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抜歯即時インプラントのリスクとは?リスクを抑える方法も紹介!

 公開日:2025/09/11
抜歯即時インプラント リスク

抜歯即時インプラントは、歯を抜いたその場でインプラント体を埋入する治療法で、治療期間を短縮できるというメリットがあります。一方で、抜歯即時インプラントにはリスクも伴います。

本記事では抜歯即時インプラントのリスクについて以下の点を中心にご紹介します。

  • 抜歯即時インプラントとは
  • 抜歯即時インプラントのメリット
  • 抜歯即時インプラントのデメリット

抜歯即時インプラントのリスクについて理解するためにもご参考いただけますと幸いです。ぜひ最後までお読みください。

松浦 明

監修歯科医師
松浦 明(歯科医師)

プロフィールをもっと見る
職場
医療法人 松栄会 まつうら歯科クリニック

出身大学
福岡歯科大学

経歴
1989年福岡歯科大学 卒業
1991年松浦明歯科医院 開院
2020年医療法人松栄会まつうら歯科 理事長就任

資格
厚生労働省認定研修指導医
日本口腔インプラント学会認定医
ICOI (国際インプラント学会)Fellowship認定医

所属学会
ICOI(国際口腔インプラント学会)
日本口腔インプラント学会
日本臨床歯科学会(SJCD) 福岡支部 理事
日本顎咬合学会 会員
日本臨床歯科CAD/CAM学会(JSCAD)会員

抜歯即時インプラントの概要

抜歯即時インプラントの概要 抜歯即時インプラントとはどのようなものなのでしょうか?従来のインプラント治療との違いについても解説します。

抜歯即時インプラントとは

抜歯即時インプラントとは、歯を抜いたその直後に、空いた穴(抜歯窩)にインプラントを埋入する治療法のことです。抜歯即時インプラントでは、抜歯とインプラントの埋入を同時に行うため、治療期間が短縮され、また抜歯後の骨吸収が抑えられます。“即時埋入”とも呼ばれ、患者さんの生活の質(QOL)の向上に寄与するインプラント治療のひとつです。

ただし、すべての症例に対応できるわけではなく、患者さんの顎骨の状態や歯周組織の健康状態によっては、抜歯即時インプラントが行えないこともあります。

抜歯即時インプラントと通常のインプラント治療の違い

前項で述べたように、抜歯即時インプラントは、歯を抜いたその場でインプラント体を埋入する治療法です。通常のインプラント治療では、抜歯後に数ヶ月の回復期間を待ち、顎骨が安定した後にインプラント体を埋入します。これに対して、抜歯即時埋入では、抜歯とインプラント埋入を同時に行うため、手術回数が少なく、治療期間も短くなります。

従来のインプラント治療では、治癒の過程で数回の手術が必要となり、治療が長引くことがあります。対して、抜歯即時インプラントは手術が1回で済み、患者さんの身体的、精神的負担が軽減されます。しかし、抜歯即時インプラントでは顎骨の補填や移植が必要な場合もあり、その分費用が追加されることがあります。

治療期間についても、通常のインプラント治療に比べて抜歯即時インプラントは治療完了までの期間が3〜6ヶ月程度と短く、見た目を早く改善したい方や忙しい方に合う選択肢といえるでしょう。

抜歯即時インプラントのメリット

抜歯即時インプラントのメリット 抜歯即時インプラントにはどのようなメリットがあるのでしょうか? 以下で解説します。

抜歯後すぐにインプラントを埋入できる

繰り返しになりますが、従来のインプラント治療は、歯を抜いた後は、傷が治癒するまでインプラント体を埋入できません。この待機期間中、歯がないことで食事や会話に支障をきたし、生活に不便を感じることがあります。特に前歯など目立つ部分では、審美的な問題も懸念されます。

しかし、抜歯即時インプラントでは、歯を抜いた当日にインプラント体を埋め込むため、 治療の期間を短縮できます。そのため、見た目の改善が早く、食事や会話にも影響が少ないとされています。さらに、即時に仮歯の装着ができるため、生活やコミュニケーションに支障を与えることも少なく、早期にもとの生活に戻ることができます。

歯茎を切開しない

従来のインプラント治療は、歯茎を切開してインプラントを埋め込む必要があります。このため、手術後に痛みや腫れが生じることがあり、食事や会話などの日常生活に一時的な支障が出ることもあります。しかし、抜歯即時インプラントでは歯茎を切開せず、抜歯後にできた穴にそのままインプラントを埋めるため、新たに傷を作ることはありません。そのため、従来のインプラント治療に比べて術後の痛みや腫れが少なく、治療後の回復も早い点が特徴です。

治療期間や手術回数を抑えられる

抜歯即時インプラントは、歯を抜いたその日にインプラントを埋め込むため、従来のインプラント治療に必要な数ヶ月にわたる治癒期間を短縮できます。従来のインプラント治療では、抜歯とインプラント埋入が別々に行われるため、2回以上の手術が必要となります。しかし、抜歯即時埋入では、1回の手術で完了するため、手術回数を抑えられるだけでなく、治療期間も短縮されます。

治療後の回復期間は、個人差がありますが、3〜6ヶ月程度です。インプラント体が顎骨と結合するのを待ち、治癒が進んだ段階で、上部構造を装着して治療が完了します。

顎骨の状態や治癒の進行によっては、治療期間が延びることもありますが、それでも従来の方法と比べると治療のスピードは早く、患者さんの負担を軽減します。

骨が痩せにくい

歯を抜いた後は、歯槽骨は次第に吸収され、顎骨が痩せていくことがあります。顎骨の吸収は、口腔機能に悪影響を及ぼすだけでなく、インプラントの安定性にも関わる重要な問題です。しかし、抜歯即時インプラントでは、歯を抜いたその場でインプラントを埋め込むため、顎骨が痩せるリスクを回避できます。

インプラント体を早期に埋入することで、抜歯後の歯槽骨の安定性が保たれ、顎骨の吸収が抑えられます。これにより、インプラントの成功率が高まり、長期的に安定した状態の維持ができます。逆に、インプラント埋入までの期間が空くと、顎骨の吸収が進んでしまうため、手術の際に追加の骨移植が必要となる場合もあります。

抜歯即時インプラントのデメリットやリスク

抜歯即時インプラントのデメリットやリスク ここまで抜歯即時インプラントのメリットについて解説してきました。 以下では、抜歯即時インプラントのデメリットやリスクについて解説します。

治療できないケースがある

抜歯即時インプラントは、すべての患者さんに適用できるわけではありません。抜歯即時インプラントは、顎の骨の状態や歯周組織の健康に対して一定の基準を満たす必要があります。なかでも、顎骨の量や質が不十分な場合や重度の歯周病がある場合には、インプラント体を埋入するのが難しくなることがあります。

また、抜歯した場所の状態や歯周囲の感染の程度も重要なポイントです。歯を抜いた場所に感染が広がっている場合や周囲に歯周病が進行している場合、インプラント埋入は成功しにくくなります。さらに、顎骨が十分にない場合や噛み合わせが悪い場合、歯ぎしりや食いしばりの癖がある場合も、インプラントが安定せず、抜歯即時埋入を行うことが難しくなります。

細菌感染のリスクがある

抜歯即時インプラントは、歯を抜いた直後にインプラント体を埋入するため、傷口が治癒していない状態で手術が行われます。このため、細菌感染のリスクが高くなる可能性があります。さらに、抜歯の原因が歯周病などの細菌感染による場合、抜歯した部位に残った細菌がインプラント埋入部分に広がり、感染を引き起こす恐れがあります。

感染が発生すると、痛みや腫れなどの症状が現れることがあり、インプラント治療の失敗につながることもあります。しかし、近年では炎症部分を徹底的に除去する技術や、厳格な滅菌手法が確立されており、感染のリスクは低減されています。とはいえ、従来のインプラント治療と比べて、感染リスクが多少高くなります。

食事の制限がある

抜歯即時インプラント後に仮歯を装着する場合、インプラントが顎骨と結合するまでの一定期間、食事に制限が生じます。手術直後は、インプラントに過度な負担をかけないよう、硬い食べ物を避け、やわらかい食事を摂ることが推奨されます。インプラント体がまだ安定していないため、食事内容に注意を払いながら、治療部位の負担を軽減することが大切です。 また、できるだけ治療をしていない方の歯で噛むように心がけるといいでしょう。

対応できる歯科医院探しが難しい

抜歯即時インプラントは、高度な知識と技術を要する治療法であり、すべての歯科医院が対応できるわけではありません。成功するためには、抜歯後の歯茎の状態をしっかりと評価し、適切な場所にインプラント体を埋入することが重要です。このため、豊富な経験と専門的なスキルを持つ歯科医師が必要です。

さらに、場合によっては顎の骨の状態に応じて骨移植が必要になることもあります。そのため、インプラント治療に精通した歯科医師の判断が不可欠です。従来のインプラント治療に慣れた歯科医師でも、抜歯即時インプラントには特別な技術と知識が求められます。

こうした理由から、抜歯即時インプラントに対応している歯科医院探しを近隣エリアだけで行う際は、難航することがあります。

費用が高額になりやすい

抜歯即時インプラントは、保険適用外の治療であるため、費用が高くなる傾向があります。特に、インプラント体の埋入と同時に骨移植が必要な場合、追加費用が発生するため、治療の総額がさらに増加することがあります。

また、抜歯とインプラント埋入を同時に行うため、手術時間が長くなる場合があり、これも費用が高額になりやすいです。ただし、治療期間が従来の方法より短縮されるため、最終的なトータルコストが従来のインプラント治療とそれほど変わらないこともあります。費用の面でも治療方法を選ぶ際には十分な検討が必要です。

抜歯即時インプラントのリスクを抑えるには

抜歯即時インプラントのリスクを抑えるには 抜歯即時インプラントの術後には、いくつかの重要な注意点があります。

まず、手術当日は安静を保つことが大切です。激しい運動や過度の身体的負荷は避け、無理をせずに休養をとりましょう。また、手術部位を手や舌で触れないように注意してください。触れることで感染のリスクが高まり、治癒に悪影響を及ぼす可能性があります。

食事に関しては、前述したように、手術部位に負担をかけないよう、反対側の歯で食べることをおすすめします。最初はやわらかい食べ物から始め、徐々に普段の食事に戻しましょう。さらに、喫煙や飲酒は治癒を遅らせるため、控えることが重要です。また、痛みや腫れが強くなった場合は、我慢せずにすぐに歯科医院に相談してください。

さらに、インプラントが長持ちするためには、術後の定期的なメンテナンスが欠かせません。インプラント周囲の清掃や定期検診を行い、口腔内の健康を維持することが大切です。定期的にメンテナンスに通うことで、インプラントの寿命を延ばし、トラブルを防ぐことができます。

最後に、インプラント治療は、生涯にわたるケアが必要です。術後も専門的なクリーニングや検診が重要であり、これらのメンテナンスを怠るとインプラント周囲炎や骨吸収などの問題が起こり、インプラントの寿命が短くなる可能性があります。

抜歯即時インプラントが適応できる条件

抜歯即時インプラントが適応できる条件 抜歯即時インプラントは外科手術を伴うため、全身的および局所的なリスクを考慮する必要があります。全身的には、成長中の子どもや、重度の心疾患、糖尿病などのコントロールが不十分な疾患がある場合は手術が難しいことがありますが、病状が管理されていれば治療は可能とされています。以下で詳しく解説します。

インプラントを固定できる骨量がある

インプラントを安定して固定するためには、十分な量と厚さの顎の骨が必要です。もし顎の骨が不足している場合、インプラントと顎骨がしっかり結びつかず、治療が失敗するリスクが高まります。

重度の歯周病やむし歯がない

抜歯即時インプラントを行うためには、歯周病や深刻なむし歯がないことが重要です。歯周病が進行すると、歯を支える顎骨や周囲の組織が破壊され、結果的に歯を抜かざるを得ない状態になります。また、歯周病が重度に進行すると、インプラントが安定しない原因となり、治療が難しくなります。

全身状態がよい

抜歯即時インプラントの手術を行ううえで、患者さんの全身状態が良好であることが重要です。糖尿病や高血圧などの持病がある場合、治療前にこれらの病気が適切に管理されていないと、術後の合併症のリスクが増加し、治療が困難になる可能性があります。特に、糖尿病は治癒力を低下させ、口腔内での感染リスクを高めます。

また、妊娠中や腎疾患、喫煙などもインプラント治療に影響を与える場合があります。妊娠中は、出産後に治療を行うことが推奨され、喫煙はインプラント周囲炎を引き起こすリスクを高めるため、禁煙がインプラント成功のためには重要です。

まとめ

まとめ

ここまで抜歯即時インプラントのリスクについてお伝えしてきました。抜歯即時インプラントのリスクについての要点をまとめると以下のとおりです。

  • 抜歯即時インプラントとは、歯を抜いたその直後に、空いた穴(抜歯窩)にインプラント体を埋入する治療法のこと
  • 抜歯即時インプラントのメリットは、抜歯後すぐにインプラント体を埋入できることにより顎骨の吸収を抑えられること、歯茎を切開しないこと、治療期間や手術回数を抑えられることなどが挙げられる
  • 抜歯即時インプラントのデメリットは、治療できないケースがあることや、食事の制限があること、対応できる歯科医院探しが難しいことなどが挙げられる

抜歯即時インプラントはさまざまなメリットがありますが、手術後の感染や治癒不良、インプラントの安定性が確保されない可能性など、デメリットやリスクも伴います。安全な治療を受けるために、リスク管理を徹底し、無理なく治療を進めていきましょう。

これらの情報が少しでも皆さまのお役に立てば幸いです。最後までお読みいただき、ありがとうございました。

この記事の監修歯科医師