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根管治療のガス抜きとは?ガス抜きの必要性と注意点を解説

 公開日:2025/02/26

根管治療は、進行したむし歯で必要となる処置ですが、通常のむし歯治療とは異なる点がたくさんあります。根管治療のガス抜きは、一般的なむし歯治療では行わない処置なので、必要性や具体的な手順はイメージしにくいことかと思います。

この記事では根管治療でガス抜きが必要になるケースや治療の手順、ガス抜きをした後の注意点などを詳しく解説します。根管治療でガス抜きが必要と診断された方や今現在、ガス抜きの治療を受けている方は参考にしてみてください。

根管治療のガス抜きとは

根管治療のガス抜きとは 根管治療におけるガス抜きとは、歯の神経や血管が収まっている根管内、あるいは歯の根の先にたまったガスを抜く処置のことをいいます。

歯は皮膚や粘膜とは異なり、特殊な構造の器官であるため、ある条件のもとでガスが溜まってしまうため、必要に応じて抜く必要性が出てくるのです。

根管治療中にガス抜きが必要な理由

根管治療中にガス抜きが必要となる理由は、大きく2つに分けられます。

  • 根管内にガスが充満しているから
  • 歯の根の先でガスが充満しているから

根管というのはもともと密閉されているため、そこでガスが発生するとガスの逃げ場がありません。逃げ場がなくなり次第に圧力が高まってしまいます。その結果、歯に負担がかかって痛みなどの症状を引き起こすのです。

もう一方でガスが溜まりやすいのは歯の根の先です。歯の根の先にガスが溜まると、歯だけではなく、歯茎や歯槽骨にまで影響がおよぶため、重症度が高くなるといえます。

根管内や根尖部にガスが溜まるのは、細菌の活動によるものとされています。

ガス抜きをする方法

ガス抜きをするためには、根管を開放させなければなりません。

細菌に汚染された歯髄を抜いて、根管口に穴を開けてガスが通る道を作ります。一般的にはこの状態で経過を見て、ガス抜きが完了したら通常の根管治療へともどります。

根尖部にガスが溜まっているケースでは、根管内への処置を進めたうえで根尖部に穴を開けて、ガス抜きをしなければなりません。

根管治療でガス抜きが必要となるケース

根管治療でガス抜きが必要となるケース 次に、根管治療でガス抜きをしなければなれらないケースを解説します。

膿が蓄積して歯茎が腫れている

重症化したむし歯で膿が蓄積して歯茎の腫脹が認められる場合は、歯の根の先に病巣が発生している可能性が高いです。

根尖病巣と呼ばれるもので、細菌が現在進行形で活動していることから、ガスの産生がされています。このままの状態で放置していても、膿の蓄積やガスの産生は抑えられないため、ガス抜きを含む根管治療を早急に行う必要があります。

溜まった膿やガスの圧力で痛みがある

根管内や根尖部に膿やガスが溜まり、痛みを伴っている場合では、ガス抜きが必要となります。ガス抜きによる効果は一時的なため、ガスを発生させている根本的な原因を取り除かなければなりません。根尖部の膿は、根管内の細菌をきれいにすることで徐々に改善していきます。

根管が貯水槽、根尖口が蛇口で根尖部がバケツと考えたらイメージしやすいでしょう。貯水槽を空にすれば、蛇口を捻っても水が流れることはなく、バケツの中もやがて空になります。

歯が浮いたような感覚がある

歯が浮いたような感覚がある場合もガス抜きが必要になることがあります。

これは浮遊感と呼ばれるもので、歯が浮いたような感覚の原因は、歯根膜炎や根尖性歯周炎の可能性が考えられます。歯の外の炎症によって生じているものです。

根尖性歯周炎でも、歯の根の先で強い炎症反応やガスの滞留などが起こることで、歯が浮いたような感覚があります。この症状が強い場合は、ガス抜きが必要になります。

根管治療で膿が再発する理由

根管治療で膿が再発する理由 根管治療ではしばしば膿が再発します。膿が再発することでガスが産生され、再びガス抜きが必要となることも珍しくありません。そんな根管治療における膿の再発は、以下の4つの理由で起こりやすいです。

根管内に細菌が残っている

根管治療で膿が再発する場合は、細菌の取り残しが考えられます。

膿というのは、免疫細胞と細菌が戦うことで生じる液体であり、増え続けているということは、どこかに細菌が残存していることを意味します。

◎細菌が残存するのは根管治療が難しい理由

根管治療は、通常のむし歯治療よりも難易度が高いとされています。

  • 根管は細くて暗く入り組んだ構造をしている
  • 保険診療では使用できる機器や薬剤に限りがある
  • 根管内の清掃は盲目的に行わなければならない

これらの要因が根管治療を難しくさせています。 保険診療では歯科用CTによる精密検査が行えないことから、根管の本数を見誤ることさえあります。未処置の根管が存在していれば、当然ですが細菌が残存し、膿やガスも発生し続けてしまいます。

根管の封鎖が完全ではない

根管の封鎖が不完全だと膿の再発が起こります。ガッタパーチャやシーラという器具を用いて根管充填を適切に行っていても、細菌が入り込むすき間が生じて、膿が再発する場合があります。

保険診療で使用するガッタパーチャポイントは、丸い針のような形をしていて、それを1本1本詰めていくことから、根管内を完全に封鎖することは難しいとされています。

しかも、ガッタパーチャポイントは生体親和性が高いゴムでしかなく、殺菌作用や抗菌作用は期待できません。シーラーの殺菌作用にも限界はあります。

一方で、自費診療の根管治療では、封鎖性が高くて殺菌作用があるMTAセメントなどを使えるため、細菌が再び入りこみにくくできます。米国ではMTAセメントなどを活用した精密根管治療が主流となっているのです。

新しい細菌感染が根管内で発生した

根管治療が適切に行われたとしても、新しい細菌感染が発生した場合は、膿の再発も起こり得ます。新しい細菌感染に対しては、あらためて根管治療を行う必要があります。

根管治療後のメンテナンス不足によるもの

根管治療後のセルフケアやメンテナンスが不十分だと、膿の再発が起こりやすいです。

歯の周りに歯垢や歯石が堆積し、細菌が繁殖すれば、その一部が根管内に侵入しても何ら不思議ではありません。特に根管治療を行った歯は、神経が抜かれており、異常に気付きにくくなっている点に注意しなければなりません。

セルフケアが不十分でメンテナンスの通院を怠っていると、膿が再発するまで異常を自覚できないケースも珍しくないのです。

根管治療で膿が溜まったときの応急処置

根管治療で膿が溜まったときの応急処置 根管治療で膿やガスが溜まったときの応急処置について解説します。以下の4つを試してみましょう。

殺菌効果のあるうがい薬を使用する

根管治療で膿が溜まっている場合は、お口の中が不潔になっていることが少なくありません。殺菌効果のあるうがい薬を使って、口内細菌の数を減らすことから始めましょう。

リステリンやモンダミンといった市販のうがい薬でも問題ありません。殺菌効果が期待できる製品にて用法用量どおり、適切な方法でうがいをしてください。うがい薬に期待できる殺菌効果は高くはありませんが、応急的に実施するのは問題ありません。

ただし、アルコール入りのうがい薬は揮発性が高くて、唾液の作用や分泌量を低下させ、口腔乾燥を引き起こすことがあります。乾燥すると細菌が活性化してしまうため、早めに歯科医院に受診するようにしましょう。

患部を冷やす

根管治療で膿やガスが生じているケースでは、細菌の活動が活発化していることから、患部に炎症反応も起こっています。炎症反応は、歯は歯茎に痛みをもたらす原因にもなるため、冷やすことでその症状を軽減できる場合もあります。

根管治療を行っている歯や周りの歯茎を氷などで冷やすと患部の血流が悪くなり、より深刻な症状を引き起こしかねないので、冷やすときは直接は冷やさないようにしましょう。

具体的には、保冷材や冷たい水で濡らしたタオルを顎にあてて、患部を間接的に冷やします。長時間冷やし続けることはよくないため、1回あたり15分程度にとどめ、冷やしても効果が見られない場合は自己流の冷却は控えて、歯科医院に相談しましょう。

痛み止めを飲む

通常のむし歯よりも強い痛みに悩まされやすいです。そのため、応急的に痛み止めを服用するのも有効な対処法です。風邪や生理のときに服用している痛み止めがあれば、それでも問題はありません。

日常的に服用している痛み止めがない場合は、アセトアミノフェンなどから試してみるとよいでしょう。アセトアミノフェンでも鎮痛できない強い痛みに対しては、ロキソプロフェンナトリウムの方が効果的ですが、その分だけ胃痛や血圧低下、浮腫などの副作用が起こりやすくなる点に注意が必要です。

痛み止めは対症療法なので、薬剤の効果が切れたら再び症状も戻ってくることを忘れてはいけません。痛み止めは、根管内にある問題を解決するためのつなぎでしかないのです。痛み止めで病気をごまかしている間も根管のむし歯は進行しますので、早めに歯科医院に受診をしてください。

症状が続くなら歯科医院を受診する

根管の膿やガスの滞留によって痛みが続くようであれば、応急処置だけに頼らず、できるだけ早く歯科医院を受診するようにしてください。

むし歯は自然になおりません。根管の中や根っこの先に存在している細菌は、自然免疫で排除することができないため、根管治療をやり遂げるしかないのです。根管治療の期間中にこうした痛みが発作的に強まった場合も主治医に相談することで、目下の痛みの原因を適切な方法で緩和してくれます。

根管治療のガス抜き後に気をつけたいこと

根管治療のガス抜き後に気をつけたいこと 根管治療でガス抜きを行った後は、以下の2点に注意しましょう。

食事と生活習慣で気をつけるポイント

根管内や根尖部のガス抜きを行って、痛みや腫れ、歯が浮いた感覚が解消されても、根管治療はまだ終わっていません。根管を封鎖し、土台と詰め物や被せ物を装着するまでは通院するようにしてください。

その間は、以下のポイントに気をつけた食事と生活習慣を心がけましょう。

【ポイント1】硬い食べ物は噛まない
根管治療中の歯は、とても脆くなっています。硬い食べ物を噛むと残った歯質が割れることがあるため、やわらかいものを食べるようにしましょう。

【ポイント2】粘着性の高い食べ物は避ける
根管治療では、毎回の処置が終わるたびに仮蓋を装着します。この仮蓋は容易に剥がれるよう固定されているので、ネバネバとした粘着性の高い食べ物は控えましょう。

【ポイント3】刺激の強い食べ物・飲み物は口にしない
極端に冷たい、熱かったり辛かったりする食品は、患部に不要な刺激を与えるため、根管治療中は控えるようにしてください。

【ポイント4】飲酒や喫煙は控える
飲酒は患部の血流をよくすることで痛みを強めます。 喫煙はその逆で、タバコの煙に含まれるニコチンが患部の血流を悪くすることで傷の治りを遅らせます。こうした理由から、根管治療中や根管治療が終わった直後は、飲酒と喫煙を控えましょう。

【ポイント5】患部を刺激しない
根管治療中の歯を舌や指で触ったり、歯ブラシで強く磨いたりするのは、歯質の破損や患部の汚染につながることから、可能な限り刺激しないよう努めましょう。

定期的にメンテナンスを受ける

根管治療が終わった後も歯科医院での定期的なメンテナンスを受けることで、再感染および膿やガスの再発を防ぎやすくなります。理想は3ヵ月に1回の頻度でメンテナンスを受けることです。仮にむし歯が再発しても、軽症の段階で対処できます。

まとめ

今回は、根管治療のガス抜きの必要性や方法、注意点などについて解説しました。根管内や根尖部に膿が溜まると、ガスが発生して痛みをもたらします。

むし歯のなかでもかなり深刻な状態といえるため、早急にガス抜きおよび根管治療を受けなければなりません。根管への処置や治療後のケアが不十分だと、膿とガスが再発するリスクが高まることから、根管治療は経験豊富な歯科医師に任せるとともに、治療が終わった後の食生活や生活習慣、口腔ケアにも十分配慮することが大切です。

参考文献

この記事の監修歯科医師
大津 雄人歯科医師(医療法人社団GLANZ大津歯科医院 副院長 東京歯科大学インプラント科 臨床講師)

大津 雄人歯科医師(医療法人社団GLANZ大津歯科医院 副院長 東京歯科大学インプラント科 臨床講師)

東京歯科大学歯学部 卒業 / 東京歯科大学大学院歯学研究科(口腔インプラント学) 卒業 / 現在は大津歯科医院勤務 / 東京歯科大学インプラント科臨床講師 / 専門は口腔インプラント

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根管治療のガス抜きとは?ガス抜きの必要性と注意点を解説

 公開日:2025/02/26

根管治療は、進行したむし歯で必要となる処置ですが、通常のむし歯治療とは異なる点がたくさんあります。根管治療のガス抜きは、一般的なむし歯治療では行わない処置なので、必要性や具体的な手順はイメージしにくいことかと思います。

この記事では根管治療でガス抜きが必要になるケースや治療の手順、ガス抜きをした後の注意点などを詳しく解説します。根管治療でガス抜きが必要と診断された方や今現在、ガス抜きの治療を受けている方は参考にしてみてください。

根管治療のガス抜きとは

根管治療のガス抜きとは 根管治療におけるガス抜きとは、歯の神経や血管が収まっている根管内、あるいは歯の根の先にたまったガスを抜く処置のことをいいます。

歯は皮膚や粘膜とは異なり、特殊な構造の器官であるため、ある条件のもとでガスが溜まってしまうため、必要に応じて抜く必要性が出てくるのです。

根管治療中にガス抜きが必要な理由

根管治療中にガス抜きが必要となる理由は、大きく2つに分けられます。

  • 根管内にガスが充満しているから
  • 歯の根の先でガスが充満しているから

根管というのはもともと密閉されているため、そこでガスが発生するとガスの逃げ場がありません。逃げ場がなくなり次第に圧力が高まってしまいます。その結果、歯に負担がかかって痛みなどの症状を引き起こすのです。

もう一方でガスが溜まりやすいのは歯の根の先です。歯の根の先にガスが溜まると、歯だけではなく、歯茎や歯槽骨にまで影響がおよぶため、重症度が高くなるといえます。

根管内や根尖部にガスが溜まるのは、細菌の活動によるものとされています。

ガス抜きをする方法

ガス抜きをするためには、根管を開放させなければなりません。

細菌に汚染された歯髄を抜いて、根管口に穴を開けてガスが通る道を作ります。一般的にはこの状態で経過を見て、ガス抜きが完了したら通常の根管治療へともどります。

根尖部にガスが溜まっているケースでは、根管内への処置を進めたうえで根尖部に穴を開けて、ガス抜きをしなければなりません。

根管治療でガス抜きが必要となるケース

根管治療でガス抜きが必要となるケース 次に、根管治療でガス抜きをしなければなれらないケースを解説します。

膿が蓄積して歯茎が腫れている

重症化したむし歯で膿が蓄積して歯茎の腫脹が認められる場合は、歯の根の先に病巣が発生している可能性が高いです。

根尖病巣と呼ばれるもので、細菌が現在進行形で活動していることから、ガスの産生がされています。このままの状態で放置していても、膿の蓄積やガスの産生は抑えられないため、ガス抜きを含む根管治療を早急に行う必要があります。

溜まった膿やガスの圧力で痛みがある

根管内や根尖部に膿やガスが溜まり、痛みを伴っている場合では、ガス抜きが必要となります。ガス抜きによる効果は一時的なため、ガスを発生させている根本的な原因を取り除かなければなりません。根尖部の膿は、根管内の細菌をきれいにすることで徐々に改善していきます。

根管が貯水槽、根尖口が蛇口で根尖部がバケツと考えたらイメージしやすいでしょう。貯水槽を空にすれば、蛇口を捻っても水が流れることはなく、バケツの中もやがて空になります。

歯が浮いたような感覚がある

歯が浮いたような感覚がある場合もガス抜きが必要になることがあります。

これは浮遊感と呼ばれるもので、歯が浮いたような感覚の原因は、歯根膜炎や根尖性歯周炎の可能性が考えられます。歯の外の炎症によって生じているものです。

根尖性歯周炎でも、歯の根の先で強い炎症反応やガスの滞留などが起こることで、歯が浮いたような感覚があります。この症状が強い場合は、ガス抜きが必要になります。

根管治療で膿が再発する理由

根管治療で膿が再発する理由 根管治療ではしばしば膿が再発します。膿が再発することでガスが産生され、再びガス抜きが必要となることも珍しくありません。そんな根管治療における膿の再発は、以下の4つの理由で起こりやすいです。

根管内に細菌が残っている

根管治療で膿が再発する場合は、細菌の取り残しが考えられます。

膿というのは、免疫細胞と細菌が戦うことで生じる液体であり、増え続けているということは、どこかに細菌が残存していることを意味します。

◎細菌が残存するのは根管治療が難しい理由

根管治療は、通常のむし歯治療よりも難易度が高いとされています。

  • 根管は細くて暗く入り組んだ構造をしている
  • 保険診療では使用できる機器や薬剤に限りがある
  • 根管内の清掃は盲目的に行わなければならない

これらの要因が根管治療を難しくさせています。 保険診療では歯科用CTによる精密検査が行えないことから、根管の本数を見誤ることさえあります。未処置の根管が存在していれば、当然ですが細菌が残存し、膿やガスも発生し続けてしまいます。

根管の封鎖が完全ではない

根管の封鎖が不完全だと膿の再発が起こります。ガッタパーチャやシーラという器具を用いて根管充填を適切に行っていても、細菌が入り込むすき間が生じて、膿が再発する場合があります。

保険診療で使用するガッタパーチャポイントは、丸い針のような形をしていて、それを1本1本詰めていくことから、根管内を完全に封鎖することは難しいとされています。

しかも、ガッタパーチャポイントは生体親和性が高いゴムでしかなく、殺菌作用や抗菌作用は期待できません。シーラーの殺菌作用にも限界はあります。

一方で、自費診療の根管治療では、封鎖性が高くて殺菌作用があるMTAセメントなどを使えるため、細菌が再び入りこみにくくできます。米国ではMTAセメントなどを活用した精密根管治療が主流となっているのです。

新しい細菌感染が根管内で発生した

根管治療が適切に行われたとしても、新しい細菌感染が発生した場合は、膿の再発も起こり得ます。新しい細菌感染に対しては、あらためて根管治療を行う必要があります。

根管治療後のメンテナンス不足によるもの

根管治療後のセルフケアやメンテナンスが不十分だと、膿の再発が起こりやすいです。

歯の周りに歯垢や歯石が堆積し、細菌が繁殖すれば、その一部が根管内に侵入しても何ら不思議ではありません。特に根管治療を行った歯は、神経が抜かれており、異常に気付きにくくなっている点に注意しなければなりません。

セルフケアが不十分でメンテナンスの通院を怠っていると、膿が再発するまで異常を自覚できないケースも珍しくないのです。

根管治療で膿が溜まったときの応急処置

根管治療で膿が溜まったときの応急処置 根管治療で膿やガスが溜まったときの応急処置について解説します。以下の4つを試してみましょう。

殺菌効果のあるうがい薬を使用する

根管治療で膿が溜まっている場合は、お口の中が不潔になっていることが少なくありません。殺菌効果のあるうがい薬を使って、口内細菌の数を減らすことから始めましょう。

リステリンやモンダミンといった市販のうがい薬でも問題ありません。殺菌効果が期待できる製品にて用法用量どおり、適切な方法でうがいをしてください。うがい薬に期待できる殺菌効果は高くはありませんが、応急的に実施するのは問題ありません。

ただし、アルコール入りのうがい薬は揮発性が高くて、唾液の作用や分泌量を低下させ、口腔乾燥を引き起こすことがあります。乾燥すると細菌が活性化してしまうため、早めに歯科医院に受診するようにしましょう。

患部を冷やす

根管治療で膿やガスが生じているケースでは、細菌の活動が活発化していることから、患部に炎症反応も起こっています。炎症反応は、歯は歯茎に痛みをもたらす原因にもなるため、冷やすことでその症状を軽減できる場合もあります。

根管治療を行っている歯や周りの歯茎を氷などで冷やすと患部の血流が悪くなり、より深刻な症状を引き起こしかねないので、冷やすときは直接は冷やさないようにしましょう。

具体的には、保冷材や冷たい水で濡らしたタオルを顎にあてて、患部を間接的に冷やします。長時間冷やし続けることはよくないため、1回あたり15分程度にとどめ、冷やしても効果が見られない場合は自己流の冷却は控えて、歯科医院に相談しましょう。

痛み止めを飲む

通常のむし歯よりも強い痛みに悩まされやすいです。そのため、応急的に痛み止めを服用するのも有効な対処法です。風邪や生理のときに服用している痛み止めがあれば、それでも問題はありません。

日常的に服用している痛み止めがない場合は、アセトアミノフェンなどから試してみるとよいでしょう。アセトアミノフェンでも鎮痛できない強い痛みに対しては、ロキソプロフェンナトリウムの方が効果的ですが、その分だけ胃痛や血圧低下、浮腫などの副作用が起こりやすくなる点に注意が必要です。

痛み止めは対症療法なので、薬剤の効果が切れたら再び症状も戻ってくることを忘れてはいけません。痛み止めは、根管内にある問題を解決するためのつなぎでしかないのです。痛み止めで病気をごまかしている間も根管のむし歯は進行しますので、早めに歯科医院に受診をしてください。

症状が続くなら歯科医院を受診する

根管の膿やガスの滞留によって痛みが続くようであれば、応急処置だけに頼らず、できるだけ早く歯科医院を受診するようにしてください。

むし歯は自然になおりません。根管の中や根っこの先に存在している細菌は、自然免疫で排除することができないため、根管治療をやり遂げるしかないのです。根管治療の期間中にこうした痛みが発作的に強まった場合も主治医に相談することで、目下の痛みの原因を適切な方法で緩和してくれます。

根管治療のガス抜き後に気をつけたいこと

根管治療のガス抜き後に気をつけたいこと 根管治療でガス抜きを行った後は、以下の2点に注意しましょう。

食事と生活習慣で気をつけるポイント

根管内や根尖部のガス抜きを行って、痛みや腫れ、歯が浮いた感覚が解消されても、根管治療はまだ終わっていません。根管を封鎖し、土台と詰め物や被せ物を装着するまでは通院するようにしてください。

その間は、以下のポイントに気をつけた食事と生活習慣を心がけましょう。

【ポイント1】硬い食べ物は噛まない
根管治療中の歯は、とても脆くなっています。硬い食べ物を噛むと残った歯質が割れることがあるため、やわらかいものを食べるようにしましょう。

【ポイント2】粘着性の高い食べ物は避ける
根管治療では、毎回の処置が終わるたびに仮蓋を装着します。この仮蓋は容易に剥がれるよう固定されているので、ネバネバとした粘着性の高い食べ物は控えましょう。

【ポイント3】刺激の強い食べ物・飲み物は口にしない
極端に冷たい、熱かったり辛かったりする食品は、患部に不要な刺激を与えるため、根管治療中は控えるようにしてください。

【ポイント4】飲酒や喫煙は控える
飲酒は患部の血流をよくすることで痛みを強めます。 喫煙はその逆で、タバコの煙に含まれるニコチンが患部の血流を悪くすることで傷の治りを遅らせます。こうした理由から、根管治療中や根管治療が終わった直後は、飲酒と喫煙を控えましょう。

【ポイント5】患部を刺激しない
根管治療中の歯を舌や指で触ったり、歯ブラシで強く磨いたりするのは、歯質の破損や患部の汚染につながることから、可能な限り刺激しないよう努めましょう。

定期的にメンテナンスを受ける

根管治療が終わった後も歯科医院での定期的なメンテナンスを受けることで、再感染および膿やガスの再発を防ぎやすくなります。理想は3ヵ月に1回の頻度でメンテナンスを受けることです。仮にむし歯が再発しても、軽症の段階で対処できます。

まとめ

今回は、根管治療のガス抜きの必要性や方法、注意点などについて解説しました。根管内や根尖部に膿が溜まると、ガスが発生して痛みをもたらします。

むし歯のなかでもかなり深刻な状態といえるため、早急にガス抜きおよび根管治療を受けなければなりません。根管への処置や治療後のケアが不十分だと、膿とガスが再発するリスクが高まることから、根管治療は経験豊富な歯科医師に任せるとともに、治療が終わった後の食生活や生活習慣、口腔ケアにも十分配慮することが大切です。

参考文献

この記事の監修歯科医師
大津 雄人歯科医師(医療法人社団GLANZ大津歯科医院 副院長 東京歯科大学インプラント科 臨床講師)

大津 雄人歯科医師(医療法人社団GLANZ大津歯科医院 副院長 東京歯科大学インプラント科 臨床講師)

東京歯科大学歯学部 卒業 / 東京歯科大学大学院歯学研究科(口腔インプラント学) 卒業 / 現在は大津歯科医院勤務 / 東京歯科大学インプラント科臨床講師 / 専門は口腔インプラント

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