虫歯と歯周病って関係あるの?
こんにちは。日本歯周病学会専門医の飯島佑斗と申します。
お口の中の病気と言えば虫歯と歯周病がまず思い浮かぶかと思います。しかし虫歯と歯周病の違いについてしっかりとご理解いただいているでしょうか。
今回は虫歯と歯周病について、さらに虫歯と歯周病は関係しているのかについて解説したいと思います。
監修歯科医師:
飯島 佑斗(飯島歯科医院・院長)
虫歯ってなに?
まず虫歯について解説していきます。ほとんどの方は歯に痛みがあったりしみたりすると虫歯じゃないかと心配されると思います。ではそもそも虫歯とはなんなのか説明していきたいと思います。
お口の中の汚れである歯垢(プラーク)の中に潜んでいるミュータンス連鎖球菌という細菌が酸を産生し歯を溶かしていくと言われています。またこのミュータンス連鎖球菌は糖類を元に不溶性グルカンといわれる物質を作り出すことで歯に対して強力にくっつくと言われていて、これがプラークがうがいだけでは歯から落とせない要因となっています。またプラークは抗生物質などの薬に対して抵抗力があり、これにより薬を飲んでも虫歯を治すことができないと言われています。
歯周病ってなに?
次に歯周病について解説したいと思います。
歯周病とは一部を除きほとんどが歯周病を起こす細菌による感染症と言われています。歯周病を起こす一般的な細菌としてはポルフィロモナスジンジバーリス、トレポネーマデンティコラ、タンネレラフォーサイシアという細菌が挙げられます。
よく知られている虫歯と違い、歯の周囲の歯茎や骨などの歯周組織と言われる部分に問題が起こります。歯周病は歯茎にのみに症状が起こる歯肉炎と歯肉炎が進行して起こる歯周炎に大別されます。
歯肉炎
歯垢などの汚れに潜む歯周病をおこす細菌によって歯茎のみに炎症を起こす歯肉炎が最もよくみられます。しかしそれ以外にも原因によっていくつか歯茎に病変を形成する歯肉病変があります。
①プラーク(歯垢)による歯肉炎
一般的に歯肉炎と言われるものです。歯の汚れである歯垢(プラーク)の中の細菌によって歯茎に起こる炎症のことです。歯周炎の前段階とされています。
症状としては歯茎の色調がピンク色から赤色になり、腫れ、出血、痛みなどがみられます。しかしレントゲンや歯周ポケットの検査では異常が見られない状態です。思春期、妊娠などの特定の時期に起こりやすいとも言われ、糖尿病や白血病、栄養不足などによっても起こりやすいとも言われます。原因としては歯垢(プラーク)ですので、歯肉炎の発症を予防するためには日々のブラッシングや歯科医院への定期検診は非常に重要となります。
②プラーク以外による歯肉炎
歯垢の中の細菌以外でおこる歯肉炎のことです。一般的な歯垢にいる細菌以外の細菌による感染によるもの、皮膚病に伴うもの、アレルギーによるもの、外傷によるものなどがあります。原因によりさまざまな症状をおこします。
歯周炎
一般的に歯周病と言うとこの歯周炎を指すことが多いと思います。
歯周病をおこす細菌による炎症が歯茎からさらに深部の歯を支える骨(歯槽骨)や歯と骨を結合している歯根膜、セメント質にまで及んでしまった状態です。
歯槽骨の吸収などに伴い歯と歯茎に歯周ポケットという深い溝を形成します。一度歯周ポケットを形成してしまうとその溝の中でかたい歯石(歯肉縁下歯石)ができてしまい、その歯石の表面にまた歯垢が沈着し炎症をおこします。歯周ポケットは4mm以上の深さのため歯ブラシの毛先が届きづらく、さらに歯周ポケットが悪化し、より歯石や歯垢の除去が困難になり悪循環をおこしてしまいます。
歯周炎にもその進行スピードによって種類があります。
①慢性歯周炎
最もよくみられる歯周炎で、35歳以上になるとみられることが多いです。
症状としては歯周ポケットの形成、歯周ポケットからの膿の排出・出血、歯を支えている骨(歯槽骨)の破壊、歯が揺れるなどです。
名前の通り慢性に経過するため上記の症状を自覚するまでどんどんと病気は進行します。ほとんどが痛みを伴わないため見逃されがちで、気がつくと治療が非常に困難になってしまっていることもあります。
②侵襲性歯周炎
全身的には健康ですが、急激な歯を支えている骨(歯槽骨)の破壊や歯周ポケットの形成を起こす歯周病です。家族内で同様の症状がおこることが多いと言われています。一般的には歯垢(プラーク)の付着している量は少なく、発症する年齢も10〜30歳くらいの若い人が多いと言われています。さらに歯周病の細菌の中でも特定の細菌が多いと言われることもありますが、最近では慢性歯周炎に多い細菌が原因となって発症していることもあると言われています。さらにこの歯周病を発症したひとには身体の免疫の異常が認められるという特徴もあります。この歯周病にかかっているひとは全体の0.05〜0.1%程度と言われています。
虫歯と歯周病は無関係なの?
以上のように虫歯と歯周病は原因となる細菌がまず違うのと、攻撃するターゲットとなる場所が違うということがわかったかと思います。しかし虫歯と歯周病が全くの無関係というわけではありません。虫歯が進行し、歯の神経まで到達、さらに進行して歯の神経が細菌により完全に侵されてしまえば歯の内部や歯の外部にまでも膿をつくってしまいます。この膿により歯の周囲の骨などが壊されてしまえば虫歯が原因により2次的に歯周病がつくられることになります。また虫歯が歯の深い部分、つまり通常骨の中にうまっている歯の歯根と言われる部分まで急激に進行し、それが放置された場合にも2次的に歯周病が作られることがあります。原因となる細菌は違いますが、このように病気が併発してしまうこともあるのです。
まとめ
今回は虫歯と歯周病について解説させていただきました。どちらの病気もお口の中ではありふれた病気ではありますが、それぞれの病気について詳しく知らなかった方は多いかもしれません。今回の記事でそれぞれの病気について少しでも理解を深め、今後ご自身のお口の中の変化に敏感に気づいていただき、早めの歯科医院への受診につながっていただければ幸いです。