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はぎしり・食いしばりが歯周病を悪化させる?

 更新日:2023/03/27

こんにちは。千葉県市川市行徳にあります『杉澤デンタルクリニック行徳』の杉澤幹雄(日本歯周病学会認定医)と申します。
お仕事や趣味に取り組んでいる時に歯ぎしりくいしばりをしていることに気づかれたことがある方はいらっしゃいませんか?また、睡眠中に歯ぎしりしていることを指摘された方もいると思います。その歯ぎしりやくいしばりは歯周病をさらに悪化させたり、治癒を妨げたりする恐れがあります。
今回は歯ぎしりとくいしばりが歯周病を悪化させることについて書いていこうと思います。

 歯ぎしり・くいしばりとは?

歯ぎしりやくいしばりは口腔習癖の一つである咬合習癖であり、ブラキシズムと呼ばれます。咀嚼するための筋肉が異常に緊張し、食べたりしゃべったりなどの機能的な運動とは関係なく、上下の歯を無意識に咬合させる習癖です。

【歯ぎしり】

歯ぎしりは専門用語でグラインディングといいます。上下の歯を強くかみしめた状態で更に横に動かすことで上下の歯を擦り合わせるような咬合習癖です。ギリギリと音がするため周囲の人に気づかれることもあります。覚醒時よりは睡眠中に行ってしまうことが多い咬合習癖です。

【くいしばり】

くいしばりはクレンチングといいます。上下の歯を動かすことなく強くかみしめる咬合習癖です。動かさないため音がなく、気づかれにくい特徴があります。意識的に噛む咬合力の数倍の力がかかると言われ、咬合習癖の中では歯周病を最も悪化させる恐れのある習癖です。覚醒時の仕事や何かに集中している時などに無意識にかみしめていることが多いと言われています。

 歯ぎしり・くいしばりの原因

歯ぎしり・くいしばりの明らかな原因はまだ解明されていません。しかし、様々な研究よりいくつかの原因が考えられています。ストレスも歯ぎしりやくいしばりを引き起こす原因として考えられています。すべての歯ぎしり・くいしばりがストレスと関係しているとは限りませんが、睡眠中の歯ぎしり・くいしばりがストレスとの関連性が報告されています。
他に遺伝的な要因やアルコール、薬の副作用など多くの原因が考えられ、またそれぞれが多様に関連して歯ぎしりやくいしばりを引き起こすことが考えられています。

 歯ぎしり・食いしばりの兆候

〇上下の歯の咬む面が擦り減っていて、平らになっている。
〇歯に亀裂が入っている
〇歯の歯茎に近い部分がえぐられている、または歯がしみる
〇意識的に歯ぎしりしてみると上の歯が動揺する
〇下あごの内側(ベロ側)に硬い隆起がある(骨隆起)
〇上あごの中央部分に硬い隆起がある(骨隆起)
〇上下の歯がかみ合わさる部位に相当する頬の裏の粘膜に白い筋がある
〇ベロの側縁に歯型の圧痕がある
〇顎のエラが強く発達している
〇顎の関節が痛む、または大きくお口を開けると痛い

 歯ぎしり・くいしばりが歯周病を悪化させる要因

歯周病の原因はプラーク中に含まれる歯周病原細菌です。よって歯ぎしりやくいしばりが直接歯周病の原因になることはありません。しかし、歯ぎしりやくいしばりは歯周病の進行を早めてしまうのです。
歯周病を急速に増悪させる重要な因子に外傷性咬合があります。外傷性咬合とは歯周組織に外傷性の変化をもたらす咬合です。歯ぎしりやくいしばりもこの外傷性咬合に含まれ、
歯ぎしりやくいしばりによる長時間に及ぶ過度な歯牙への負担は歯だけでなく、歯を支える歯周組織に対しても大きな影響が及びます。
ブラキシズムが歯周炎に併発すると、短期間に歯周病が重度化し歯周組織の非可逆的な破壊が生じる恐れがあるのです。
通常、一日の中で上下の歯が接触するのは三食のお食事中や会話の時などです。それもその時の咬む力は強くありません。また、意識的に噛む力の強さは数キロからせいぜいご自身の体重ぐらいです。それが無意識な咬む力はその数倍と言われています。睡眠中など休まなければならない環境で、ものすごい力が長時間歯牙や歯周組織に負担がかかることになります。

 歯ぎしり・くいしばりの治療法

歯ぎしりやくいしばりは歯周病を増悪させるだけではありません。ブラキシズムによって歯周病の悪化だけではなく、歯牙の破折や摩耗、顎関節症、頭痛、肩こりなど全身的な問題を引き起こします。よって、歯周病になっていなくても歯ぎしりやくいしばりがある場合は治療が必要です。
治療の基本は歯ぎしり・くいしばりの原因を取り除くことです。局所的な原因として、かみ合わせが悪く強く咬んでいる部位があるようなら、そこが原因で気になり無意識に歯ぎしり・くいしばりを起こしている可能性があるため、かみ合わせの調整(早期に接触するような部位だけ)が必要になります。また、全身的な原因としてストレスがあるようであれば、そのストレスを緩和するかストレスに強くなるようにする必要がります。
しかし、歯ぎしり・くいしばりの原因や成り立ちは完全に解明されたわけでもなく、また様々な原因が関与している可能性もあります。個人差もあり、「これをすれば治る!」というような治療法がないのが現状です。
そこで最初から広範囲の歯を削ったりするような不可逆的な治療は控え、マウスピースを装着し、無意識に咬合習癖があったとしても歯や歯周組織に過度な負担がかからないようにします。

 まとめ

歯ぎしりやくいしばりは歯周炎に併発することにより、早期に歯周病を重度化してしまう恐れがあります。しかし、歯ぎしりやくいしばりは無意識または睡眠中の環境下でしてしまうため、なかなか改善しにくい習癖です。
歯ぎしりやくいしばりの自覚や指摘があるようであれば、歯ぎしりやくいしばりの原因を除去もしくは対症療法を行い、歯周病の急速な進行を防ぐ必要があります。日本歯周病学会の専門医/認定医の在籍する歯科医院にて歯周病の定期的な検査や歯ぎしりくいしばりの治療を行うことをおすすめ致します。

この記事の監修歯科医師