の神経を抜く治療

歯の神経を抜くとはどういうことですか?

歯の内部から酸素や栄養素、免疫細胞などを供給する歯髄を物理的に抜き取ることです。その結果、歯は死んだ状態(失活歯)となり、寿命も自ずと短くなります。

歯の神経を抜く治療の流れについて教えてください

局所麻酔を施した後、歯の神経と血管からなる歯髄をクレンザーやファイルといった針のような器具で抜き取ります。根管内の歯髄をすべて取り除くためには、根管の拡大や形成、消毒などを行わなければなりません。根管内の歯髄や汚染物質、細菌などをすべて取り切ったら、根管充填を行います。

歯の神経を抜かない治療方法はありますか?

覆髄(ふくずい)という方法を選択することで、歯の神経を抜かずに済むことがあります。覆髄とは、文字通り歯髄を歯科材料で覆う処置で、間接覆髄法と直接覆髄法の2種類があります。間接覆髄法は、もう少しで露髄しそうなケースに適応され、直接覆髄法は、もうすでに露髄しているけれど感染が起こっていないケースに適応されます。どちらも水酸化カルシウム製剤やMTAセメントなどを使うことで、歯の神経を抜かずに残すことが可能です。

歯の神経を抜くメリットとデメリット

歯の神経を抜くメリットについて教えてください

歯の神経を抜くことで、感染による痛みを取り除くことができます。同時に、感染の範囲がそれ以上、広がるのを防止する作用も期待できます。感染した歯髄を放置している限り、むし歯を完治させることができないどころから、根尖性歯周炎や顎骨骨髄炎(がっこつこつずいえん)といったさらに深刻な病気へと発展しかねないため、早急に適切な処置を受けた方が患者さんのメリットも大きくなるでしょう。

歯の神経を抜くデメリットについて教えてください

歯の神経を抜くと、その歯は死んだ状態となるため、酸素や栄養素、免疫細胞の供給が停止します。その結果、むし歯が再発しやすくなったり、歯の異常に気づきにくくなったりすることでしょう。その後に行う根管治療も必ず成功するわけではありません。

編集部まとめ

このように歯髄には、歯にミネラルや酸素、免疫細胞を供給するという重要な役割があります。それを丸ごと抜き取ってしまうのが抜髄という処置です。進行したむし歯などでは、歯の神経を抜く処置が必須となることから、抜髄後は歯の寿命もある程度、短くなってしまうデメリットは避けられませんが、不快な歯痛からの解放やむし歯の進行を停止できるなど、得られるメリットも大きいです。その点も踏まえた上で、歯の神経を抜く処置と向き合うことが大切といえるでしょう。

参考文献

この記事の監修歯科医師
坪光 玄義歯科医師(地挽歯科医院)

坪光 玄義歯科医師(地挽歯科医院)

鶴見大学歯学部 卒業 / 平成24年歯科医師免許証 取得 / 現在は地挽歯科医院、蕨にしき町歯科・口腔外科(いずれも非常勤)

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