インプラントは何らかの理由で歯を失った場合に選択する治療法として、現在研究が進んでいる第三の治療法です。
差し歯やブリッジといった従来の治療法と比べると、インプラントには独自のメリットが存在します。
しかしメリットに関する話は取り上げられますが、デメリットの方は具体的にどういった内容なのか知っている人は少ないのが現状です。
そこで今回は、インプラント治療のメリット・デメリットについてご紹介します。
費用面についても併せて紹介しますので、歯に関する悩みや将来的にどういった治療法があるか知りたい人はぜひ参考にしてください。
目次 -INDEX-
インプラントがオススメな方
インプラントは歯を失った際に提案される第三の治療法として、現在注目されている手法です。
差し歯やブリッジといった従来の治療法とは違う利点も多く、これまでの治療法では満足できなかった人がインプラントに変更するケースも珍しくありません。
まずはインプラント治療がどういった需要を満たしている治療法か、きちんと理解しておきましょう。
治療可能な健康状態や施術後の維持の方法といった長期的な運用の差もあるため、導入前にどういった人にオススメかを把握しておくことでミスマッチを避けることにもつながります。
一部の歯が欠損している方
インプラント治療は欠けた歯の代用として顎の骨に人工歯根と呼ばれる物質を埋め込み、その上に人工歯を被せ物として設置する治療法です。
人工歯根を埋め込むという治療法は、これまでの歯の治療法のような周辺の健康な歯に負担を掛けずに済むため、治療箇所が一か所の場合負担が軽減されます。
そのため施術を行う場所によっては入れ歯のようにバネで他の負担を掛けることがなく、ブリッジのように他の歯を削る処置を行う必要がありません。
インプラント施術が可能な条件はいくつかありますが、それを満たしている場合は他の歯に負担を掛けずに治療を行うことができるというメリットは大きいです。
入れ歯のお手入れが面倒な方
歯を失った場合に行われてきた治療としてこれまで一般的だった入れ歯は、付着した細菌を除去しなければ入れ歯自体が痛むというデメリットが存在します。
他の健康的な歯の維持をするために歯を磨く事と並行し、入れ歯単体の手入れを行いながら水の中の手入れや洗浄液につけるといった手間がかかる点も大きなデメリットです。
インプラントの場合も手入れは重要で、一般的な口内ケアの延長戦上で行える他に担当医の定期的なメンテナンスを受ける事が必要となります。
歯科医によるメンテナンスは時間的や料金的なデメリットになりますが、自宅でのセルフメンテナンスは通常の歯と変わらないのが特徴です。
そのため、これまでの歯磨きの延長線上でインプラントを運用できるという点は大きなメリットになります。
入れ歯・ブリッジに違和感がある方
歯が欠けた場合の治療法として入れ歯を選択した場合の失敗例として、味覚に変化を感じこれまで通り食事を楽しめなくなってしまったという事例があげられます。
これは一部の入れ歯は歯肉の上に乗せるという手法がとられているため、これまで歯肉で感じていた温度を始めとする微妙な感覚がなくなってしまうのが原因です。
インプラントの場合顎骨に固定具を埋め込むため歯肉に影響が少なく、これまで通り食事を楽しむことが可能となっています。
ブリッジは歯肉ではなく健康面で問題のない歯を固定器具として利用する治療法のため、健康的な歯を削る必要があるのがデメリットです。
そのため治療箇所以外の歯をそのままにしておきたいケースや、過去に治療で歯を削った際違和感を覚えたことのあるケースはインプラントを選択するとよいでしょう。
健康な歯を削りたくない方
ブリッジの治療法で取り上げたように、治療方法によっては健康な歯を削って治療を行うケースがあります。
現在健康な歯を削ることに抵抗がある、という場合はインプラントがおすすめです。
インプラント施術では欠損した歯の部分に人工歯根を埋め込む手術を行うため、周りの歯を削らなくても埋め込みが完了するケースも珍しくありません。
インプラントは原則として保険適応外治療となります。
保険が適応されるブリッジは健康な歯を削る必要があり、入れ歯ではバネで固定するために周囲の歯に負担がかかるデメリットが存在します。
健康な歯を削るかどうかという選択は容易に決めることができません。担当医と相談しなるべく歯を削りたくない場合は、インプラント治療を受ける事ができるか一度相談してみましょう。
顎の骨が弱るのを防ぎたい方
欠損した歯の治療方法を決定する際に考えておく点として、顎の骨への悪影響 はあまり語られませんが重要な要素です。
歯周病になった場合や顎に十分な刺激が与えられていない場合、頭蓋骨の上顎(じょうがく)・下顎(かがく)と呼ばれる上あご・下あごに存在する骨が痩せるケースが確認されています。
歯の治療法として入れ歯を選択した場合、嚙み合わせの悪さが原因で顎まで十分な刺激が与えられないために骨が痩せてしまうというデメリットを指摘する担当医は多く存在します。
インプラントの場合、骨まで器具を通し固定する施術の関係上刺激が足りないことで骨が痩せる現象を回避することが可能です。
施術を受ける際は現在自身の顎の状況をレントゲンで確認し、どのような治療法が最適か相談を行いましょう。
インプラントのメリット
これまでインプラントのオススメポイントを紹介してきましたが、ここからはインプラント治療のメリットに焦点を当てて解説していきます。
比較対象となるのは入れ歯・ブリッジといった治療方法になりますが、これらの治療法がインプラントに劣るというわけではありません 。
まずはインプラント治療のメリットを知ることで、他の治療法との比較ができるようになりでしょう。
自分の歯と同じ感覚で使える
入れ歯・ブリッジの治療法は、どちらも健康的な歯を土台にして失った歯の部分を補う必要があります。
そのため従来の歯の感覚と異なる部分も多く、慣れるまでに時間がかかってしまうことや新しく作り直すケースも珍しくありません。
その点インプラントも作り直しを行うリスクはありますが、健康な歯に対しての負担を減らしながら他の歯に影響を与えず利用できるのは大きなメリットです。
また入れ歯は従来の歯磨きや歯間ブラシといった口内ケアだけでは維持が難しく、入れ歯洗浄液に浸す必要があるなど日常生活の中で独自のメンテナンスが求められます。
インプラントは健康な歯と同じように、歯磨きや口内洗浄液でのケアを十分に行えば問題ありません。
主治医の指導を受け適切なケアを行いながら、定期的にメンテナンスを受ければ長期にわたって利用可能です。
見た目が美しい
インプラントを選択する大きなメリットとして、審美性の高さ が挙げられます。
バネで固定する必要がある入れ歯の場合、前歯に近い場合はバネが見えてしまうため口を大きく開けることに抵抗感を覚えるケースが珍しくありません。
ブリッジの場合は保険適応内での治療を選択した場合、ブリッジの素材が一部変色してしまうことから目立ってしまうケースが確認されています。
インプラントは人工歯をかぶせる際に色の指定や現在の口内にあった人工歯を作成できるため、口元から見えやすい位置でも自然な印象を与える事が可能です。
そのため接客業を始めとする他者とのコミュニケーションが多い仕事についている人や、他人の目が気になるといった場合は審美性の高いインプラントのメリットを特に感じることができます。
インプラントのデメリット
これまでインプラントのメリットやオススメのポイントを紹介してきましたが、ここからはデメリットについて解説していきます。
インプラントは自由診療ということで保険が適応されず、一本毎の料金が高くなるのが特徴です。
デメリットをきちんと把握し、インプラント治療について深く知ることは治療のミスマッチを防ぐことに繋がります。
また料金面だけではなく肉体的な負荷や日々のメンテナスも必要となってくるため、生活していくための負担がどの程度かかかるかも予め把握しておきましょう。
手術が必要
インプラント治療を受ける際に避けては通れないのは手術です。1回法と2回法に分かれており、顎の骨の影響や健康面の配慮によってどちらの治療法を選ぶかが分かれます。
1回法は身体負担が低い反面顎の歯や歯肉の状況に応じては選択できないケースがあり、2回法は感染リスクが低い反面治療費や治療期間が嵩むのがデメリットです。
更にインプラント治療は顎骨と呼ばれる歯を支える顎の骨が薄くなっていると、インプラントが使用できないというデメリットがあります。
インプラント治療を受けられないほど顎骨が薄い場合は、まず顎骨の厚みを増すための施術が必要です。
その治療には数か月かかるため、それまでは入れ歯で失った歯を補うといった対処も歯科によっては提示されます。
寿命がある
インプラントはブリッジや入れ歯と比べると利用できる期間が長いのもメリットの一つです。ですが永久的に使えるわけではないので、メンテナンスをきちんと行った場合は10-15年持つといわれています。
インプラントを長く利用するためには歯ぎしりを始めとする歯への悪影響を無くすことや、口内ケアを念入りに行う事が重要です。
定期的に歯科医に診療を受け健診を受ける事や、ブラッシング指導を受け正しい歯磨きの方法を学ぶことがインプラントの利用年数を伸ばすことにつながります。
インプラント治療後は定期検診を受け、スケーリングやインプラントに付着した汚れの除去といった自宅では難しいケアを行ってもらいましょう。
インプラントの費用の目安
インプラント治療にかかる費用は特殊な事情を除き、自由診療扱いとなります。
かかる費用は病院や利用する素材によって異なるため、以下で書かれるインプラント費用はあくまで目安です。
料金だけではなく治療法の提案やインプラント治療の実績といった要素も重要になってくるため、料金面だけに目を向けないのがよいでしょう。
費用にはインプラントの手術代だけではなく、初診費用や人工歯の料金や診察代といった部分も含まれて表記されるケースが多いです。
そのため、書き方としては手術費用・人工歯根及び人工歯・診察費用の分け方で表記を行います。
1本の場合
現在の口内状況や抜けた個所に加え自由診療扱いの治療ということもあり、治療費は利用する歯科医や地域によって大きく変動します。
平均としては一本につき30万-40万円程度かかるのが一般的です。
治療費の内訳としてまず初診を始めとする診察料検査を複数回行うために2-3万円かかります。
そのあと露出する部分に当たる人工歯部分の作製や治療費に5万-15万円、顎骨に埋めるインプラントの手術費用は最低でも15万円以上です。
またインプラント治療を行うための顎の骨が足りない場合や、健康面を考慮して複数回の手術を行う判断がされた場合はさらに費用が発生します。インプラント治療を受ける際は施術を受ける担当医に見積もりを出してもらいましょう。
全部の場合
これまでのインプラントの説明は少ない本数における有効な治療法という側面から紹介してきましたが、総入れ歯と同じように全ての歯をインプラントに変更する治療法も存在します。
全ての歯をインプラントにする手術はオールオン4 と呼ばれて、上顎もしくは下顎に4つのインプラントを固定する治療法です。治療費は上顎・下顎片方の場合200万円前後となっています。
オールオン4のデメリットは、手術を行う顎の歯は全て抜歯しないといけない点です。そのため殆どの歯が抜け落ちてしまった場合や、歯肉の環境が悪化したことで健康な歯が殆どなくなってしまった場合に用いられます。
リスクやデメリットも考慮して治療を受けよう
これまで解説してきたインプラント治療のリスクとデメリットは以下の通りです。
リスク
- 手術を受ける必要があるため肉体的負担は入れ歯・ブリッジと比べて大きい
- 顎の骨が薄い場合は骨に厚みを持たせる追加施術を受ける必要がある
デメリット
- 自由診療のため保険適応ができる医療行為と比べ料金が非常にかかる
- インプラントに起因する炎症が起きる可能性があるため、日々のケアがより重要となる
インプラントには様々なメリットがありますが、万能な治療法ではありません。
近年は入れ歯・ブリッジの治療法も進歩しているため、人によってはインプラントよりも最適な治療法がある場合もあります。
良く耳にするからという理由やイメージで選ばず、主治医と相談して治療を受けるようにしましょう。
まとめ
今回はインプラント治療について解説をしてきました。様々なメリットがある反面、他の治療法と同様に向き・不向きがあります。
また自由診療ということもあり、担当医によって得意な手法が異なる事も珍しくないのが保険診療と異なる点です。
インプラントを受けたいと思った場合は普段の掛かりつけ医だけでなく、住んでいる地域の歯科医院でインプラント治療に自信を持っている人を探すというのも選択肢として入ってきます。
治療を受ける際はこの記事で読んだことを思い返し、主治医との相談に役立だててください。
参考文献