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根管治療と抜歯ならどっちを選ぶ?治療の特徴・比較を解説

 公開日:2024/12/23

歯科に治療に行った際に、自分の歯を残せる根管治療にするか抜歯にするか、どちらかの選択をすることになった方もいるでしょう。

また、根管治療とは具体的にどういうものなのかわからず不安になり、どのような基準で選べばよいのか判断できないかもしれません。

本記事では、根管治療と抜歯の違いや治療の特徴を詳しく解説します。ぜひ最後まで読んで、治療を選択をする際の参考にしてください。

根管治療と抜歯の特徴

歯レントゲン

根管治療とはどのような治療法ですか?
根管治療は、抜髄と感染根管治療の2つに分けられます。抜髄は、むし歯が悪化して生きている歯髄(歯の神経)まで達し、歯髄炎(歯の神経の炎症)を起こした場合に行われる治療法です。炎症の抑制・歯髄の保存が困難な際に、歯髄を取り除く処置が必要となるでしょう。
一方、感染根管治療は根管内に細菌が広がった場合に感染した根管を治療する方法です。主に、歯周組織(歯の根の先の周囲)に炎症を起こした状態である根尖性歯周炎に対して行われます。根尖性歯周炎は、歯髄が細菌感染を起こして壊死・壊疽を起こしたり、根幹治療後に再度細菌感染を起こしたりするなどの感染経路が考えられます。
具体的には根管内の歯髄や溜まった膿を除去してから、薬剤で洗浄・消毒して殺菌します。その後、被せ物を装着するまでが一連の流れです。この根管治療により、抜歯をせずに済みます。しかし、このような根管治療を行っても症状の改善がない場合には外科的処置として歯根端切除術が行われるケースがあります。歯根端切除術は、感染が残っている歯の一部分だけを取り除く方法です。
抜歯が行われるのはどのようなケースですか?
抜歯はさまざまな状況で必要とされる歯科処置で、いくつかの典型的なケースがあります。抜歯が必要な一般的なケースを4つ説明しましょう。
1つ目は、歯がむし歯や進行した歯周病によって深刻な損傷を受け、ほかの治療法が有効でない場合です。抜歯をして歯周病や感染の進行を抑制し、周囲の歯に影響を及ぼすのを防ぎます。
2つ目は、十分なスペースが確保できずほかの歯と重なって生えている場合です。この場合は歯を少なくして歯並びの問題を解消し、口腔内の健康を維持できるでしょう。
3つ目は、親知らずが正常に生えず歯茎に影響を及ぼしたり、ほかの歯に圧迫をかけたりする場合です。抜歯をすると、親知らずにともなう痛みや炎症を軽減できます。重複した歯を抜いた場合、矯正治療を選択肢に入れてもよいでしょう。
4つ目は、歯の根が折れたり損傷が激しい場合です。この場合は抜歯の選択肢のみになるケースが多いでしょう。感染の広がりを制御し、ほかの歯に悪影響を与えるのを予防できます。
なお、抜歯した後にインプラント治療・ブリッジ治療を行うことがあります。抜歯によって生じた歯列の乱れを軽減するためです。
インプラント治療とは、顎の骨にインプラントを入れるための穴を開け、人工歯根を埋込し人工歯を装着する治療法です。ブリッジ治療とは、欠損した歯の両端の歯を台にして歯を補う治療方法です。
根管治療と抜歯の難易度の高さについて教えてください。
根管治療と抜歯では、それぞれ難易度が異なります。根管治療は、歯の形態や根の数によって治療の難易度が変わります。多根性歯の場合、特に高度な技術が必要となるでしょう。
また、歯髄への感染が進行している程治療が難しく、根管内から細菌を完全に取り除くためには細心の注意が必要です。さらに、微細な器具や高度な技術が不可欠であり、患者さんと歯科医師の密接な連携と専門的な知識が求められます。
抜歯の難易度は、歯の位置や形態に大きく左右されます。特に奥歯や親知らずのように、口の奥にある歯は治療が難しいです。歯の根の形状や数も難易度に影響します。湾曲した根や多数の根がある場合、抜歯は高度な技術が求められるでしょう。
さらに、歯周組織や隣接する骨構造との密接な関係も難易度に影響を与えます。なお、根管治療と抜歯のどちらの処置も、患者さんの具体的な状態によって難易度が変動します。
歯科医師がすすめる治療と自分の希望する治療が違う場合どうすればよいですか?
歯科医師がすすめる治療と自分の希望する治療が違う場合、まず、自分の意向や懸念をわかりやすく歯科医師に伝え、歯科医師が提案する治療の理由・メリットを質問しましょう。
また、歯科医師がなぜ特定の治療をすすめているのかを知ることで、より適切な判断ができるでしょう。また、決断をする前に別の歯科医師のセカンドオピニオンを受けることも選択肢のひとつです。異なる歯科医師の意見を聞くことで、より納得したうえで治療を進められるでしょう。
どの治療を選択するかは、リスクとメリットを十分に検討して決めることが重要です。治療効果やリスク・費用などを包括的に考え、バランスを取りましょう。歯科医師とのコミュニケーションを大切にし、信頼関係を築くことで適切な治療法を見つけやすくなります。

根管治療と抜歯の治療の比較

説明する看護師

根管治療と抜歯ではどちらの方が予後がよいですか?
根管治療は、歯を保存し口腔機能を保持できるため、咬合や審美的な側面が損なわれません。そのため一般的には予後がよいと考えられます。ただし、数年〜20年後に根尖病巣ができることがあります。
根尖病巣とは、歯根の周囲にできる膿の溜まった袋のことです。根尖病巣は歯冠部からの細菌感染が一つの原因として考えられますが、日々のケアだけでの予防は難しいので、治療後も歯科医院へ定期的に通うことをおすすめします。
一方抜歯は、歯が重度な損傷や病変で修復が難しい場合や、ほかの歯科治療が不可能な場合に選択されることが多い治療法です。周囲の歯周組織や顎の骨に深刻な問題がある場合に適用されることが多いため、予後に出血が止まりにくかったり抜歯部位の痛みや治癒が遅れたりするケースがあります。
根管治療と抜歯のどちらも、予後は具体的な症状や患者さんの状態によって大きく異なるといえます。
根管治療のメリット・デメリットを教えてください。
根管治療のメリットは、自分の歯を保持できることです。治療後に被せ物をして、噛む機能を修復できます。また、多くの場合、強い痛みからも解放されるでしょう。
デメリットは、歯が脆くなりやすいことです。歯髄には神経だけでなく血管も通っており、歯に栄養を供給する重要な役割を果たしています。感染による炎症で損傷した歯髄を取り除くことで、歯に栄養分が届かなくなるのです。その結果、歯は脆くなり、硬いものを噛む際に歯が割れる可能性があります。
抜髄や感染根管治療後は歯質が少なくなり、歯が薄くなることも歯が割れやすくなる原因のひとつです。それだけでなく、歯の神経を失うことで痛みを感じなくなるため、むし歯が進行しても早期発見が難しくなります。治療回数が増えることで、治療費がかさむこともデメリットとなるでしょう。
抜歯のメリット・デメリットを教えてください。
抜歯のメリットは歯に関連する痛みや不快感が軽減され、多くの場合歯の感染や損傷にともなう症状が解消されることです。ほかの歯に悪影響が及ぶ可能性がある場合、抜歯によりほかの歯に広がるリスクが軽減できます。
また迅速に行えることもメリットといえるでしょう。場合によっては、一度の処置で問題が解決できる可能性があります。一方、デメリットは歯を失うことです。自然な咬合や口腔機能が損なわれる可能性があります。
また、前歯など目立つ場所の抜歯は、見た目に影響を与えるでしょう。さらに周囲の歯周組織や顎の骨に影響を与えることがあり、将来的に問題が出てくる可能性があります。

根管治療・抜歯の治療で知っておきたいこと

歯科治療

根管治療や抜歯にかかる費用を教えてください。
根管治療は歯の位置や種類によって、治療の難易度が変動します。奥歯や多根歯の場合は治療が複雑になりやすく、費用にも影響を与える可能性があるのです。また、症状の進行度や感染の深刻さによっても影響が出るでしょう。
根管治療は複数回にわたる場合があり、通院回数が増えると費用も増加する傾向にあります。歯科医師の経験や専門知識も費用に影響します。このように費用に幅はありますが、一般的には保険診療の場合は3割負担で1根管あたり1,500円前後です。
一方抜歯の治療費用は、抜かれる歯の種類によって異なります。単純な抜歯や難易度の低い抜歯であれば、一般的に費用は抑えられるでしょう。ただし、抜歯に使用される麻酔の種類や方法によっても費用が変動します。
根管治療と同様に、歯科医師の経験や専門知識も費用に影響を与えるでしょう。治療費用は保険適用が3割負担の場合で1本約3,000円~4,000円です。
根管治療や抜歯で使われる器具にはどのようなものがありますか?
まず、根管治療で使われる主な器具には以下のようなものがあります。

  • 口腔鏡
  • エンドファイル
  • ラバーダム
  • マイクロスコープ(歯科用顕微鏡)

口腔鏡は歯を見るための鏡で、狭い場所や奥歯を確認するのに使われます。エンドファイルは、歯の根管内の異物や損傷した神経組織を取り除くためのワイヤー状の器具です。
ラバーダムはゴム製のシートで、治療する歯の周りを覆うことで、唾液による感染防止が可能です。また、ラバーダムには誤飲事故を防ぐ効果もあります。
マイクロスコープは約30倍まで歯を拡大できます。肉眼では見えない部分を確認できるので、精密な根管治療を行う際に使用されることが多いです。
次に、抜歯で使われる器具には、以下のようなものがあります。

  • 抜歯鉗子
  • へーベル

抜歯鉗子は、歯をしっかりとつかみ引き抜くための鉗子です。へーベルは、マイナスドライバーのような形をしており、歯と歯肉の間に入れてテコの原理で歯を脱臼させて抜歯する器具です。

根管治療や抜歯の治療後に気を付けるべきことはありますか?
根管治療や抜歯の治療直後は、特に慎重なケアが必要です。処方された薬やケアの手順はしっかり守りましょう。痛みが強い時は鎮痛薬が欠かせませんが、歯科医師の説明をよく聞き、適切に使用して痛みを管理することが大切です。
十分な休息も必要なため、激しい運動や活動は避けた方がよいでしょう。計画どおりに検診を受け、治療後についても歯科医師に随時相談することをおすすめします。
また、処置後に痛みを感じる場合は硬い食べ物を避け、軟らかい食事に切り替えましょう。たばこの喫煙やアルコールの摂取は、治療に悪影響を与える可能性があるため制限しなければいけません。

編集部まとめ

笑顔の医師と患者

本記事では、根管治療と抜歯の治療の違いや特徴を説明しました。

根管治療と抜歯のメリット・デメリットを理解していただけたと思います。

また、どのような場合に根管治療または抜歯の選択をするべきか参考になったのではないでしょうか。

根管治療や抜歯をしなければならなくなる前に、しっかりと歯のケアをしましょう。

定期的に歯科医院を受診し、歯を健康な状態に保つよう心がけることが大切です。

参考文献

この記事の監修歯科医師
宮島 悠旗歯科医師(宮島悠旗ブライトオーソドンティクス)

宮島 悠旗歯科医師(宮島悠旗ブライトオーソドンティクス)

愛知学院大学歯学部卒業 / 東京歯科大学千葉病院にて臨床研修医終了 / 東北大学大学院歯学研究科口腔発育学口座顎口腔矯正学分野 助教 / 宮島悠旗ブライトオーソドンティクス起業 / 著書「国際人になりたければ英語力より歯を“磨け”-世界で活躍する人の『デンタルケア』-」(幻冬舎)出版 / 合同会社T&Y Connection設立 / ASIA GOLDEN STARAWARD(企業家賞)受賞 / 著書「歯並び美人で充実人生-幸せを呼ぶゴールデンスマイル-」(合同フォレスト)出版 / 株式会社オーティカインターナショナル認定講師 / 現在は宮島悠旗ブライトオーソドンティクス代表としてフリーランス矯正歯科医を行っている / 専門は矯正歯科(Invisalign®︎、小児矯正、Myobrace®︎、マルチブラケット、アンカースクリュー、PBMオルソ(光加速矯正装置))

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