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歯科選びで重要な「専門医」

 更新日:2023/03/27

こんにちは。メープルデンタルクリニック大久保の剣持正浩(日本歯周病学会認定医)と申します。
突然ですが、みなさんは、歯科医院を受診するうえで、数多くある歯科医院の中から何を基準にして歯科医院を選択していますか?
例えば、「知り合いや家族が通っているから」・「家から近いから」・「先生が優しいから」・「腕がいいと評判だから」など様々な理由のもとに自分が通われる歯科医院を選択していることかと思います。
また患者様によっては、自分が通っている歯科医院が「何を得意としているか?」などについて、調べた結果をもとに、歯科医院を選択している方もいるかもしれません。
実際に当院においても、歯周病でお困りの患者様が、ご自身で「歯周病専門医」がいる歯科医院をお調べになり、来院されるかたがいらっしゃいます。
上記の「歯周病専門医」のように、歯科も、数多くの分野に分かれています。例えば、「補綴(入れ歯や被せ物による治療)」「小児」「矯正」「口腔外科」「歯内療法(歯の根の治療)」などもそうです。
そこで今回は、歯科医院選びの一つの指標となっている「専門医」について、お話をさせていただきます。

 専門医

専門医とは、各学会の基準により認定されるもので、国の制度ではありません。日本歯科医学会から抜粋すると、日本の歯科医学会は、日本歯科医師会の中に設置された学術研究組織であり、現在23の専門分科会及び20の認定分科会があります。学会会員は、日本歯科医師会会員と専門分科会及び認定分科会会員とからなり、会員数の合計は、101,441名(平成29年2月28日現在)となっています。
現在、厚生労働省が「医療に関する広告が可能となった医師等の専門性に関する資格名等について」として、平成14年4月1日付けの医療機関の広告規制の緩和に伴い、医師又は歯科医師の専門性に関し、告示で定める基準を満たすものとして厚生労働大臣に届出がなされた団体の認定する資格名が広告できることとなりました。

専門医として広告が可能なものは、以下の5つになります。

  1. 公益社団法人日本口腔外科学会 「口腔外科専門医」
  2. 特定非営利活動法人日本歯周病学会 「歯周病専門医」
  3. 一般社団法人日本小児歯科学会「小児歯科専門医」
  4. 一般社団法人日本歯科麻酔学会「歯科麻酔専門医」
  5. 特定非営利活動法人「歯科放射線専門医」

では、その5つの専門医についてみていきましょう。

 口腔外科専門医

口腔外科とは、口腔外科学会から抜粋すると、「口腔(こうくう:口のなか)、顎(がく:あご)、顔面ならびにその隣接組織に現れる先天性および後天性の疾患」を扱う診療科であり、口腔外科専門医の取得のためには、歯科医師(医師)免許取得後、初期臨床研修を修了してから6年以上、学会認定の研修施設(准研修施設)に所属し、口腔外科に係わる診療と学術的活動に従事して一定以上の実績を有することが必要条件となります。
口腔外科専門医の資格は、①申請書類審査、②筆記試験・口頭試問、③手術実地審査の3段階を経て認定されます。特に、手術実地審査は、試験官が申請者の口腔外科手術を実際に見学し、その手術能力を判定するものです。
また、専門医の資格は5年ごとに更新する義務があり、期間内に一定の研修実績を上げることが必須となっています。口腔外科専門医は、資格取得後も継続的に学識を高め、診療技能の向上に励むことが求められている訳です。

 歯周病専門医

日本歯周病学会より抜粋すると、日本歯周病学会は、歯周病を克服することにより自分の歯を1本でも多く残すことを目的に1957年に設立された学術団体であり、会員総数は2018年3月31日現在10,721名を数える。
会員の構成の特徴としては大学の臨床講座の会員以外に、基礎講座および開業歯科医の会員、加えて歯科衛生士の会員の比率が多いことであり、このことは歯周病という疾患の病因、病態や治療法の多様性を強く反映している。さらに、2004年度からはNPO法人として新たに発足し、より公益性の高い組織をめざしている。
歯周病治療に対する一定の経験や知識などを問う試験や学会参加などを条件に、「日本歯周病学会専門医」「日本歯周病学会認定医」という資格を授与しています。
専門医や認定医の資格は5年ごとに更新する必要があるため、常に歯周病治療を行っていなければ、資格を保有し続けられません。

 小児歯科専門医

小児歯科学会から抜粋すると、小児歯科学会は小児歯科医療の発展と向上をはかり、小児口腔保健の充実と増進に寄与するため、本学会員の学問的・技術的向上はもとより、それらに関係する全ての領域と協力して、よりよい環境の社会を作ることを目指しています。
また、小児歯科学の進歩ならびに知識の普及に貢献し、もって医療に関する学術文化ならびに国民の福祉と医療の発展に寄与することも目的としています。
さらに、小児歯科医療に関する専門的知識と技術、そして公共的使命と社会的責任を有する歯科医師を小児歯科専門医と位置づけ、国民の皆様に対して、安心で安全な歯科医療の提供と地域における小児歯科医療の核となる人材の育成に取り組んで参りますと記載されています。

小児歯科専門医も同様に、他の専門医と同様に小児歯科治療における一定の経験や知識などを問う試験や学会発表などを条件に、「専門医」「認定医」という資格を授与しています。専門医や認定医の資格は5年ごとに更新する必要があるため、常に小児歯科治療を行っていなければ、資格を保有し続けられません。

 歯科麻酔専門医

日本歯科麻酔学会から抜粋すると、歯科麻酔学に関わる研究、診療、教育の進歩及び発展をはかり、歯科医療における安全性の向上、地域社会の福祉に貢献し、これらに携わる会員及び社員の育成と向上をはかることを目的としています。
また、特色を一言でいえば、全ての患者さんに『全く痛くなく、怖くもなく、何ら不安も感じず、そして快適で、安全に歯科治療を受けて頂くこと』と『顔や口の中の原因不明の痛みやシビレを取り除き、辛くて不自由な生活から解放すること』、にあり、この点でいわゆる医科の麻酔とはかなり趣を異にしています。
歯科麻酔専門医は、あらゆる患者さんが、いつでも、どこでも『全く痛くなく、怖くもなく、何ら不安も感じず、快適で、そして安全な歯科治療や手術』が受けられ、さらに『顔や口の中の激しい痛みやシビレで、辛く、不自由な生活』から解放されるよう支援、活動すると記載されています。
専門医取得には、学会参加や論文投稿、全身麻酔や静脈内鎮静法などの全身管理における一定の経験や知識、救急蘇生講習会の受講、試験などが必要な認定医の資格を有した上で、さらなる試験などが必要です。もちろん、5年ごとに更新の必要があるため、歯科麻酔治療を行っていなければ、資格を維持するにはできません・

 歯科放射線専門医

日本歯科放射線学会から一部抜粋すると、診断は歯科診療に先駆けて行う最も重要な部門であり、問診・視診・触診などの臨床所見に加えて、画像診断を行うことによって臨床診断を得ることになります。そして、必要に応じて、病理診断で確定します。
口腔領域では、病変が歯や骨などの硬組織に存在すすることが多く、画像診断によって初めて可視化できます。そういった意味で、比較的非侵襲(生体を傷つけず)に診断を行える画像診断の役割は大きいと思われると記載されています。
画像診断業務に従事し、 造影・CT・超音波・MRI・RIなどの読影などの一定の経験や知識などを問う試験や学会発表などを条件に、「専門医」「認定医」という資格を授与しています。また、他の専門医と同様に更新が必要となります。

 まとめ

今回は、厚生労働省が専門医として広告可能な5つの専門医について簡単に紹介させて頂きましたが、今回紹介できなかった専門性をもつ学術団体による専門医も数多くありますので、歯科医院を選ぶときの数ある指標の一つとして参考にしてみるのもいいかもしれません。

この記事の監修歯科医師