歯肉炎の治療方法|原因・歯周病との違い・予防法を解説
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歯肉炎とは歯茎が腫れ、噛んだときや歯磨き時に痛みを伴う病気です。歯肉炎になっている方のなかには、歯医者に行くかどうか迷っている方もいるでしょう。
本記事では歯肉炎の治療方法や歯医者に行く判断基準について解説します。歯周病との違いや、歯肉炎の予防法も紹介するため、最後までお読みいただければ歯肉炎のお悩みの解決策が見つかるでしょう。
歯肉炎の原因や歯周病との違い
- 歯肉炎の原因を教えてください。
- 歯肉炎の主な原因は、歯の汚れが落とし切れていないことです。
歯の表面や歯と歯の間に食べ物のカスが付着していると、そのカスに細菌が集まり、プラークと呼ばれる歯垢になります。わずか1gのプラークに約1,000,000,000,000個もの細菌が生息しており、その細菌の一部が歯肉炎の原因となる菌です。
これらの細菌は毒素を排出し、歯茎を攻撃するため、歯茎が炎症を起こします。
- 歯肉炎の症状について教えてください。
- 歯肉炎の主な症状は、歯茎の赤みや腫れです。
細菌によって歯茎が炎症を起こすことで、腫れや赤みが生じます。初期段階は歯茎の赤みだけなので、痛みを感じず、気が付かないことも少なくありません。人によっては歯茎がむず痒く感じることもあるようです。
また、プラークによって発生する揮発性硫黄化合物と呼ばれるガスで、口臭が強くなるケースもあります。歯磨きをしたときに出血が生じたり、冷たいものがしみたりする方もいるでしょう。
初期段階ではそれほど症状が強くない歯肉炎ですが、そのままにしておくと、次第に悪化して腫れや痛みが出てくるので注意が必要です。
さらに放置すると、知覚過敏や歯茎が下がるなど、より深刻な症状が現れるケースもあります。
- 歯肉炎と歯周病の違いを教えてください。
- 歯肉炎と似た言葉に歯周病がありますが、歯周病は歯肉炎と歯周炎を総称した呼び方です。
歯肉炎は歯周病の初期段階で、徐々に進行すると重度の歯周炎になります。歯肉炎が進行すると歯茎の炎症が悪化し、細菌が歯周組織に侵入します。
そして、炎症が歯槽骨や歯根膜にまで達した状態が歯周炎です。
健康な歯の状態は歯と歯茎の隙間が1~2mm程度ですが、歯肉炎になると2~3mmの隙間ができます。3mm以上になると、歯肉炎から歯周炎に進行し、痛みや炎症がひどくなるケースがほとんどです。
- 歯肉炎を放置するリスクを教えてください。
- 歯肉炎は痛みを伴わないことが多く、自覚症状がないまま進行する場合があります。そのため、知らず知らずのうちに進行し、いつの間にか歯周炎になっていることもあるので注意が必要です。
歯肉炎が悪化すると重度の歯周炎になり、歯を支えている歯茎だけでなく、歯槽骨や歯根膜などの歯周組織にまで炎症を起こします。
そして、歯周炎が悪化すると歯槽骨が溶けて、最悪の場合は歯が抜け落ちることもある恐ろしい病気です。
歯肉炎の治療方法
- 歯肉炎は自分で治せますか?
- 歯肉炎は歯周病の初期段階で、症状も軽度なケースが多いので自分で治すこともできます。歯肉炎の原因であるプラークを取り除き、お口の中を清潔に保ちましょう。
歯と歯の間の汚れはなかなか落ちないので、歯間ブラシやフロス・マウスウォッシュを使用します。
歯磨きをすると歯茎が痛い場合は、毛先がやわらかい歯ブラシを使用しましょう。歯茎に歯ブラシの毛先が当たらないよう、丁寧に歯磨きするのがポイントです。
しっかりプラークを取り除き、口腔内を清潔に保てば、10日~2週間程度で回復します。
ただし、歯肉炎が進行し、歯周炎になっていると自力で治すのは困難です。不安な方は歯科医院を受診して調べてもらいましょう。
- 歯肉炎の治療で薬を使用する際の注意点を教えてください。
- 歯肉炎の治療では、飲み薬が処方されるケースもあります。処方されるのは、抗生物質や抗真菌剤など、口腔内の細菌を減らすための薬です。
歯肉炎の治療で薬を使用する際には、下記に注意しましょう。- 保険適用外になる可能性がある
- 副作用のリスクがある
歯周内科は基本的に保険適用外なので、抗生物質の処方は自費になります。また、ほかの薬との飲み合わせで副作用が起こるケースもあるので、現在服用中の薬がある場合は歯科医師に伝えておきましょう。
なお、ドラッグストアで販売されている市販薬では根本的な歯肉炎治療はできません。
歯肉炎で痛みが強い場合には、市販の痛み止めで症状を和らげることも可能ですが、市販の痛み止めは一時的に痛みを和らげるだけです。歯肉炎を完治させることはできませんので、できるだけ早く歯科医院を受診するようにしましょう。
- 歯科医院で治療を受けるべき目安を教えてください。
- 軽い症状の歯肉炎であれば、丁寧なセルフケアで治すことも可能です。
しかし、下記の症状が出た場合は早めに歯科医院を受診しましょう。- 歯や歯茎の継続的な痛み
- 歯のぐらつき
- 口臭や不快感
歯そのものが痛む場合は、むし歯や歯の神経が炎症を起こしているなど、歯肉炎以外の病気が隠れている可能性があります。
また、歯茎が継続的に痛む場合や歯のぐらつきが気になる・口臭や不快感がある場合などは、すでに歯肉炎が進行している可能性があるので早めに歯科医院を受診しましょう。
軽い歯肉炎の症状で「そのうち治るだろう」と安易に考えていると、気付かないうちに進行しているケースも少なくありません。不安がある場合は念のため、速やかに歯科医師に相談するようにしましょう。
- 歯科医院ではどのような治療を行いますか?
- 歯肉炎の基本治療は、原因となるプラークの除去です。歯の表面や歯の付け根部分に溜まった歯垢や歯石をブラシや専用の器械で取り除きます。
もし歯肉炎が進行しており、歯のぐらつきが生じている場合は、噛み合わせの調整も必要です。歯を削ったり、歯科用の接着剤で接着したりしながら、ぐらぐら動く歯を固定します。
これらの基本治療を行っても歯肉炎の症状が改善しない場合には、外科治療が行われることもありますが、歯肉炎の段階であれば基本治療で改善されるケースがほとんどです。
歯科医院の治療だけでなく、自宅でのセルフケアも重要になるので、正しい歯磨きの仕方も教えてもらいましょう。
歯肉炎の予防方法
- 歯肉炎を予防する方法を教えてください。
- 毎日の丁寧な歯磨きによるプラーク除去が、歯肉炎の予防につながります。
一度ついてしまった歯垢は水に溶けにくいので、うがいだけではなかなか落とせません。定期的に歯科医院で歯垢除去をしてもらうことも、歯肉炎の予防方法のひとつです。
また、身体の免疫力が下がった状態だと、細菌に感染しやすくなります。生活習慣を見直すことで、歯肉炎の予防になるでしょう。
例えば、喫煙をやめたりストレスを減らしたりすると、身体の免疫力が高まります。十分な睡眠やバランスの取れた食事、適度な運動も免疫力を向上させるポイントです。
- 歯垢を取り除く正しい歯磨きの方法を教えてください。
- 歯ブラシで一か所あたり20~30程度を目安に、一本一本丁寧に磨いていきます。歯ブラシはヘッドが小さいものを選ぶと、小回りが利くので磨きやすいでしょう。
強い力で擦るのではなく、傷つけないようゆっくり小刻みに磨くことが重要です。特に歯と歯茎の境目は磨き残しが多い箇所です。歯ブラシの毛先が入るよう、歯茎に対して45度の角度で磨きます。
歯と歯の間もしっかり磨くことが大切です。デンタルフロスや歯間ブラシを使い、歯と歯の間の汚れを取り除きましょう。歯茎を傷つけてしまうと炎症の原因になるため、ゆっくりと動かすのがポイントです。
編集部まとめ
歯肉炎の原因と治療方法、また予防の仕方や自分で治せるのかを解説しました。歯肉炎になると歯茎が炎症を起こし、腫れや赤みを生じます。歯の磨き残しによる、プラークが歯肉炎の原因です。
毎日の丁寧な歯磨きや規則正しい生活習慣で、歯肉炎を予防できるでしょう。万が一歯肉炎になってしまっても、軽度であれば自分で歯垢を取り除くことで症状は改善します。
ただし、継続的な痛みや出血がある場合や、歯のぐらつきが気になる場合はすぐに歯科医院を受診しましょう。歯科医院でしっかりと歯垢を除去してもらうことで、歯肉炎を早く治すことができます。
気付かないうちに進行していることもある怖い病気なので、気になる方は歯科医師に相談するのがおすすめです。
参考文献