歯茎が白くなる原因ってなに?
みなさんこんにちは。日本歯周病学会専門医・歯学博士の武内崇博と申します。
お口は健康のバロメーターといわれています。口腔内には700種類を超える細菌が互いにネットワークを築き、棲み着いています。歯肉は通常薄いピンク色をしていますが、赤く腫れたり、白くなったりと病態により様々な色の変化をします。今回は特に歯茎が白くなる原因についてまとめてみたいと思います。
執筆歯科医師:
武内 崇博(みなきたデンタルクリニック)
歯肉とは?
歯を支える組織は歯周組織とよばれ、歯肉・歯を支える歯槽骨・歯と歯槽骨を繋げる歯根膜とよばれる靭帯・歯の根を覆うセメント質の4つから構成されています。歯茎は俗称で歯肉が正式名称です。歯肉は歯や歯槽骨を覆う粘膜組織の一部で、表面の上皮と内部の結合組織から構成されています。通常は薄いピンク色をしており、役割として細菌やその毒素が体内に侵入するのを防ぐ、歯と歯肉がぴったりと接合する、ものをかんだときに加わる力から組織を守る、などがあります。歯肉は血管の豊富な組織であるため、健康状態が色調などの変化として如実に現れます。その変化は赤くなったり白くなったり様々で、特に白く変化するものは原因となる疾患が数多く存在するため以下にまとめていきます。
歯茎が白くなる疾患まとめ
特殊な歯肉炎
歯肉炎は通常歯肉が赤く腫れることを主徴候としていますが、“壊死性潰瘍性歯肉炎”は特に歯間部の歯肉が壊死に陥り潰瘍を形成した結果、激しい痛みを伴います。白濁した壊死性歯肉と出血と激しい疼痛を特徴としています。栄養状態やストレスに関連しているといわれ、HIV感染症患者や白血病患者の口腔内にも認められます。確定的な原因は不明ですが、口腔清掃の徹底やうがい薬の処方をまず行い症状改善を図ります。
瘻孔・フィステル・サイナストラクト
歯の根元付近の歯肉がニキビのように膨れている状態です。根尖性歯周炎(歯の根元に起きる炎症)、歯根破折、歯周病などが原因で歯の根元に細菌が繁殖することで膿が貯まり、骨内に貯まった膿の排出孔になることで生じます。自壊して膿が出ると痛みを感じることは少なく、腫れと寛解を繰り返しますが根本の原因解決にはならないため、原因に応じた治療が必要です。
口内炎
口内炎は口の中やその周辺の粘膜に起こる炎症の総称です。多くは接触痛を伴い、一つあるいは複数できます。最も多く発生するのが“アフタ性口内炎”とよばれるもので、白や黄色の膜で覆われた米粒大の潰瘍ができ、食事の際にしみるような症状や接触痛を伴います。栄養バランスや食生活の乱れにより抵抗力が低下しることで粘膜が弱り、物理的な刺激により発生すると考えられています。栄養摂取、休息、口内炎用の軟膏を塗布することで改善します。
口腔カンジタ症
カンジタ・アルビカンスとよばれる真菌によって起こる感染症です。急性期ではガーゼなどで拭うことができますが、慢性化すると剥離しにくく肥厚していく傾向があります。カンジタ菌は口腔内常在菌の一つに数えられ普段は菌数が増えすぎないようにその他の菌と共存しています。しかし免疫の低下や唾液の減少などにより、常在菌感のバランスが崩れ、カンジタ菌が異常増殖することで病原性を発揮することで発症します。口腔内の清掃やうがい薬、場合によっては抗真菌薬の内服を行います。
扁平苔癬
角化性で炎症を伴う難治性の疾患です。頬粘膜、歯肉、口唇に好発します。接触痛や食物がしみるような症状があります。まれに癌化することがあるため注意深い観察が必要です。正確な原因は不明ですが、金属アレルギーが関係しているといわれています。軟膏の塗布を行いますが、口腔内に充填されている金属を除去することで改善するケースもあります。
白板症
口腔粘膜、特に歯肉や頬粘膜・舌に発生する白色病変で前癌病変(正常な組織より癌化する恐れのある形態的な変化を伴う疾患)とよばれています。喫煙やアルコールによる刺激、合わない義歯などによる慢性の機械的刺激、ビタミンAやBの不足、さらに加齢や体質なども関係するといわれています。長期的に見て癌化する恐れもあるため、注意深く経過観察が必要です。
歯肉癌
歯肉に発生する癌で、粘膜の上皮から発生します。発生する部位や病期により症状はさまざまですが、白斑型といい歯肉が白く変化する型もあるため気になる場合は早めの歯科受診をおすすめします。喫煙、慢性的な機械刺激が原因と考えられています。場合によっては骨も含め大きく切除しなくてはならない場合もあります。
ウィルス性疾患
手足口病やヘルパンギーナ、ヘルペスなどの症状の一つとして口腔内に小さな白い水疱が多数生じ、激しい痛みを伴います。発熱などの症状も伴うため医科への受診をおすすめします。
まとめ
今回は歯肉が白く変化する疾患をまとめてみましたがいかがでしたか。歯肉は疾患によっては赤く変化したり、黒く変化したり様々な様相を呈します。日頃よりセルフケアの徹底と定期的歯科受診により、虫歯・歯周病以外の口腔内に生じる疾患を予防することができることがお分かりいただけたかと思います。しばらく歯科受診を受けていない方は一度歯科を受診してみませんか?