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舌癌の初期症状とは?痛みなどの症状や原因、治療の流れを解説

 更新日:2025/08/22
舌癌の初期症状とは?痛みなどの症状や原因、治療の流れを解説

舌癌は早期発見が重要で、進行してから気付く患者さんも少なくありません。舌に治りにくい傷やしこり、違和感を覚えたときに早期に受診できるかが、治療の結果を大きく左右します。ここでは、舌癌の初期症状や原因、診断から治療の流れ、治療後に気をつけたいことまでをわかりやすく解説します。少しでも不安を感じた方が、正しい知識をもとに早めの行動をとれるように参考にしてください。

松浦 京之介

監修歯科医師
松浦 京之介(歯科医師)

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歯科医師。2019年福岡歯科大学卒業。2020年広島大学病院研修修了。その後、静岡県や神奈川県、佐賀県の歯科医院で勤務。2023年医療法人高輪会にて勤務。2024年合同会社House Call Agencyを起業。日本歯科保存学会、日本口腔外科学会、日本口腔インプラント学会の各会員。

舌癌の初期症状

舌癌の初期症状 はじめに、舌癌の初期に見られる症状について解説をします。

舌癌の初期症状を教えてください

舌癌の初期症状として多くみられるのは、舌の表面にできるしこりや潰瘍です。例えば、舌の側面や裏側に治りにくい口内炎のような傷が数週間以上続く場合は注意が必要です。また、しこりや潰瘍が硬く触れることもあります。患者さん自身が「なんとなく治りが悪い」と感じることが多いので、違和感を覚えたら早めに歯科や口腔外科で相談することが大切です。お口の中は鏡で見えにくい部分も多いため、定期的な検診も有効です。

初期の舌癌でも痛みが出ることはありますか?

舌癌の初期段階では痛みを感じにくいことも多いですが、炎症が周囲の神経に広がると痛みを自覚する場合があります。例えば、しこりの部分に触れるとチクッとした痛みを感じたり、舌の動きで擦れてしみたりするように痛むことがあります。痛みが出ると「むし歯が原因かな」と勘違いされる方もいますが、治療しても改善しない口内炎のような状態が続く場合は注意が必要です。特に食事や会話の際に痛みを感じるときは、早期受診をおすすめします。舌は噛み合わせや歯茎とも接触しやすいため、慢性的な刺激が痛みを引き起こすこともあります。

痛み以外に舌や口腔内に現れるサインがあれば教えてください

舌癌の初期は、痛み以外にも舌の色や形の変化として現れることがあります。例えば、舌の一部が白くなったり、赤くただれたように見えたりすることがあります。また、触ると硬いしこりを感じる、舌の一部が動かしにくいといった症状も注意が必要です。口臭が強くなったり、食べ物の味がわかりにくくなったと感じる方もいます。お口のなかは粘膜や歯茎とつながっているため、噛み合わせの不調や入れ歯、マウスピース型矯正の装置が慢性的にあたっている場合も異変の原因になります。違和感を覚えたら放置せず、専門医の診察を受けましょう。

舌癌の原因

次に、舌癌の原因について解説をします。

舌癌の主な原因は何ですか?

舌癌の発症メカニズムはまだ解明されていませんが、主な原因として考えられているのは喫煙と飲酒です。それに加えて、長期間にわたる物理的刺激が原因となることも多々あります。例えば、欠けた歯や合わない入れ歯、噛み合わせのズレなどが舌に繰り返し当たると、粘膜が傷ついて炎症を起こし、発がんリスクが高まることがあります。また、口腔内の衛生状態が悪いと慢性的な炎症が起こりやすくなり、舌癌の発症に関わることが知られています。

喫煙や飲酒は舌癌のリスクを高めますか?

喫煙や過度の飲酒は、舌癌を含む口腔がん全体の大きなリスク因子とされています。タバコの煙に含まれる有害物質は、舌の粘膜に直接作用して細胞の遺伝子にダメージを与えることがあります。また、アルコールは口腔内の粘膜に炎症をもたらしたり、アセトアルデヒド自体が発がん性物質として作用したりすることが舌癌のリスクを高めるものと考えられます。喫煙と飲酒を併用している場合、リスクは単独の場合よりも高くなることがわかっています。患者さん自身が生活習慣を見直し、禁煙や節酒に取り組むことは、舌癌の予防につながる大切なポイントです。

その他に考えられる原因を教えてください

舌癌の発症には、物理的刺激や喫煙・飲酒以外にもいくつかの要因が関わると考えられています。例えば、栄養バランスの偏りやビタミン不足、免疫力の低下が影響することがあります。また、慢性的なウイルス感染(ヒトパピローマウイルスなど)も一部の舌癌に関与することが知られています。遺伝的な体質も一因とされることがありますが、これは単独で発症を決定づけるものではなく、ほかの要因と組み合わさって発症に関わるととらえられています。お口の健康を守るためには、日々のケアと定期的な歯科受診が欠かせません。

舌癌の治療の流れ

舌癌の治療の流れ 続いては、舌癌の治療の流れを解説します。

舌癌の診断方法を教えてください

舌癌の診断は、まず歯科や口腔外科での視診と触診から始まります。例えば、舌の表面に治りにくい潰瘍や硬いしこりがあれば、組織を一部切り取って調べる「生検」という検査を行います。これにより、良性か悪性かを病理学的に診断します。必要に応じてCTやMRI、超音波検査を組み合わせ、癌の広がりや顎の骨への浸潤、リンパ節への転移の有無を確認します。進行度を正確に把握することで、治療計画が決まります。患者さん自身が早期に気付くことも重要で、少しでもお口の異変を感じたら早めの受診が大切です。

舌癌と判明した場合、どのような治療を行いますか?

舌癌と診断された場合、進行度に応じて治療方法が決まります。初期の舌癌では、癌を含む舌の部分を切除する手術が基本です。切除範囲は病変の大きさや位置により異なり、必要に応じてリンパ節の郭清(リンパ節の切除)も行われます。進行している場合は放射線療法や抗がん剤を組み合わせることもあります。再建が必要な場合は、ほかの部位の組織を移植して舌の機能を補うこともあります。患者さんの年齢や身体の状態、噛み合わせや発声への影響を総合的に考え、適切な治療方法を選択します。

抗がん剤や免疫療法が用いられるケースはありますか?

舌癌の治療では、進行度や手術での切除が難しい場合に抗がん剤治療や免疫療法が選択されることがあります。例えば、リンパ節や遠隔転移がある場合や、手術だけでは取り切れないと判断された場合に用いられます。抗がん剤は単独で用いられることもありますが、放射線療法と併用する化学放射線療法が選ばれることも多いです。

舌癌治療後の注意点

舌癌の治療を受けた後は、いくつかの点に注意する必要があります。

舌癌手術後の発声や食事に影響はありますか?

舌癌の手術では、切除範囲によって発声や食事のしやすさに影響が出ることがあります。舌は話す、飲み込む、食べ物を噛む動きに重要な役割を果たしています。例えば、舌の大部分を切除した場合は発音が不明瞭になったり、食事が取りにくくなったりすることがあります。その場合、言語訓練や嚥下訓練を通じて機能回復を目指します。また、再建術でほかの組織を使って舌の形を補う方法もあります。患者さん自身の努力とリハビリの継続が、発声や食事の質の改善につながります。治療後のサポート体制についても医療チームとよく相談しましょう。

再発を防ぐために注意すべきことはありますか?

舌癌は再発の可能性があるため、治療後の経過観察がとても重要です。患者さん自身がお口のなかを観察し、違和感やしこり、潰瘍が再び現れた場合はすぐに受診することが再発の早期発見につながります。また、喫煙や多量の飲酒は再発のリスクを高めるため、生活習慣を見直すことも大切です。定期的な歯科検診では、むし歯や噛み合わせ、歯茎の状態も確認し、舌に余計な刺激がかからないようにします。治療後は数ヶ月ごとに医師の診察を受け、必要な検査を行うことで、再発のリスクに備えることができます。

治療後の生活習慣で気をつけるべき点があれば教えてください

舌癌治療後の生活習慣では、再発防止とお口の健康維持のためにいくつか注意が必要です。例えば、禁煙や節酒は必須といえます。また、栄養バランスのよい食事を心がけ、身体の免疫力を保つことも大切です。歯磨きや舌の清掃を含めたお口の衛生管理を徹底し、むし歯や歯茎の炎症を防ぎましょう。入れ歯やマウスピース型矯正装置などが舌にあたっている場合は調整が必要です。噛み合わせの違和感があれば放置せず、歯科医に相談することをおすすめします。生活全体を整えることが、治療後の経過を良好に保つポイントです。

編集部まとめ

舌癌は誰にとっても他人事ではなく、お口の健康状態や生活習慣と深く関わる病気です。初期のサインを見逃さず、むし歯や歯茎の炎症、噛み合わせの不調なども含めて日頃から口腔内を清潔に保つことが大切です。治療後も再発防止のために定期的な検診と生活習慣の見直しが欠かせません。気付いたときの小さな行動が、身体の健康を守る大きな一歩になります。少しでも異変を感じたら、専門医へ相談してください。

この記事の監修歯科医師