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「歯周病」があっても『矯正治療』はできる? 知っておきたい判断基準と注意点

 公開日:2026/04/05
「歯周病」があっても『矯正治療』はできる?

歯並びを整えたいと思っていても、歯周病があることで矯正治療をためらっている人も多いのではないでしょうか? かつては「難しい」とされた歯周病がある人の矯正治療も、現在は適切な治療と管理によって可能になっています。ただし、そこには知っておくべき条件や注意点もあるようです。そこで、歯周病がある場合の矯正治療の進め方や注意点について、ブランデンタルクリニックの溝口先生に解説してもらいました。

※2026年1月取材。

溝口 久勝

監修歯科医師
溝口 久勝(ブランデンタルクリニック)

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福岡歯科大学卒業後、広島大学で研修医過程を修了。2024年、地元である広島に「ブランデンタルクリニック」を開業。患者一人ひとりの背景を考慮しながらニーズを的確にとらえ、口腔環境をより健康に、より長く良好に保つための治療を提供している。小児から成人まで対応できる年齢層も幅広く、予防的な要素を含む審美治療への思いは熱い。

歯周病があっても矯正治療はできる? はじめに知っておきたい基本の考え方

歯周病があっても矯正治療はできる? はじめに知っておきたい基本の考え方

編集部

まず、歯周病とはどのような病気なのかを簡単に教えてください。

溝口 久勝先生溝口先生

歯周病はプラーク(歯垢)の中に潜む細菌の感染によって、歯ぐきや歯を支える骨が壊されてしまう病気です。細菌が直接骨を壊すというよりも、細菌を退治しようとする「免疫の仕組み」が働くことで、結果として自らの骨まで壊してしまいます。最初は歯ぐきの腫れや出血から始まりますが、進行すると骨が徐々に破壊され、最終的には歯が抜けてしまいます。自覚症状が乏しく、気づかないうちに進行してしまうのが、この病気の大きな特徴です。

編集部

歯周病があると「矯正治療を慎重に考える必要がある」といわれますが、それはなぜなのでしょうか?

溝口 久勝先生溝口先生

矯正治療は、歯に加わる力によって周りの骨が作り替えられる仕組みを利用して歯を動かします。具体的には、歯が移動する側の骨が溶けて、反対側にできたスペースに新しい骨が作られる工程を繰り返していきます。そのため、歯周病で骨が弱っている状態で無理に歯を動かすと、歯のグラつきがひどくなったり、歯の根っこが短くなったりするリスクが高まります。最悪の場合、歯が抜けてしまうおそれもあるため、慎重な判断が求められるわけです。

編集部

そうすると、やはり歯周病があると矯正治療は受けられないのでしょうか?

溝口 久勝先生溝口先生

かつては、歯周病がある場合は「矯正治療は避ける」というのが一般的でした。しかし現在は、進行度にもよりますが「条件付き」で行えるようになっています。重要なのは、事前にしっかり歯周病の治療を済ませ、状態が安定していることです。適切な歯周病治療を行い、矯正治療中もこまめなケアを継続すれば、必ずしも状態が悪化するわけではないという研究報告もあります。むしろ、矯正治療によって噛み合わせを整えることが、将来的にはお口の健康にプラスとなるケースも少なくありません。ただし、まだ長期的なデータが十分ではない側面もあるため、一人ひとりの状態に合わせた慎重な見極めが必要です。

編集部

歯周病がある人でも矯正治療ができるかどうかは、どのような点を見て判断していますか?

溝口 久勝先生溝口先生

判断のポイントは、現在の歯周病の進行度と、治療によって炎症が落ち着いているかという点です。これらを正確に把握するために、レントゲン検査を必ず行います。たとえ歯ぐきの腫れや出血といった症状がなくても、支える骨が大幅に減っている場合は、歯を動かすことが難しくなります。検査結果をもとに、歯を動かす力に耐えられる骨がしっかり残っているかを、総合的に検討することが大切です。

歯周病の「進行度別」に見る矯正治療のポイント

歯周病の「進行度別」に見る矯正治療のポイント

編集部

歯周病が比較的軽い段階の場合、どのような準備や治療を行ったうえで矯正を始めることが多いのでしょうか?

溝口 久勝先生溝口先生

歯周ポケットが4mm程度で歯の揺れがない軽度の場合は、まず歯ぐきの炎症を落ち着かせることが先決です。具体的には、歯科医院での専門的なクリーニングや歯磨き指導を通じて、原因となる細菌を減らしていきます。こうして炎症が治まり、状態が安定したことを確認したうえで、矯正治療の計画を立てる段階に移ります。実際の治療では、歯に負担をかけすぎないよう、通常よりも慎重に歯を動かしていくのが基本です。

編集部

歯周病が中程度まで進んでいる場合、矯正治療を進めるうえで特に大切にしている考え方や、治療の順序について教えてください。

溝口 久勝先生溝口先生

中程度とは歯周ポケットが4~6mm程度で、歯を支える骨が少し減ってきているものの、歯の揺れが強くない状態です。この段階では、先ほどお話しした基本的なクリーニングに加え、歯ぐきの奥深くにたまった汚れを取り除く処置を優先して行います。そのうえで必要に応じて歯周外科治療などを行い、状態が安定してから矯正治療を検討します。矯正治療を行う際は、部分的に動かしたり、段階を踏んだりしながら、力の強さや方向を細かく調整します。また、「歯磨きがしやすい環境を作る(汚れをたまりにくくする)」こと自体を矯正治療の大きな目的とすることもあります。

編集部

歯周病がかなり進行している場合でも、矯正治療が選択肢になることはありますか?

溝口 久勝先生溝口先生

重度の段階では、歯周ポケットの深さが6mm以上に達し、支えとなる骨も大幅に減少しています。土台がこれほど弱まっていると、広範囲にわたって歯を動かすような矯正治療は現実的ではありません。まずは歯周病治療を最優先に、必要に応じて抜歯や入れ歯、インプラントによる噛み合わせの回復なども含めた、総合的な計画を立てていきます。ここでの矯正治療は、これらの処置を適切に行うための「スペース作り」といった補助的な役割として活用するのが一般的です。なお、すでに多くの歯を失っているような、お口の状態の崩壊が著しい場合には、矯正治療自体が難しいと判断せざるを得ないケースもあります。

歯周病がある状態で矯正するときに知っておきたいリスクと注意点

歯周病がある状態で矯正するときに知っておきたいリスクと注意点

編集部

歯周病がある状態で矯正治療を行うと、どのようなトラブルやリスクが起こる可能性があるのでしょうか?

溝口 久勝先生溝口先生

矯正治療で歯を動かす際、歯の根っこが短くなることがありますが、歯周病がある歯はその影響をより受けやすくなります。加えて、支えとなる骨が少ない状態では、矯正治療による負荷で歯の揺れが大きくなるリスクにも十分な注意が必要です。また、もともと歯周病がある人は、日頃の清掃管理に課題を抱えているケースが少なくありません。装置がつくと汚れはさらにたまりやすくなるため、管理が不十分なままだと一気に状態が悪化してしまうおそれもあります。

編集部

こうしたリスクをできるだけ抑えるために、矯正治療中に歯科医院側が行っている工夫や管理にどのようなものがありますか?

溝口 久勝先生溝口先生

歯周病がある人には、通常よりも弱い力で、段階的にゆっくり歯を動かすことを基本としています。また、矯正治療期間中も定期的にクリーニングを行うほか、歯磨き指導を実施し、お口の清潔を保てるようサポートします。加えて、レントゲンなどの検査で歯の根や骨の状態をこまめに確認し、変化があれば早急に対応できる体制を整えます。お掃除がしやすい装置を選んだり、部分的な矯正にしたりといった工夫も、リスクを抑えるためには非常に重要です。

編集部

歯周病がある人が矯正治療を検討する際、後悔しないために事前に理解しておきたいことがあれば教えてください。

溝口 久勝先生溝口先生

歯周病がある場合、矯正治療は「事前の歯周病検査と治療」というベースがあって初めて進められます。歯周病の状態を正しく評価することなく、矯正治療だけを行うのは安全とはいえません。また、いずれの治療も成功に導くためには、歯科医院での管理だけでなく、患者さんご自身の協力が不可欠です。毎日の歯磨きや装置の管理を含め、「歯周病のケア」と「矯正治療」を両立させる意識がとても重要になります。

編集部

最後に、読者へメッセージをお願いします。

溝口 久勝先生溝口先生

歯周病であっても、適切な治療と綿密なメンテナンスを行えば、矯正治療が可能になるケースは多くあります。ただし、重度の場合は矯正治療だけでなく、歯周病治療に加えて歯を補うための治療とあわせて計画を立てることが重要です。大切なのは、現在のご自身の歯ぐきや骨がどのような状態にあるのかを正しく理解し、歯科医師と一緒に治療に取り組んでもらうことです。時折「矯正だけをしてほしい」と希望する人もいますが、歯周病を無視して矯正治療だけを行うことはできません。まずはご自身の現状をしっかりと把握してもらい、二人三脚でお口の健康を目指してもらえればと思います。

編集部まとめ

歯周病があるからといって、必ずしも矯正治療ができないわけではないことがわかりました。大切なのは、歯周病の進み具合を正しく評価し、事前の治療と継続的な管理を行うことです。状態によっては矯正の目的や方法が限られる場合もあり、歯を補う治療と組み合わせて考える必要があります。まずは現在のお口の状態を正確に知り、歯科医師と相談しながら納得できる治療の選択肢を考えていきましょう。

医院情報

ブランデンタルクリニック

ブランデンタルクリニック
所在地 〒730-0032 広島県広島市中区立町2-1 立町中央ビル4F
アクセス 広島電鉄白島線「八丁堀駅」 徒歩3分
診療科目 歯科
診療時間 10:00~13:00 / 14:00~18:30
休診日 水曜、木曜

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