歯石ってなんでできるの?
こんにちは。
日本歯周病学会認定医としてメープルデンタルクリニック大久保で勤務している剣持正浩と申します。
いきなりですが、
・歯の表面がざらざらする
・歯が欠けた?
・歯や歯根の表面に黄色っぽい、もしくは黒っぽいものがついている
・いくら歯磨きしてもとれない汚れがついている
などの症状がある方はいませんか?もしかしたら、それは歯石かもしれません。
でも、そもそも歯石ってなに?歯石ができやすい部位はあるの?本当に歯石はとらなくてはいけないの?歯ブラシではとれないの?
などなど、疑問に思っていることも数多くあるのではないでしょうか?
そこで今回は、歯周病の原因となる細菌の住みかになってしまう歯石についてのお話です。
目次 -INDEX-
そもそも歯石ってなに?
プラーク(歯垢)が唾液中のカルシウムやリンなどの成分と結びついて石のように固くなり、歯の表面に強固に沈着したものをいいます。
個人差もありますが、プラークは48時間程度で歯石に変わりはじめます。歯石になってしまうと、表面は凸凹し、小さい穴があいているので、細菌の住みかになり、虫歯や歯周病の原因になります。
歯石になる前にプラークを除去することが重要です。歯石になってしまった場合は、ブラッシングで除去するのは難しいですから、歯科を受診して早めに除去しましょう。
歯石ができやすい部位はあるの?
歯石は大きく分けると、歯ぐきより上にできる歯石(歯肉縁上歯石)と歯ぐきの中にできる歯石(歯肉縁化歯石)に分けられます。
歯ぐきの上にできる歯石(歯肉縁上歯石)
・唾液中のカルシウムやリンなどの成分と歯ぐきより上のプラークが結びついて石のように固くなり、歯の表面に強固に沈着したものをいいます。
・歯石の色は、主に唾液が関係しているので、乳白色から黄色です。
・歯石がよくできる部位は、唾液の出口がある下顎の前歯の裏側と上顎の奥歯の表側や、食物の流れが悪い機能していない(噛んでいない)歯の表面にできやすいです。
・歯肉縁上歯石は、歯科医院にある超音波で振動を与える器具などで、比較的容易に除去することが可能です。
歯ぐきの中にできる歯石(歯肉縁化歯石)
・浸出液といわれる体液に含まれる鉄分や、血液を取り込んで沈着する歯石です。
・歯周ポケット内にあるので、自分では見つけにくいし、強くこびり付いているので、除去するのが大変です。
・歯石の色は、茶褐色あるいは黒色です。
・よくできる場所は、深い歯周ポケット内に多いです。その原因として、炎症がある深い歯周ポケットは、歯石と結びつく浸出液と呼ばれる体液がたくさん出ていますし、出血を伴うためです。
・歯や歯根に強固にくっつくため、除去するのが大変です。除去するだけでも何回かの通院が必要です。
本当に歯石はとらないとダメなの?
歯石そのものは、プラークが石のようになったものなので、病原性はないといってもよいのですが・・・。
歯石の形態は不規則で、表面はざらざら・ぼこぼこしています。その表面にはプラークができやすく、細菌が繁殖し、歯周病や虫歯の原因となります。そのため、歯周病や虫歯のリスクを減らすためにも、歯石は除去するべきです。
また歯石があるということは、歯周病の可能性があるため、歯周病専門医や認定医がいる歯科医院を受診し、歯石の除去と、歯周病の検査を行った方が良いと思われます。
歯石はどうやってとるの?
歯石は石のように硬く、ブラッシングではとれませんから、歯科医院で使用する特殊な器具が必要となります。
手用スケーラー・超音波スケーラー・レーザーなどの特殊な器具を用いて、歯に付着したプラーク、歯石、その他の沈着物を除去します。短時間で効率的に行うことができる超音波スケーラーは、歯ぐきの上の歯石の除去に用いることが多く、実際に手で行う手用スケーラーと同等の効果があるといわれています。
また最近では、超音波スケーラーの改善により、歯ぐきの中の硬い歯石も除去できるようになってきています。
補足ですが、歯ぐきが腫れていて出血するような状態だと、歯石除去を行っても、歯石の取り残しが多くなります。そのため、基本的には正しいブラッシングを行い、ある程度歯ぐきが引き締まってから行う方が、良いと考えられています。
歯石をとることで、起きることってある?
歯石を除去すると、歯ぐきが引き締まり、一時的に歯がしみるようになる知覚過敏といわれる症状がでる場合があります。
これは歯石があったことで、歯周病が進行し歯を支える骨が溶けてしまい、歯ぐきが引き締まって健康な状態になると、歯を支える骨がないため、歯の根が露出することでしみるようになります。
一過性の知覚過敏が起きる可能性はありますが、それを気にして歯石を放置すると、歯周病は悪化していきますので、除去して健康な歯ぐきを取り戻しましょう。
歯周病がかなりひどくなると、実はすごく揺れている歯が大量の歯石によりくっついていることもあります。歯石を除去すると、歯石による結びつきを失った歯が揺れる可能性がありますが、歯石を除去しないと、歯周病は治りませんし、健康な口腔内の環境を取り戻すことはできません。また、歯周病による全身への影響も考えられます。必ずしも、歯を抜かなくてはいけないとは限りませんで、歯周病専門医や認定医がいる歯科医院を受診して相談してみましょう。
予防するには?
歯石のもとになるプラークが付着しないような口腔内の環境をつくることが一番大事です。
・食べたら歯磨きを心がけましょう。
・歯周病認定医や専門医のいる歯科医院を受診して、正しいブラッシング方法や補助器具の使い方を身につけましょう。
・プラークが残りやすい部位を把握しましょう。奥歯や、歯の間、歯ぐきの境目、噛み合わせのない歯の表面、入れ歯の支えになっている歯などは、特に付着しやすいです。
・フロスや、歯間ブラシなどの補助器具を正しく使用しましょう。
・磨き残しがないように、染め出し液などを使用してみましょう。
・いくら気をつけていても歯石がついてしまうこともありますので、定期的に歯科医院を受診しましょう。
・また、ブラッシング時によく出血する場合は、もうすでに歯石がついているかもしれませんし、歯周病かもしれませんので、歯周病専門医や認定医がいる歯科医院を受診しましょう。
・すでに歯周病により深い歯周ポケットがある場合は、ブラッシング等だけでは限界があります。同様に歯周病専門医や認定医がいる歯科医院を受診しましょう。
まとめ
歯石そのものに病原性はないといってもよいのですが、でこぼこ・ざらざらした歯石がつくことで、プラーク(細菌のかたまり)がつきやすくなり、歯周病や虫歯の原因となります。
一番大事なことは、歯石がつかないような口腔内の環境をつくることです。そのためには、歯周病専門医や認定医がいる歯科医院を受診し、正しいブラッシングや補助器具の使い方を身につけましょう。
それでも歯石がついてしまうことや、自分では気づきづらい場所に歯石がついてしまっている場合もありますので、定期的に歯科を受診しましょう。