マウスピース型矯正中に運動しても大丈夫?避けたほうがよい運動や上手に運動するコツとは
公開日:2025/09/10

マウスピース型矯正をしていると「運動してもよいの?」と気になる方も少なくありません。 実は注意点さえ押さえれば、無理なく身体を動かすことができます。ただし、避けた方がよい動きやトラブルもあるので油断は禁物です。 この記事では、運動時のコツやマウスピース型矯正中に気をつけたいポイント、ケアの方法まで解説します。

監修歯科医師:
小田 義仁(歯科医師)
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小田歯科・矯正歯科
院長 小田 義仁
岡山大学歯学部 卒業
広島大学歯学部歯科矯正学教室
歯科医院勤務をへて平成10年3月小田歯科・矯正歯科を開院
所属協会・資格
日本矯正歯科学会 認定医
日本顎関節学会
日本口蓋裂学会
安佐歯科医師会 学校保健部所属
広島大学歯学部歯科矯正学教室同門会 会員
岡山大学歯学部同窓会広島支部 副支部長
岡山大学全学同窓会(Alumni)広島支部幹事
アカシア歯科医会学術理事
院長 小田 義仁
岡山大学歯学部 卒業
広島大学歯学部歯科矯正学教室
歯科医院勤務をへて平成10年3月小田歯科・矯正歯科を開院
所属協会・資格
日本矯正歯科学会 認定医
日本顎関節学会
日本口蓋裂学会
安佐歯科医師会 学校保健部所属
広島大学歯学部歯科矯正学教室同門会 会員
岡山大学歯学部同窓会広島支部 副支部長
岡山大学全学同窓会(Alumni)広島支部幹事
アカシア歯科医会学術理事
目次 -INDEX-
マウスピース型矯正中に運動しても大丈夫?
マウスピース型矯正中でも、運動を続けることは基本的に問題ありません。実際にプロ野球選手などのトップアスリートのなかにも、マウスピース型矯正をしながら競技に取り組んでいる方がいます。
ワイヤー矯正では衝撃によって唇や頬の内側を傷つけてしまうケースがありますが、マウスピース型矯正は滑らかなプラスチック素材でできており、口腔内を傷つけにくいのが特徴です。
接触しやすいスポーツや部活でも外す必要はなく、そのままプレーを続けることができます。
マウスピース型矯正中に避けた方がよい運動やスポーツ
マウスピース型矯正は多くの運動に対応できますが、すべてに危険がないわけではありません。
特に激しいコンタクトがある競技や、ボールやラケットが口元に向かって飛んでくるスポーツでは注意が必要です。
また歯を強く食いしばりやすい運動や、顎や頭部に大きな力がかかる種目も、装置や歯に負担をかける可能性があります。
スムーズな治療を続けるために、運動の種類に応じた配慮を解説していきます。
激しいコンタクトスポーツ
ラグビーやアメフト、柔道、格闘技のように顔面に強い衝撃が加わるスポーツではマウスピースが破損するリスクや歯列矯正の進行に影響が出るおそれがあります。 そのため、場合によっては一時的にマウスピースを外すか、マウスガードの併用をおすすめします。 スポーツ時も歯列矯正治療を続けるためには、競技の特性に合った対策が大切です。ボールが飛んでくるスポーツ
バレーボールやバスケットボール、野球、サッカーなどの競技では、予期せぬタイミングでボールがお顔に飛んでくることがあります。 特にマウスピース型矯正治療中は、こうした衝撃によってマウスピースの破損や口腔内を傷つけるおそれがあるため注意が必要です。 マウスピース型矯正は滑らかで安全性が高いとされていますが、それでも強い衝撃が加われば装置がずれたり、歯に不要な負荷がかかったりする可能性があります。 特にサッカーやバレーボールなどはお顔への接触が多く、歯列矯正中のプレーはあまりおすすめできません。 また、衝撃でマウスピースが破損すると治療のスケジュールが狂う原因にもなります。どうしても競技を続けたい場合は、マウスガードを併用するなどしっかりとした対策が大切です。ラケットを使用するスポーツ
テニスやバドミントン、卓球などのラケット競技は、基本的に身体の接触が少ないためマウスピース型矯正中でも安全性の高い競技です。ただし、注意すべき点もいくつかあります。
ラリー中や瞬発的な動きの際、無意識に歯を強く噛みしめてしまうことがあり、この動作がマウスピースに負荷をかける原因です。その結果、マウスピースがずれたり破損したりするおそれがあります。
特に激しいレベルでプレーをしている方は力の入れ方に注意が必要です。また、長時間の運動で口呼吸が増えるとお口のなかが乾燥しやすくなり、マウスピースが不快に感じられることもあります。
さらに、テニスなどではボールが予期せぬタイミングでお顔に当たる可能性もあるため、安全性を高めたい場合はマウスガードの使用を検討するとよいでしょう。
顎や頭部に力がかかるスポーツ
クライミングや器械体操のように、顎や頭部に強い力がかかるスポーツは見た目以上に口元へのリスクが潜んでいます。 転倒や転落の際にお顔を打つことがあり、マウスピースを装着しているとその衝撃が歯や口腔内にダイレクトに伝わる可能性があります。特に前歯が出ている方や歯列矯正中の子どもは衝撃を受けやすく、装置の破損や口腔内のケガにつながりやすいようです。 こうしたスポーツを行う際はマウスピースの有無によってケガの程度が大きく変わることがあります。接触が少ない種目であっても、安全性対策としてマウスガードを装着するのがおすすめです。歯を食いしばる負荷が高い運動
スクワットやベンチプレス、デッドリフトなどのウェイトトレーニングでは、瞬間的に強く歯を食いしばる場面が多く見られます。
この動作はマウスピース型矯正装置に強い圧力をかけてしまい、装置のひび割れや変形の原因になることがあります。装置が破損すると、治療の進行にも影響が出るため注意が必要です。
日頃からトレーニングを行っている方や、ジムでの運動が習慣化している方は、マウスピース型矯正治療と運動の両立を担当の歯科医師に相談しておくとよいでしょう。
【マウスピース型矯正】運動中のトラブルと対処法
運動中にうっかりお顔をぶつけてしまったり、強く歯を食いしばってしまったりすると、マウスピースが割れたり変形したりすることがあります。
また、ずれた装置がお口の内側に当たり、擦れて痛みを感じることも少なくありません。
せっかくの歯列矯正治療を台なしにしないためにも、トラブルが起きたときの正しい対処法を知っておくことが大切です。ここでは、よくある症状とその対処方法をわかりやすく紹介します。
マウスピースが割れたり変形したりした場合
マウスピースが破損すると歯にフィットせず浮いてしまい、歯列矯正力が正しくかからなくなるだけでなく、予期しない部分に力が加わることもあります。 また口腔内を傷つけるリスクもあるため、異常を感じた際は無理に使い続けず、すぐに対応しましょう。 まずは破損の状態を確認し、軽い欠けなどであれば一時的に使用できる場合もありますが、変形があるときは装着を控えましょう。そしてできるだけ早く歯列矯正を担当している歯科医院に連絡を取り、指示を受けましょう。 もし前のステップのマウスピースを保管している場合は、受診までの間それを装着することで治療の遅れを防げることもあります。 どのような小さなトラブルでも放置せず、早めの対応が大切です。お口の中の痛みや擦れを感じた場合
運動中にお口のなかに痛みや擦れを感じることがあります。これは接触プレーがあるスポーツに限らず、どのような運動でも起こりうることです。 激しく動くことで口腔内が乾燥しやすくなり、マウスピースとの摩擦が増すと、粘膜が刺激を受けて違和感や軽い炎症を引き起こすことがあります。 こうしたトラブルを防ぐためには、こまめに水分補給をして口腔内の潤いを保つことが大切です。 また、運動後や入浴後など身体が温まり血流がよくなるタイミングでは、炎症による痛みが強く出ることもあります。そのようなときは、痛みのある部分を氷や保冷剤などで軽く冷やすと炎症が落ち着きやすくなります。 もしマウスピース装着中に強い違和感や継続する痛みを感じた場合は、すぐに使用を中止し、無理をせず歯科医師に相談しましょう。【マウスピース型矯正】治療中も上手に運動するコツ
マウスピース型矯正をしながら運動を楽しむには、いくつかのポイントを意識することが大切です。激しい呼吸や食いしばりによって装置がずれたり、壊れたりすることがあるため注意しましょう。
ここでは、マウスピース型矯正中にも運動を楽しむために意識すべき点を解説していきます。
運動中の口腔内の乾燥を防ぐ
マウスピース型矯正中に運動をすると、激しい呼吸や発汗の影響でお口のなかが乾燥しやすくなります。乾燥を防ぐためには、こまめな水分補給が欠かせません。 しかし、マウスピースを装着したまま水以外の飲み物を摂ることはできないため、水分補給の機会が減ってしまう方もいます。お茶には唾液の分泌を抑える作用があるため、できるだけ純粋な水を選ぶようにしましょう。 運動中に関わらず、マウスピース型矯正中は無意識のうちに口呼吸になることがあり、これも乾燥を助長します。運動中は特に意識して鼻呼吸を心がけると、口腔内の湿度を保ちやすくなります。激しい呼吸や食いしばりによる破損やズレに注意する
マウスピース型矯正中の運動では、激しい呼吸や無意識の食いしばりによってマウスピースがずれたり破損したりする可能性があります。 マウスピース型矯正治療では1日20時間以上の装着が求められており、装置を安定した状態で使い続けるためにも咬合への負担を避ける工夫が大切です。 運動中は特に、奥歯に強い力が加わりやすく食いしばりによって歯や装置にダメージを与えるリスクがあります。成人男性の奥歯には、噛みしめ時に100kgもの力がかかるという研究もあり、日常のトレーニングや作業でも油断はできません。 また、噛み合わせが一時的に不安定な歯列矯正中は一部の歯に負荷が集中するため、破損を招くこともあります。水分補給のときはマウスピースを外す
運動中の水分補給はとても大切ですが、マウスピース型矯正中は飲み物の選び方に注意が必要です。基本的に水などの糖分を含まないものであれば、装着したままでも問題ありません。
しかし、スポーツドリンクやジュース、甘い炭酸水などはマウスピースを外してから飲むようにしましょう。
糖分や酸がマウスピースと歯の間に残るとむし歯や歯周病のリスクが一気に高まります。
また、色の濃い飲料はマウスピースに着色してしまうおそれもあります。透明であってもフレーバー付きの水には糖類が含まれていることがあるため、成分表示の確認も忘れないようにしましょう。
飲んだ後は、お口をゆすぐ、もしくは歯磨きをしてからマウスピースを装着するのが理想です。
見た目の清潔感を保ちつつ、むし歯や着色トラブルを防ぐためにも、日々の水分補給の方法を工夫していきましょう。
運動中に痛みや違和感を感じたら外す
これまで前述してきたように、運動中にお顔にボールや運動器具が当たってしまったり、歯を食いしばってしまったりすることがマウスピースが割れたり変形したりすることにつながります。 それによってお口のなかにマウスピースが当たり、痛みが生じることもあります。 マウスピースに不具合や痛みを感じたときは速やかにマウスピースの装着を中止しましょう。運動中のマウスピース着脱の衛生面に配慮する
マウスピース型矯正では、運動中の着脱にも衛生面での注意が欠かせません。マウスピースは自分で簡単に取り外せる反面、汗をかいた手で触れたり、外した後に洗わず再装着したりすると細菌が繁殖しやすくなります。
装着時間は1日20時間以上が推奨されていますが、スポーツ時のみ外すことも可能です。その際は専用のケースに入れて保管しましょう。
運動後には、口腔内をゆすぐか歯磨きを行い、マウスピースも水や専用クリーナーで丁寧に洗ってから装着します。
運動による発汗や口呼吸によりお口のなかが乾燥しやすくなり、不衛生な状態になりがちです。放置すると、むし歯や歯周病のリスクが高まるため、こまめなケアが必要です。
運動後の装着忘れに注意する
運動後にマウスピースの再装着を忘れてしまうと、マウスピース型矯正治療に悪影響を及ぼす可能性があります。 マウスピースは基本的に1日20時間以上の装着が必要とされており、外したまま長時間放置すると、計画どおりに歯が動かなくなってしまいます。 特に運動後は着替えや水分補給などで気が緩み、つけ忘れるケースが少なくありません。 またティッシュにくるんで机の上に置いたり、カバンのなかに直接入れたりすると、うっかり捨ててしまったり傷や変形を招いたりする原因にもなります。 直射日光や高温にさらされる場所も避けるようにしましょう。 外出時には専用のケースを携帯し、着脱のたびに正しく保管する習慣をつけましょう。慎重な管理がスムーズな治療につながります。運動後のマウスピースのケア方法
運動後にマウスピースを装着する前には、丁寧なケアを行いましょう。汗やほこりが付着しやすい環境では、マウスピースも汚れやすくなります。
清潔を保つためには、水道水でやさしくすすぎ、やわらかめの歯ブラシで軽くこすって洗浄します。なお、研磨剤入りの歯みがき粉は傷の原因となるため使用を避けましょう。
マウスピースは熱に弱いため、熱湯消毒や高温多湿の場所での保管はNGです。特に夏場は直射日光にも注意が必要です。
外出時には専用のケースに入れて持ち歩くことをおすすめします。ティッシュにくるんで保管すると、うっかり捨ててしまうリスクがあるため避けましょう。
また、マウスウォッシュや専用の洗浄剤を併用すると、殺菌・消臭効果も期待できます。
マウスピースが変形したり破損したり、装着したときに違和感がある場合は無理に使わず、早めに歯科医院へ相談しましょう。定期検診を忘れずに受けることも、マウスピース型矯正をスムーズに進めていく秘訣です。
まとめ
マウスピース型矯正中でも多くの運動は可能ですが、激しい呼吸や食いしばりで装置がずれたり破損することがあるため注意が必要です。 水分補給時は外してから飲み、装着の衛生管理や運動後のケアもしっかりと行っていきましょう。万一のトラブル時は無理に使わず歯科医師に相談しましょう。
参考文献




