歯周病の治療で何回か通院するのはなぜ?
こんにちは。千葉県市川市行徳にございます杉澤デンタルクリニック行徳の杉澤幹雄(日本歯周病学会認定医)と申します。
突然ですが、歯周病の治療を経験されたことがある方やこれから治療を受けられる方で
「歯周病の治療はどのくらいの期間がかかるの?」
「歯周病の治療で通院しているけど、歯石を取るのにどうして何回もかかるの?」
「以前は歯石を取るのに一回で済んだこともあるのにどうして?」
などなど、疑問に思われたことがあるかもしれません。
今回はこの歯周病の治療における歯石の除去に時間がかかるわけについて書いていこうと思います。
目次 -INDEX-
歯周病の原因となるプラークや歯石とは?
歯周病の治療は原因となるプラークや歯石を取り除くことが重要になります。もちろん、日々の歯ブラシによりプラークをコントロールしこれ以上プラークや歯石が停滞しないようにすることや、停滞しにくい環境に整える治療も大きく重要です。それではプラークや歯石とは何でしょうか?
〇プラーク(バイオフィルム)とは
プラークとは歯の表面に付着した黄白色の沈着物です。それは細菌が原材料である食べかすなどを利用し作製した細菌のお家と、そこに住む多量の細菌によって構成されています。そのお家は強いため、うがい薬の薬効などもお家の中までは浸透しにくい特徴があるため、物理的に取り除く必要があります。
目で見える部分の歯の表面に付着したプラークは主に歯を溶かす酸を出す細菌が多く含まれ虫歯の原因になります。目では見えない歯と歯茎のすき間(ポケット)の中のプラークには歯周組織への感染を引き起こす細菌が多く含まれ、歯周病の原因になるのです。
〇歯石(縁上歯石と縁下歯石)とは
プラークと唾液中のリンやカルシウムが結合することにより石灰化し歯石となります。歯石はプラークよりもより強固に歯に付着し、歯ブラシでは取れません。また、歯石の表面は粗造で更なるプラークの停滞を引き起こしより大きな細菌の集合体ができてしまいます。こんな厄介な歯石はプラークが付着して2日ほどで完成してしまうのです。
歯肉の縁より上(目で見える部分)に付着したプラークからできる歯石を縁上歯石といい、歯肉の縁より下(目で見えないポケットの中)に停滞したプラークからできる歯石を縁下歯石といいます。縁上歯石はプラーク同様黄白色を呈しますが、縁下歯石は歯周組織からの血液を栄養とするため暗褐色を呈します。特に縁下歯石はより強固に付着し、また見えない部分にできるため、取り除くことがより難しくなります。
歯周病の治療は原因となるプラークや歯石をとる治療
【スケーリング、スケーリング・ルートプレーニング、歯周外科治療】
歯周病の原因となるプラークや歯石を取り除く方法はいくつかあります。日々のブラッシングもプラークを取り除く方法ですが、歯石は取り除くことができません。そこで頑固に付着した歯石を取り除く歯周病治療には主に3つの方法があります。
〇スケーリング
歯の表面に付着したプラークや歯石を取り除く方法です。歯石を取り除く専用の器具を用いて、丁寧に歯石を取り除きます。歯周病が早期の場合、歯周ポケットも比較的浅いため、ポケットの中の歯石やプラークは少なく、見える範囲での歯石(縁上)を取り除くことがメインになるため、歯石除去時の疼痛も少なく、麻酔も必要でないことが多いです。そのためスケーリングだけで歯周病が改善するため、歯周病治療において長く通院しなくて済みます。
〇スケーリング・ルートプレーニング
歯周病が進行すると歯周ポケットが深くなってしまいます。その状態では深いポケットの中は歯周組織への感染性の細菌が多く存在するプラークや、歯の根に強固に付着した縁下歯石が多量に付着していることが考えられます。また、その多量の細菌によって歯根表面のセメント質も汚染された状態(病的セメント質)となってしまいます。
スケーリング・ルートプレーニングは歯の表面に付着した、プラークや歯石、汚染された病的セメント質を取り除き、滑沢な歯の表面に仕上げる治療になります。主に歯周ポケットの中で行うため、歯科局所麻酔下での治療になります。もし、全体的に歯周病が中等度以上に進行している場合は、全体的に行う必要があり、一回ですべてを麻酔し行うことは身体的負担や時間的なことを考慮すると難しいため、何回かに分けて全体的に行う必要があります。そのため、何回か通院する必要があるのです。
〇歯周外科治療
スケーリング・ルートプレーニングや歯周病になる環境改善、ご自身での日々のプラークコントロールを行う初期の治療を行っても改善されない重度な歯周病は外科的に原因を取り除く必要があります。特にスケーリング・ルートプレーニングは直視しずらい部位の治療になるため、より深いポケットが存在したり、多量の縁下歯石が沈着している場合、それらを取り残してしまいます。そのため、外科的に歯茎を切り開くことで歯根の表面に強固に付着した歯石や病的セメント質を直視下で取り除くことが必要になります。また、この外科治療において失った歯を支える骨などの歯周組織の再生を併用することも考えることになります。
まとめ
歯周病の治療において、初期の歯周病においては歯周ポケットも浅く、直視できる歯石を取り除くことで炎症が改善されるため、比較的早く治療が終わり、通院する回数は少なく済むでしょう。しかし、中等度以上にかつ広範囲に歯周病が進行してしまうと、その除去は難しくなり、また麻酔が必要になることで治療回数が多くなり、通院する回数や期間が長くなってしまいます。
歯周病は一般的に慢性的にゆっくり進行するため、歯周病学会認定医/専門医が所属するクリニックにて定期的に検査することで、進行する前に把握することができ、また早期にわかることで少ない治療で歯周病が改善することが可能です。
痛みなどの症状が出にくい病気であるため、症状がなくとも定期的にメンテナンスや歯周病の精密な検査を強くお勧め致します。