《歯周組織の構造》歯ぐきは口の中を守っている!
歯ぐきはお口の中を見た時にピンク色や薄い赤色の歯の周りにある組織のことを言います。
専門用語では歯周組織と言われます。
その歯周組織(歯ぐき)とは、歯を支える周囲の組織のことです。この組織は、歯肉、歯槽骨、セメント質、歯根膜で構成されています。
歯は歯周組織に守られ、機能しています。
また、歯周組織は、ものを食べる時に歯に加わる力を分散させたり、歯に与えられる触覚や圧覚を感知する機能を持ちます。歯は骨(歯槽骨)によって支えられていますが骨は歯肉で覆われているので、お口の中を見た時には歯と歯肉しか見えません。
健康な歯ぐきは、ピンク色、または薄い赤色をしています。表面にはスティプリングがみられ歯ぐきを形成するコラーゲン線維が健康な状態であるときにみられます。そして、歯ぐきは歯の周りを取り巻いています。ちなみに、歯と歯ぐきの間にある溝が歯周ポケット(⇒図2)とよばれます。その歯周ポケットの深さはお口の中の健康を診るうえで、大変重要なものになってきます。健康な状態ならば、溝の深さは 3mm以内が目安となります。
歯周ポケットがない歯茎が理想的な歯ぐきだとも言われています。そのため歯周ポケットの検査などを行い歯周病の進行程度を調べたりします。歯肉だけに炎症が波及したものが歯肉炎といわれ、深部組織の歯槽骨、セメント質、歯根膜まで炎症が波及したものが歯周炎といわれます。
健康な歯ぐきの写真(20才代)
前述したピンク色の歯ぐきでありプラークなど汚れなども付いておりません
健康な歯ぐきの写真(60才代)
ピンク色のきれいな歯茎ですが多少歯ぐきの退縮がみられます
歯周病患者の写真(20才代)
歯ぐきが暗褐色を呈しプラークも多く付着しております。
歯周組織(歯肉/歯槽骨/セメント質/歯根膜)の構成要素
それぞれの歯周組織(歯肉、歯槽骨、セメント質、歯根膜)の構成要素について詳しく説明していきます。
歯肉
歯肉は歯槽骨や歯に付着する組織です。歯肉は付着歯肉、辺縁歯肉、歯間歯肉に分けられます。付着歯肉は、歯槽骨とくっついているため動かすことが出来ません。健康的な付着歯肉では、スティップリングと呼ばれるクボミが見られます。辺縁歯肉は、歯と歯肉との間にある部分で、歯とはくっついていません。この歯と歯肉の間の部分は歯肉溝と呼ばれ、その深さは、歯肉が正常な場合は3mm以下です。歯間歯肉は、歯と歯の間を埋める歯肉です。歯肉が炎症することを歯肉炎といいますが、歯肉炎は、歯間歯肉から始まることが多いです。
歯肉は皆様自身でも見えるので健康的な歯肉と不健康な歯肉の違いをチェックしてみてください。
―健康な歯肉―
・色はピンク色もしくは薄い赤色
・歯と歯のあいだの歯肉は、引き締まった三角形をしている
―不健康な歯肉―
・色は濃い赤色(暗褐色)
・歯周ポケット(歯と歯肉の境目)から出血がある
・歯と歯の間の歯肉に隙間がある。
歯肉が炎症を起こすと歯肉が赤くなり腫れてブヨブヨしてきます。歯みがきをすると出血しやすく、痛みがあります
歯槽骨
歯槽骨は歯の歯根を取り囲み支えています。歯槽骨には、支持骨と固有歯槽骨があります。支持骨は、固有歯槽骨を支える役割を持ち、固有歯槽骨は歯を直接支える役割を持っています。歯周病においては、固有歯槽骨から破壊が進んでいきます。また、何らかの原因で歯槽骨から歯が無くなると、歯槽骨はどんどん痩せていきます。上あごと下あごでは上あごの方の骨が柔らかいともいわれています。
歯周病が進むと破壊される組織でもあり、破壊された場合は歯はその支えを失って抜け落ちてしまいます。
歯槽骨が無くなってしまった場合に歯周組織再生療法があります。歯周組織再生療法にはGTR方(Guided Tissue Regeneration)、エムドゲイン、リグロスなどがあります。適応に応じて歯周組織の再生を促します。
セメント質
セメント質は、歯の根の部分(歯根)の周りおおう薄い組織です。骨と同程度の硬さ(モース硬度4~5)で エナメル質と比べると柔らかく、黄味を帯びた白色の光沢がない組織です。原生セメント質と第二セメント質があり、セメント質の内部にはセメント小体があります。このセメント小体からは、セメント細管が歯根膜に向かって伸びているのですが、これは歯根膜から栄養をもらうためです。セメント質は年をとるごとに厚くなっていきます。
このセメント質の組成は、象牙質や骨組織とほとんど同じで、約65パーセントが ハイドロキシアパタイトという無機質からできています。そして、残りの約23パーセントが 有機質(コラーゲン)です。
セメント質には歯根膜が入り込んでおり、反対側にある歯槽骨にも同じように歯根膜が入り込み、歯と歯槽骨をつなぎとめる役割をしています。
セメント質の栄養は 象牙質や歯髄からではなく、歯根膜から栄養を受けています。歯髄が死んでしまったり、抜髄されたりして 歯髄がなくなっても セメント質の機能は障害されず、歯はなんら不自由なく 使うことができます。セメント質は、比較的弱いので傷つきやすいのですが 再生能力は高く、歯根表面の損傷に対して修復する機能も持ってます。
歯根膜
歯根膜は、前述した歯根の表面を被っているセメント質と歯槽骨を結びつけている線維です。言い換えれば歯と歯槽骨を結び付けています。歯根膜の主成分はコラーゲン繊維であり、セメント質に繊維を入り込ませて栄養を与えています。
歯根膜の機能は、噛むときの衝撃吸収や、歯を歯槽骨の中に留まるように弾力を持たせつつ固定する、噛んだ感触を脳に伝える役割などあります。さらに歯根膜は、衝撃を吸収するための繊維だけでなく、セメント質に栄養を補給するための血管も存在しています。
歯根膜内部では、歯とあごの隙間に無数の繊維が横断して歯を固定しています。その繊維の方向は一定方向ではなく、歯が動いても抵抗するよう、様々な角度に配置されています。イメージ的には噛む際の衝撃や、歯を引っ張っても抵抗するような繊維のじん帯です。
まとめ
少し難しくなってしまいましたが歯周組織の方は理解できましたでしょうか。
歯ぐきがお口の中の健康を保っています。歯ぐきが悪くならないように歯ブラシを頑張ってすることをお勧めします。