ワイヤー矯正中にブラケットが外れたら？原因から応急処置、予防策まで解説
ワイヤー矯正では、歯の表面にブラケットという器具を接着します。ブラケットは矯正用ワイヤーを固定するための器具で、患者さん自身が自由に取り外すことはできませんが、何かの拍子に外れることがあります。歯面にしっかりと接着されているブラケットが外れると、皆さん焦るかと思いますが、そこは落ち着いて対処する必要があります。ここではそんなワイヤー矯正中にブラケットが外れる原因や応急処置の方法、予防策について詳しく解説をします。
ブラケットが外れる原因
はじめに、歯列矯正のブラケットが外れる原因について解説します。
- ブラケットが外れる主な原因を教えてください
- ブラケットが外れる主な原因は、以下のとおりです。【原因1】噛み合わせが深い
噛み合わせが深い過蓋咬合（かがいこうごう）では、噛んだときに上下の歯列が深く接触するため、ブラケットに不要な力が加わることがあります。もちろん、過蓋咬合のケースでは、患者さんの歯並び・噛み合わせの状態に合わせてブラケットも接着するので、基本的に過剰な圧力がかかることはないのですが、歯列矯正で歯が移動することで口腔内の環境が一時的に大きく変わることもあります。
【原因2】接着しにくい被せ物を装着している
天然歯やレジン歯は、ブラケットを接着しやすいのですが、金属やセラミックをかぶせた銀歯やセラミック歯は少し話が変わります。どちらも事前に特別な処置を施す必要があり、とくに後者はブラケットの接着力が弱くなる傾向にある点に注意しなければなりません。被せ物に接着したブラケットが繰り返し外れる、あるいは接着することが難しい場合は、プラスチック製の仮歯に交換した状態で治療期間を過ごさなければならないこともあります。
【原因3】歯ぎしり・食いしばりの習慣がある
歯ぎしり・食いしばりといったブラキシズムは、歯や歯周組織、場合によっては矯正装置にまで過剰な負担をかけるため、ブラケットが外れる原因にもなりえます。
【原因4】ブラケットの部分がむし歯になった
ブラケットの周りは汚れがたまりやすく、むし歯リスクが高くなっている点に注意しましょう。ブラケットの部分がむし歯になると、接着力が弱まって外れることがあります。
【原因5】口腔周囲に外傷を負った
スポーツや交通事故で口腔周囲に強い圧力を受けると、ブラケットが外れることがあります。
- 矯正治療中の食事で気をつけることはありますか？
- 食事のときに硬い食べ物を噛むのもブラケットが外れる主な原因のひとつとして挙げられます。例えば、ナッツ類やおせんべい、フランスパンなどを無理に咀嚼しようとすると、ブラケットやワイヤーに大きな力がかかって外れてしまいます。そのため矯正治療中の食事では極端に硬い食べ物はできるだけ避けるようにしましょう。キャラメルのような粘着性の高い食べ物もワイヤーやブラケットが外れる原因になりかねないため、矯正治療中は控えるようにしてください。
ブラケットが外れた際の対処法
続いては、何らかの原因でブラケットが外れた場合の対処法を解説します。
- ブラケットが外れたらどうすればよいですか？
- ブラケットが外れたら、まずは通院している歯科医院に連絡してください。ブラケットが外れた部位やワイヤーの状態などを報告したうえで、受診の必要性があるのかどうかを確認しましょう。次の診療日まで4〜5日程度しかない場合は、そのままの状態で経過を見ることがあります。
- 歯科医院に行くまでにできる応急処置はありますか？
- まず、外れたブラケットを飲み込まないように注意します。お口の中から取り出して、きれいに洗った状態でプラスチックケースなどに保管しておきましょう。次に、ブラケットが外れた部分のワイヤーが口腔粘膜を刺激していないか確認してください。ブラケットが外れたことでワイヤーが外側に飛び出している場合は、歯列矯正用ワックスで保護するなどして対処しましょう。歯列矯正用ワックスで保護できないような状態の場合は、お口を動かさないように配慮しながら、できるだけ早く歯科医院を受診してください。
- ブラケットが外れたら、治療計画への影響はありますか？
- ブラケットが外れても、速やかに付け直すことができれば、治療計画に影響はほとんどありません。外れたブラケットの数が多かったり、放置している期間が長かったりすると、後戻りが生じるなどして治療計画に悪影響をもたらします。また、金属やセラミックをかぶせた銀歯やセラミック歯などが多く、ブラケットが何度も外れるような場合は、治療計画を立て直さなければならないこともあります。
ブラケットが外れたまま放置するリスク
次に、外れたブラケットを何もせずに放置した場合のリスクについて解説します。
- ブラケットが外れた状態で放置しても大丈夫ですか？
- 外れたブラケットを放置するのはよくありません。ブラケットが外れた状態によっては、ワイヤーが舌や頬粘膜、歯ぐき茎を刺激するかもしれませんし、適切な効果も得られなくなるからです。また、外れたブラケットを放置している期間が長くなる程、後戻りのリスクも高まります。
- 外れたブラケットがほかの歯に影響を与えることはありますか？
- あります。ワイヤー矯正は、すべてのブラケットが正しい位置に固定されていることで、適切な矯正力を発揮する治療法です。そのうちのひとつでも外れていると、その他の歯に不必要な力が加わったり、特定の歯だけ動かなくなったりするなど、さまざまな悪影響が予想されるため、ブラケットが外れた状態を放置するのはNGです。
定期メンテナンスの重要性
ここでは、ワイヤー矯正における定期メンテナンスの重要性について解説します。
- 定期的に歯科医院でメンテナンスを受けるべきですか？
- 歯列矯正中は、歯科医院での定期的なメンテナンスを受けた方がよいです。まず矯正歯科での定期的なメンテナンスは、すべてのケースで必須となります。ワイヤー矯正であれば、1ヵ月に1回の頻度で通院して、経過を見たり、ワイヤー矯正を調整したりします。通院の頻度が低くなったり、通うのを怠ったりすると、ブラケットが外れるなどのトラブルも起こりやすくなります。それに加えて3ヵ月に1回くらいの頻度で、通常のメンテナンスを受けることで、歯列矯正中のむし歯や歯周病を予防しやすくなることでしょう。
- 歯科医院での調整が遅れるとどうなりますか？
- 歯科医院での調整が遅れると、歯の動きも遅くなって治療期間が長引きます。例えば、歯を動かす動的治療が1年で終わるはずだったのに、調整が遅れることで矯正期間が1年半、2年と長くなるケースは珍しくありません。また、調整が遅れることで矯正装置や歯の異常の発見も遅くなるため、ブラケットが外れる、歯が予定外の方向に移動するなどのリスクも高まります。
- 調整時に相談すべきことは何ですか？
- 調整のために通院した際には、普段から不安や疑問に感じていることを主治医に相談しましょう。例えば、ワイヤーとブラケットを結ぶ結紮線（けっさつせん）が緩んで口腔粘膜を刺激し、口内炎に悩まされることがある場合は、そうならないよう調整を加えてもらうことが大切です。ブラケットが外れやすかったり、歯列矯正による痛みが極端に強かったりする場合も主治医に相談して、日常生活を快適に過ごせるよう配慮してもらうことが大切です。歯列矯正は数年に及ぶ治療となるため、痛みや不安は我慢せずにその都度しっかり相談して解決していくことが大切です。
編集部まとめ
今回は、ワイヤー矯正中にブラケットが外れる原因や応急処置、予防策について解説しました。ワイヤー矯正中にブラケットが外れる主な原因としては、噛み合わせが深い、セラミック歯や銀歯などが入っている、歯ぎしり・食いしばりの習慣がある、むし歯になっている、外傷を負ったなどが挙げられます。いずれにしてもブラケットが外れた状態を放置するのはよくありませんので、まずは速やかに歯科医院へ連絡してください。必要であれば早期に受診して、外れたブラケットを付け直してもらいましょう。外れたブラケットを放置していると、口腔粘膜が傷ついたり、歯の後戻りが起こったりするなどのリスクが生じるため、適切に対処するようにしてください。
参考文献
