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自分の歯を植え替える!? 歯牙移植って何?

 更新日:2023/03/27

こんにちは、たまプラーザの日本歯周病学会認定歯周病専門医が在籍する歯医者「美しの森デンタルクリニック」院長の村野嘉則と申します。
歯医者さんと言えば『歯が痛くなったら行く所』と一昔前まではそんな患者さまが多くおられました。しかし近年、日本の歯科医療では予防歯科の概念が広まり、患者さまの意識にも変化が見られています。当院でも歯科医院へ定期的に受診することの重要性を理解され、毎回欠かさず定期健診を受けていただいている方が多くいらっしゃいます。しかし、若い世代の虫歯の数は減少傾向にあるものの依然として65歳以降の高齢者では虫歯や歯周病の数は増加傾向にある事がわかっています。
また、歯を失う原因としては歯周病が最も多く、ついで虫歯や歯の破折などがありますが、虫歯で抜歯となるケースは10代から40代前半の世代で多く認められ、歯周病や歯の破折で抜歯となるケースは50代から多くなるという報告があります。【*永久歯の抜歯原因調査(財団法人8020推進財団,平成17年)】
このように万が一ご自身の歯が、何らかの原因により抜歯となってしまった場合、失った歯を補う処置が必要になってきます。インプラントやブリッジ、部分入れ歯などの様々な方法がありますが、ご自身の使っていない歯を利用した歯牙移植という方法があるのをご存知でしょうか?今回はこの歯牙移植について詳しくご説明しようと思います。

執筆歯科医師
村野 嘉則(日本歯周病学会専門医)

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《保有資格》
日本臨床歯周病学会認定医。日本歯周病学会認定歯周病専門医。厚生労働省認定歯科医師臨床研修指導歯科医等。
《自己紹介》
美しの森デンタルクリニック院長の村野です。歯を失う原因である歯周病の治療を専門としておりますが、歯周病は歯だけでなく、全身の健康にも被害を及ぼすのではと懸念されている疾患の一つです。各科の専門医と協力することで、「なるべく歯を残す治療」を心がけています。

 歯牙移植って何?

歯牙移植とは通常、保存が難しく抜歯となった部分へ、噛み合わせに関係のない親知らずなどの不必要な歯を抜歯して移す(移植)処置です。ご自身の歯を活用する為、正式には自家歯牙移植と言います。また、歯牙移植に似た処置として他に外科的挺出や意図的再植などの処置もあります。

 歯牙移植のメリット・デメリット

歯牙移植のメリットとしては、入れ歯やインプラントが回避でき、ブリッジなどのように歯を削る必要が無く(歯を削るとその歯の寿命を縮めてしまう可能性があります)、インプラントなどより治療費をおさえる事が可能となります。
また、その名の通り自分自身の歯ですから一定の条件を満たせば拒絶反応などの心配もなく、通常の歯と同様の機能を持つことからインプラントよりも優れた治療となります。ご自身の歯に勝るものはありません。
デメリットには外科処置が必要になることや、移植した歯の状態によっては術後にしっかりと生着しなかったり根が吸収したりすることがあります。

 歯牙移植の条件

余っている歯があればどのような状況でも歯牙移植ができるわけではありません。基本的には、歯周病や虫歯などによる大きな組織の損傷がない歯で歯根膜と言われる根の表面と骨とを繋ぐ靭帯がしっかりと残っている歯が移植歯として使われます。歯根膜がないとしっかりと生着せず、移植の失敗や術後の歯根吸収に繋がります。また、抜歯した部分と移植する歯の大きさが適切であることや移植する歯の根の形なども移植の条件に関係する為、術前の十分な診査が大切です。

 一般的な歯牙移植の流れ

1. 基本的には移植の当日に保存が難しくなった歯の抜歯を行う
2. 親知らずなどの移植に利用する歯の抜歯を行う
3. 抜歯した部分の骨を削ったりして、移植歯に適合するよう調整する
4. 抜歯した部分に歯を移植し固定する
5. 術後の消毒、約1週間に抜糸
6. 2週間後に移植した歯の根管治療(移植した歯に神経が残っている場合抜歯により神経が壊死する為、根の治療が必要)
7. 術後2〜3ヶ月で被せ物などの処置を行う

 外科的挺出と意図的再植とは

外科的挺出意図的再植は虫歯が深部まで進行した歯や通常の根の治療をしても治らない根の先の病巣のある歯を救うための方法です。簡単に言うと一度抜歯して、元あった場所に戻すという処置ですが目的により呼び名が変わります。
外科的挺出とは例えば虫歯が歯茎の中まで進行してしまい被せ物などがしっかりとできない場合などに、歯を一度抜いて根を引き出し健康な歯の部分を歯茎から出してあげることで抜歯を回避する方法となります。
意図的再植は、根の治療がうまくいかず治癒しない歯で抜歯をしないと治らないような場合に、最終手段としてその歯を保存するために試みるための処置となります。具体的には一度抜歯をし、お口の外で根の先の病気の治療を行ない、再度抜歯した部分に戻すことで抜歯を回避する方法になります。
どちらも、自家歯牙移植の時と同様に歯根膜の組織の存在が成功の鍵となりますが、抜歯と告げられた歯でもこれらの処置により保存することができる場合もあるので、抜いてしまう前に担当医の先生に相談してみると良いでしょう。

 まとめ

歯牙移植に関してお話ししてきましたがご理解いただけましたでしょうか?どんなに精密につくった入れ歯やブリッジ、インプラントでも、ご自身の歯に勝るものはありません。もしも、抜歯が必要になった場合には、親知らずや噛み合わせに関与していない歯があればインプラントやブリッジをする必要のない『歯牙移植』ができるかもしれません。
また、親知らずを奥歯などに移植する場合などで、条件が整えば健康保険が適用できる場合もありますので、抜歯してインプラントなどを検討する前に、ぜひ歯牙移植も可能かどうか検討する価値があると思いますので、抜歯の前に一度主治医と相談することをお勧めいたします。

この記事の監修歯科医師