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根管治療は何年持つ?寿命を伸ばすために知っておきたいこと

 公開日:2024/12/21

歯の神経を抜くと歯の寿命が短くなると聞いたことはありませんか?
根管治療の歯の寿命を伸ばすためにはどうすればいいのでしょうか。
本記事では根管治療が何年もつのかについて以下の点を中心にご紹介します。

  • 歯の神経の役割
  • 歯の神経を抜くと歯の寿命が短くなる理由
  • 歯を長持ちさせるための工夫

根管治療は何年もつのかについて理解するためにもご参考いただけますと幸いです。
ぜひ最後までお読みください。

そもそも根管治療とは

そもそも根管治療とは

根管治療は、むし歯が進行して歯の根っこにまで達した際に行われる歯科治療の一つです。むし歯治療では歯を削って詰め物や被せ物を施して対処しますが、むし歯が進行すると歯髄(血管・神経)が侵され、治療では歯を維持することが難しくなります。このようなケースでは、根管治療が適用されます。

なお、根管治療では取り残しや不十分な清掃が再発の要因となり得るため、慎重かつ精密な治療が求められます。むし歯が進行し、抜歯を検討される場合でも、根管治療により歯を維持できる可能性があります。症状や治療の適否は個々のケースにより異なるため、歯科医との相談が重要です。

歯の神経の役割

歯の神経の役割

歯の神経は、歯の健康と長寿にも大きな影響を与えます。
以下で、具体的に歯の神経がどのような役割を果たしているのかを見ていきましょう。

歯に栄養を届けるため

歯の神経は、身体からの栄養を歯に運ぶ重要な役割を果たしています。血管を通じて、カルシウムやミネラルなどの栄養素が象牙質に供給され、歯は強靭さを維持し、しっかりと噛むめるようになります。
神経は、歯の丈夫さと機能性に直結しており、神経のない歯は折れやすいとされています。歯の神経を抜かない治療が推奨されますが、強い痛みが伴う場合などには避けられない場合もあります。歯科治療では、栄養を取り込みながらも、患者さんの状態に応じた適切な治療が求められます。

歯のトラブルを知らせる

歯の神経は、歯のトラブルが発生した際に異常を知らせる役割も果たしています。
主なトラブルとして挙げられるのはむし歯であり、むし歯が進行すると痛みやしみる症状が現れます。痛みに関しては、むし歯の進行度によって異なる症状が現れ、噛むと痛む、何もしなくても痛む、ジンジン・ズキズキとした痛みなどが挙げられます。
また、しみる症状も歯のトラブルを知る重要な要素です。むし歯の進行や歯の欠けにより、象牙質が露出すると冷たいもの・温かいもの・甘いものがしみることがあります。同様に、知覚過敏や歯周病により歯頚部が露出する場合も、歯磨き時や歯磨き後にしみることがあります。しみる症状は歯の健康に関する警告信号となり、早期のケアや歯科診療が必要です。

歯の色を維持する

歯の神経は、歯の色の維持にも関与しています。エナメル質は半透明であり、その透明性によって健康な象牙質の色が透け、歯が自然な白さを保っています。この透明なエナメル質が象牙質の色を引き立て、歯全体の外観に影響を与えています。

さらに、象牙質の健康状態は歯の神経の働きによって支えられています。神経は栄養を歯に運び、同時に不要な物質を取り除く役割を果たしています。これによって、歯の内部のバランスが保たれ、健康な象牙質が維持されるのです。

歯の神経は、色を含む歯の美しさと健康を守るために欠かせない要素であり、適切な栄養供給と浄化機能によって歯の色調を維持しています。

歯の神経を抜くと歯の寿命が短くなる理由

歯の神経を抜くと歯の寿命が短くなる理由

歯の神経を抜くと、本当に歯の寿命が短くなるのでしょうか?
神経を抜くと、歯はその生命線を失い、結果的に寿命が短くなる可能性があります。
以下では、なぜ歯の神経を抜くと歯の寿命が短くなるのか、その理由を詳しく解説します。

歯根破折

歯の神経を抜くと歯の寿命が短くなる理由の一つに、歯根破折が挙げられます。歯根破折は歯の根の部分が縦に割れる現象であり、神経摘出後に発生しやすいとされています。神経を抜くと歯に栄養を届ける血管が失われ、歯は乾燥して硬くなり、弾力性が低下します。硬さにより、歯は噛む力に耐えられず、割れやすくなる傾向があります。

神経摘出により歯の感覚が失われるため、歯に異常があっても気づきにくくなります。歯根破折は初期段階では痛みや違和感がないことが多く、放置すると感染症を引き起こす可能性が高まります。また、神経を抜くことで歯の色が変わりやすくなり、変色が見過ごされることで歯の内部にヒビが入る可能性が高まり、これが歯根破折のリスクを増大させます。

根尖性歯周炎

歯の神経を抜くと、根尖性歯周炎という病気が発生する可能性があります。根尖性歯周炎は、歯の根の先端部分に生じる炎症で、歯の寿命を短くする一因となります。

歯の神経を抜くと、歯の内部に存在する細菌が歯根の尖端にある血管などが入ってくる孔から、歯根の周囲の組織に感染が広がり、病巣が拡大していきます。結果、歯根の尖端に炎症が起きて膿がたまった状態「根尖性歯周炎」が起きます。根尖性歯周炎は、歯を支える顎の骨が溶けて破壊されるため、激しい痛みが生じ、歯肉や顎が腫れることもあります。

根尖性歯周炎は自然治癒しないので、根の治療(感染根管治療)が必要になります。しかし、治療は難しく、成功率は60〜80%程度といわれています。治療が成功しない場合、抜歯が必要になることもあります。

痛みを感じなくなる

歯の神経を抜くと、歯の感覚が失われ、痛みを感じなくなることがあります。
歯の神経は、歯の健康状態を知らせるための重要な役割を果たしています。歯の神経が感じる痛みは、むし歯や歯周病などの歯の問題を早期に察知する手がかりとなります。しかし、歯の神経を抜くと、痛みの感覚が失われ、歯の問題に気づきにくくなります。

例えば、むし歯が進行しても痛みを感じないため、治療が遅れることがあります。問題が放置されると、歯の健康を損ない、最終的には歯を失う原因となるので、注意が必要です。

根管治療後の歯の寿命

根管治療後の歯の寿命

根管治療後の歯はもろくなり、抜歯せざるを得なくなるといわれています。新しい研究によると、根管治療後の歯の寿命の中央値は11年であることが分かりました。また、根管治療後に詰め物や被せ物をすると、歯の寿命はさらに延びることが示されています。

根管治療後の歯は神経を取ることで栄養供給がなくなり、再発や歯周病のリスクが高まるため、日々のアフターケアが重要です。定期的な検診や歯磨き、フロスなどで歯の健康を保ちましょう。また、硬いものを噛んだり歯ぎしりすると、歯が割れやすくなるので注意が必要です。

根管治療後の寿命は個人差や治療の質によっても変わるため、根管治療を受けた場合は歯科医と相談しながら治療法や予防法を選びましょう。

歯の神経を抜くケース

歯の神経を抜くケース

どんな場合に歯の神経を抜く必要があるのでしょうか? 以下では、歯の神経を抜くケースについて、3つのポイントをご紹介します。

むし歯の重症化

むし歯が進行すると、歯の神経に達し、痛みや感染を引き起こす可能性があります。このような場合、歯の神経を抜く根管治療が必要になることがあります。

むし歯が進行し、歯の神経が感染すると、激しい痛みや腫れ、発熱などの症状が現れます。また、感染が広がると、歯周病や歯根尖周囲炎などの重篤な病気を引き起こす可能性があり、歯を失う原因となります。

歯の神経を抜くと、痛みはなくなりますが、歯の寿命が短くなることもあります。そのため、むし歯の初期段階での治療が重要です。定期的な歯科検診でむし歯を早期に発見し、適切な治療を受け、歯の神経を抜く必要を避けるよう努めましょう。

歯の根から膿が出ている

歯の根の先端部分に膿がたまると、痛みや腫れなどの症状が現れ、放置すると感染が広がり、重篤な病気を引き起こす可能性があります。

歯の根から膿が出ている場合、歯の神経を抜いて根管治療することで、膿を取り除き、感染を防げます。根管治療では、歯の神経を取り除き、歯の内部を清掃し、細菌の侵入を防ぐために詰め物で封じます。

重度の知覚過敏

重度の知覚過敏は、歯の神経を抜く必要がある症状の一つです。重度の知覚過敏は、歯ぎしりや強すぎる歯磨きなどにより、歯の表面を覆うエナメル質がすり減り、象牙質が露出すると発生します。
象牙質が露出すると、歯の神経に刺激が伝わりやすくなり、冷たい飲食物を口にしたときなどに痛みを感じるようになります。
症状が重度になると、日常生活に支障をきたす可能性があります。薬の服用などで症状を抑える方法もありますが、根本的に原因を取り除くためには、神経の除去も検討しなければいけません。

根管治療の歯を長持ちさせるための工夫

根管治療の歯を長持ちさせるための工夫

根管治療の歯の寿命を伸ばすためには、日常のケアや定期的なメンテナンスが欠かせません。
以下では、根管治療の歯を長持ちさせるための工夫を3つ紹介します。

丁寧な歯磨き

根管治療後の歯を長持ちさせるためには、丁寧な歯磨きが不可欠です。神経がなくなった歯はさまざまなリスクに晒されており、日常のケアが特に重要です。特に、根管治療する前と後の歯磨きが鍵となります。治療前の歯磨きは口腔内を清潔に保ち、治療時の細菌汚染を最小限に抑えます。治療後は、しっかりと歯を磨くことで細菌の繁殖を防ぎ、治療の成功に寄与します。

定期的なメンテナンス

神経を取り除いた歯はメンテナンスが必要です。
定期メンテナンスでは、根管治療した部位だけでなく、口の中全体を丹念に診察します。異変や問題が見つかった場合は、早めに治療を行うことで歯の寿命を延ばすことが期待されます。

また、むし歯の原因となる歯石や汚れのクリーニングも重要な一環です。定期的なクリーニングによって、歯の表面に付着する歯石やプラークを除去し、むし歯の発生リスクを低減します。同時に、歯科医師からの適切な歯磨きや生活習慣に関するアドバイスも受けることで、患者さんは自らの口内環境を向上させ、根管治療後の歯をより長持ちさせることが可能となります。

精密な処置を受けられる歯科医院を選ぶ

根管治療は歯科クリニックで行われる治療でありながら、その難易度は高いものです。根管は小さくかつ複雑な構造を有し、処置が困難な場合も多く、細菌の残留や不充分な封鎖は再感染のリスクを高めます。再感染により根管治療が失敗すると、歯の寿命が急速に縮まる可能性があります。

治療後の歯の寿命を延ばすためには、質の高い根管治療ができる歯科クリニックの選択が不可欠です。治療経験があり、マイクロスコープを使用して根管内を拡大しながら治療できるクリニックや、ラバーダム防湿に対応したクリニックは、成功率が高い傾向にあります。ただし、マイクロスコープを導入している歯科医はさほど多くはありません。また、高度な設備の治療は保険適用外であり、治療費が高額になることがありますが、再発や再治療を防ぐためには、精密な処置を提供できる歯科医院の選択が重要です。

従来の保険適応内で行われる根管治療は、50%前後の確立で再治療を必要とするといわれており、その成功率はあまり高くありません。しかし、マイクロスコープなどを使用して根管治療を行った場合の成功率は、歯の状態にもよりますが、90%を越えているといわれています。

高品質な治療は歯の健康を守り、将来の問題を回避する点で大きなメリットがあります。治療費が高くても、歯の寿命と健康にかける価値は大きいといえるでしょう。

まとめ

まとめ

ここまで根管治療は何年持つのかについてお伝えしてきました。根管治療は何年持続するか、要点をまとめると以下の通りです。

  • 歯の神経の役割は、歯に栄養を届けたり、歯のトラブルを知らせたり、歯の色を維持したりする重要な働きがある
  • 歯の神経を抜くと歯の寿命が短くなる理由は、歯が弱くなったり、感染したり、痛みに気づかなかったりする可能性が高まるためである
  • 歯を長持ちさせるためには、丁寧な歯磨きや定期的なメンテナンスをし、マイクロスコープなどを使用した精密な処置を受けられる歯科医院の選択が必要である

これらの情報が少しでも皆さまのお役に立てば幸いです。
最後までお読みいただき、ありがとうございました。

この記事の監修歯科医師
宮島 悠旗歯科医師(宮島悠旗ブライトオーソドンティクス)

宮島 悠旗歯科医師(宮島悠旗ブライトオーソドンティクス)

愛知学院大学歯学部卒業 / 東京歯科大学千葉病院にて臨床研修医終了 / 東北大学大学院歯学研究科口腔発育学口座顎口腔矯正学分野 助教 / 宮島悠旗ブライトオーソドンティクス起業 / 著書「国際人になりたければ英語力より歯を“磨け”-世界で活躍する人の『デンタルケア』-」(幻冬舎)出版 / 合同会社T&Y Connection設立 / ASIA GOLDEN STARAWARD(企業家賞)受賞 / 著書「歯並び美人で充実人生-幸せを呼ぶゴールデンスマイル-」(合同フォレスト)出版 / 株式会社オーティカインターナショナル認定講師 / 現在は宮島悠旗ブライトオーソドンティクス代表としてフリーランス矯正歯科医を行っている / 専門は矯正歯科(Invisalign®︎、小児矯正、Myobrace®︎、マルチブラケット、アンカースクリュー、PBMオルソ(光加速矯正装置))

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