インプラントをお考えの方は、インプラント専門医が行う治療内容に関して気になるでしょう。
インプラント専門医とは、インプラント治療において知識・技術を持ち、専門団体からの認定資格を取得した歯科医師のことです。
この記事では、インプラント専門医が行う治療の内容とはどのようなものなのかを解説します。
また、インプラント治療を成功させるためのポイントに加え、インプラント専門医に相談するメリットも合わせてご紹介しますので参考にしてください。
目次 -INDEX-
インプラント専門医とは
インプラント専門医は、学会やインプラントメーカーによって認定された、インプラントに関する専門の知識をもった歯科医師のことです。
認定基準は各学会やインプラントメーカーによって異なります。例えば、日本口腔インプラント学会が認定するインプラント専門医の資格を得るためには、学会に所属し、特定の試験に合格しなくてはいけません。他にも、研究発表などの条件があります。
インプラント専門医と認定されるための代表的な資格制度
インプラント専門医の資格を認定している代表的な学会を紹介します。
- 日本口腔インプラント学会
- 日本顎顔面インプラント学会
- 国際口腔インプラント学会(ICOI)
これら3つの学会の資格制度について解説します。
日本口腔インプラント学会
日本口腔インプラント学会は、歯科系の学会では最大の会員数を誇る学会です。口腔インプラントに関する知識・専門性の高い技術を持った歯科医師を育成しています。
インプラント専門医の認定をうけるためには、資格認定試験を受ける必要があります。資格認定試験を受けるための条件は、以下の通りです。
- 日本口腔インプラント学会に5年以上在籍
- 日本口腔インプラント学会が認定する研修施設に通算5年以上在籍し、特定の研修点講習を受けている
- 日本歯科医師会の会員である
- 日本口腔インプラント学会が行っている専門医教育講座を3回以上受けている
- 日本口腔インプラント学会が主催する学術大会に8回以上の参加
- 日本口腔インプラント学会が定めた研修の修了
- 口腔インプラント指導医(2名・うち1名は施設長)の推薦を得ている
このほかにも治療実績や、学会発表などの条件があります。これらの条件を満たし、試験に合格すればインプラント専門医の資格を得られます。
有効期限は5年で、更新するためには日本口腔インプラント学会での研究や治療内容の発表などの日本口腔インプラント学会が定めている業績を満たさないといけません。
日本顎顔面インプラント学会
日本顎顔面インプラント学会では、インプラント治療と口腔医療の専門的な知識を持った歯科医師を専門医として認定しています。
専門医の試験を受けるための条件は次の通りです。
- 5年以上継続して日本顎顔面インプラント学会に登録している
- 研修施設・准研修施設で通算5年以上、インプラントに関する診療をしている
- 日本顎顔面インプラント学会の認定指導医もしくは専門医のもとで、合計30症例以上のインプラント手術の経験がある
国際口腔インプラント学会(ICOI)
国際口腔インプラント学会(ICOI)は、アメリカに本部がある国際的な口腔インプラント学会です。国際口腔インプラント学会で専門医として認定してもらうためには、研修・学会への参加やインプラント症例の提出が必要です。
資格を更新するためには5年以内に50ポイントを獲得する必要があり、国際口腔インプラント学会が主催する学会・学術大会への参加や教育講演会への参加でポイントが得られます。
インプラント治療の内容
「インプラント治療はどのようなことをするのだろう?」「カウンセリングの前に、いくつか質問を準備しておくべき?」と不安がある方も多いでしょう。
インプラント治療の流れは、専門医と一般的な歯科医の治療内容に大きな違いはありません。
インプラント専門医が行うインプラント治療の内容は、下記の通りです。
- 検査・カウンセリング
- 治療スケジュールの計画
- 1次手術
- 2次手術
- 人工歯の製作と装着
- メンテナンス
- 定期的な検診
検査やカウンセリングは、問題の部位だけではなく、周囲の歯・口全体・身体の状態・服用している薬などを把握する必要があります。
また、手術の回数や方法に関しては、顎の骨の状態・インプラント治療を行う歯が前歯なのか奥歯なのかによっても変わるのです。
これら治療の流れについてひとつひとつ詳しく解説します。
検査・カウンセリング
インプラント治療で最初に行われるのは、検査・カウンセリングになります。
術前に行う検査はインプラント治療のリスクを回避するために重要です。主に行われるのは血液検査・口腔内検査・レントゲン検査・CT検査となります。
血液検査:全身疾患の状態を確認します。糖尿病・高血圧などの持病がある場合、その状態によっては治療のリスクを高めてしまうのです。
口腔内検査:歯周病やむし歯の有無・歯並び・噛み合わせなどの状態を確認します。
むし歯・歯周病などが見つかれば、細菌感染・インプラントの脱落のリスクを回避するために優先的に治療する場合があります。
レントゲン検査・CT検査ではインプラントを埋め込むのに必要な骨の状態を確認できるため、インプラント治療の制度を高めるために重要です。
カウンセリングではまず、患者さんがインプラント治療に適しているのかを判断するために、既往・持病・服用薬の有無・アレルギーなどを細かく確認します。
そして、インプラント治療が可能となれば、患者さんのインプラントに関する疑問点の解消・治療方法などを説明します。
インプラント治療に対する不安をなるべく軽減し、納得したうえで治療を受けていただくこともカウンセリングの重要な目的です。
治療スケジュールの設定
前述の検査・カウンセリングの次は、治療スケジュールを設定します。
治療スケジュールは、治療過程・治療期間を説明したうえで、患者さんの予定・希望などを考慮しながら設定する必要があります。
そのため長期間の出張・旅行・重要な試験などがある場合は、事前に歯科医師に相談しましょう。
なぜならインプラント治療期間は、長くて半年以上の期間が必要だからです。そしてその間、定期的な受診も必要になります。
また、インプラントの手術を受けた後の数日間は、激しい運動を避け安静にする必要がある場合もあります。
このようにインプラント治療を進めるには、治療過程や患者さんの予定・希望をすり合わせ、事前に治療スケジュールを立てることが重要です。
1次手術
1次手術とはインプラント体という人工歯根を顎の骨に埋め込む手術のことです。
歯肉を切開してインプラント体を埋め込み、カバーで蓋をしたのち、創を縫合します。
そしてインプラント体が骨と結合するのを待ちます。結合までには、上顎で約5ヶ月前後、下顎で約3ヶ月前後かかる場合が多いです。
この1次手術は、基本的に局部麻酔で行われます。しかし緊張感が強い方や高血圧の方は、静脈内鎮静法を用いて眠ったような状態で受けることが可能な場合もあります。
歯科医師とよく相談しておくとよいでしょう。
2次手術
インプラント体と骨が結合したことが確認されたら、2次手術が行われます。
2次手術ではまず、カバーの上の粘膜を少し切開してカバーを除去し、仮のアバットメントを連結させます。
そして、切開した粘膜が治癒するのを数週間待って、本物のアバットメントに交換し連結させるのです。
上部構造の製作および装着
2次手術から数週間経ち、歯茎の粘膜の状態が改善したら上部構造を装着していきます。
上部構造は、まず仮歯を使って見映え・歯磨きのしやすさ・噛み合わせ・話しやすさ・粘膜の変化などを確認し、不具合に合わせてその都度調整します。
そして、仮歯による確認が済んだのち、最終的な形が決められるのです。
このようにして最終的な形が決まったら、再度型取りを行って噛み合わせを確認し、最終的な上部構造を製作します。
ここまでが外科的な治療内容となります。
メンテナンス
装着後、インプラントを長持ちさせるためには、定期的なメンテナンスが必要になります。メンテナンス時にチェックするのは主に下記の5点です。
- 噛み合わせの状態はどうか
- インプラント周囲の組織に問題がないか
- 歯磨きは正しく行えているか
- 顎の骨に問題はないか
- 歯石やプラークの状態はどうか
噛み合わせやインプラント周囲の組織の炎症を放置してしまうと、インプラント自体だけでなく他の歯にも影響を及ぼしてしまいます。
また、インプラントに食べかすが詰まっていたり、適切な歯磨きができていなかったりすると、虫歯や歯周病の原因になってしまうのです。
そのため、インプラントを含めた他の歯の歯磨きも丁寧に行う必要があります。
このように、メンテナンスと定期的なメンテナンスを行ってインプラント治療完了となるのです。
インプラント治療を成功させるためのポイント
インプラント治療を成功させるためには、患者さん自身の努力も必要です。
インプラント治療の失敗事例として、インプラント治療後の合併症だけではなく、インプラント周囲炎が挙げられます。インプラント周囲炎は治療時の衛生環境も原因の1つですが、患者さんのメンテナンス不足が原因で起こることがあります。
インプラント周囲炎は歯周病と似た症状がでる疾患で、インプラントのぐらつきや抜け落ちに繋がります。
インプラント周囲炎を防ぐためには、丁寧な歯磨きが大事です。インプラントと歯茎の境目は汚れが残りやすいため、フロスなどをつかって丁寧にケアしましょう。
インプラント治療を専門とする医師に相談するメリット
インプラント治療を専門の医師に相談するメリットは、知識や症例数が豊富なこと、術後のケアが丁寧なことなどが挙げられます。
この章では、これらのメリットについて関して詳しく説明します。
実績が豊富
インプラント専門医に相談するメリットのひとつに、実績が豊富なことがあります。
インプラント専門医の資格は、日本口腔インプラント学会などの各学会やインプラントメーカーから認定された場合に取得することが可能です。
この資格を取得するためには各々で設けられた審査基準を満たさなければなりません。
試験や多くのインプラントの実績を提出して審査されますので、インプラント専門医の資格を持つ歯科医師であれば、さまざまな相談に応じてくれるでしょう。
インプラント治療をお考えの方は、実績が豊富なインプラント専門医への相談を視野に入れてみてください。
特殊な症例にも対応できる
インプラント専門医は実績が豊富で、常に新しい治療法の勉強をしています。そのため、特殊な症例であっても対応してもらえます。
顎の骨の厚みが足りず骨造成が必要だったりなど、お口の状態は患者さんによって違います。場合によっては、インプラント治療が難しい場合もあるでしょう。
しかし、専門医の資格を持っているインプラント専門医なら、難しい処置であっても対応できる知識・経験を持っている可能性が高いです。
治療設備が整っている
治療設備が整っているのも、インプラント専門医に相談するメリットでしょう。
院内感染の対策がしっかりとされたオペ室や、精密検査に必要な機器などが揃っていることが多いです。そのため、安心・安全な治療を受けられます。
施術後のケアが丁寧
インプラント専門医はインプラント治療に対しての高い技術・知識を持っています。
そのため、施術後のトラブルに関しても対応力があるといえるでしょう。
トラブルの予防・異常の早期発見にも努めるため、施術後のケアも安心して任せることができ、相談もしやすいといえます。
インプラント治療は、手術だけでなく、施術後のメンテナンスも丁寧に行う必要があります。
インプラント専門医は、難しい症例・施術後のケアに関しても信頼のおける技術や知識があるので、患者さんにとって安心感を与える存在となるでしょう。
まとめ
ここまで、インプラント専門医が行う治療の内容・治療を成功させるためのポイント・専門医に相談するメリットを紹介しました。
厳しい審査基準を通って資格を取得したインプラント専門医は、インプラントについての高い技術・経験がありますので、安心して治療を任せることができるでしょう。
インプラントに関して気になることがあればインプラント専門医の在籍する歯科医院に、相談することをおすすめします。
参考文献