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「子どもの歯並び」への『早期歯科介入』とは? メリット・デメリットを歯科医が解説

 公開日:2025/12/29
「子どもの歯並び」への『早期歯科介入』とは? メリット・デメリットを歯科医が解説

「子どもの歯並び、気になるけど矯正はまだ早いかも……」。その様子見が、じつは大切な成長の機会を逃しているかもしれないことをご存じでしょうか? 子どもの歯並びは、あごの成長が活発な“ゴールデンエイジ”に適切な対応をおこなうことで、将来必要となる治療の負担を減らせる可能性があります。今回は、歯並びの乱れを未然に防ぐ「早期歯科介入」の重要性について、さくらぎファミリー歯科の櫻木先生に解説してもらいました。

※2025年10月取材。

櫻木 慎也

監修歯科医師
櫻木 慎也(さくらぎファミリー歯科)

プロフィールをもっと見る
広島大学歯学部卒業後、京都府立医科大学附属病院へ入局。大阪の歯科医院勤務を経て、2021年7月に「さくらぎファミリー歯科」を開院。一般歯科からインプラント、審美、矯正に至るまで幅広い治療に対応している。おおやけこども園 / 岩屋こども園アカンパニ連携歯科医院。インビザライン認定ドクター。
所属は日本歯周病学会、日本先進医療機関JIADS(The Japan Institute for Advanced Dental Studies)ほか多数

将来の歯並びを左右する? 成長期におこなう「早期歯科介入」とは

将来の歯並びを左右する? 成長期におこなう「早期歯科介入」とは

編集部

子どもの歯並びにおける「早期歯科介入」とはどのような治療なのでしょうか?

櫻木 慎也先生櫻木先生

歯そのものを動かすのではなく、将来歯がきれいに並ぶための土台をつくることが早期歯科介入の大きな特徴です。具体的には、あごを広げたり形を整えたりしながら、永久歯が正しく並ぶためのスペースを確保します。さらに、指しゃぶりや口呼吸など、歯並びを悪くするクセや習慣の改善にも取り組んでいきます。

編集部

歯を直接動かすのではなく、歯がきれいに並ぶための土台を整えていくのですね。なぜ、早い時期におこなう必要があるのでしょうか?

櫻木 慎也先生櫻木先生

あごの成長は限られた時期にしか促せないため、5~7歳ごろの成長の盛んな時期におこなうのが理想的です。とくに上あごは、この時期にしか広げられない骨のつなぎ目(縫合線)があり、成長の力を利用することであごを広げることができます。一方で、9~10歳を過ぎると成長がある程度落ち着いてしまうため、永久歯が生えそろってから歯を抜いて矯正するケースも増えていきます。そのため、できるだけ早い段階で関わってあげることが大切なのです。

編集部

早期歯科介入では、具体的にどのような治療や指導をおこなうのでしょうか?

櫻木 慎也先生櫻木先生

代表的なものに、マウスピース型の装置とお口周りの筋肉のトレーニングを組み合わせて、歯並びが悪くなる根本の原因に働きかける治療法があります。また、「拡大床(かくだいしょう/写真)」と呼ばれる、ネジを回しながら物理的にあごの幅を広げる装置を使用することもあります。どの装置や治療法を選択するかは、お子さんのお口の状態や成長の度合いに応じて歯科医が判断していきます。

顔つきや睡眠にも影響? 「早期歯科介入」のメリットと注意点

顔つきや睡眠にも影響? 「早期歯科介入」のメリットと注意点

編集部

わりと早い時期から歯科が介入することで、具体的にどのようなメリットがあるのでしょうか?

櫻木 慎也先生櫻木先生

大人の矯正ではスペースを確保するために歯を抜かなければならないことも多いのですが、成長期に介入すれば歯を抜かずに歯並びを整えられる可能性が高くなります。また、成長期に正しい呼吸法や舌の位置、嚥下(飲み込み方)をトレーニングすると、下あごが自然に上あごにあわせて成長し、顔つきの印象がよくなる可能性もあります。さらに近年は、正常な呼吸(鼻呼吸)ができることで睡眠の質が改善し、心身の成長や注意力の改善につながる可能性も指摘されています。

編集部

とはいえ、幼い時期の早期介入はデメリットもありそうですが、これについてはいかがですか?

櫻木 慎也先生櫻木先生

たしかに、5歳ぐらいだとまだ治療の必要性を理解するのは難しい年齢です。そのため、保護者の協力が不可欠なのですが、親御さんが熱心になるあまり、お子さんとの関係がぎくしゃくしてしまうという話もよく耳にします。その点については十分注意が必要ですが、ただ個人的に、早く始めること自体にあまりデメリットは感じていません。

編集部

デメリットは感じないとのことですが、お子さん自身が治療の意味を理解できないと、モチベーションを保つのが難しいように思います。その点についてはどうお考えですか?

櫻木 慎也先生櫻木先生

おっしゃるように、5歳ごろだと集中力や理解力が十分ではないため、最初からうまくいかないことも多いでしょう。しかし、私はこれをデメリットではなく、むしろメリットだととらえています。なぜなら、早く始めるからこそ治療期間に十分な余裕が生まれるためです。トレーニングなども含めていきなり完璧を目指すのではなく、お子さんのペースに合わせて少しずつ進めていけるのが、早期介入の大きな利点と考えています。

いつ・どこに相談する? 早期歯科介入のそのほかのQ&A

いつ・どこに相談する? 早期歯科介入のそのほかのQ&A

編集部

子どもの歯並びに不安のある場合、どのタイミングで歯科医院を受診するとよいでしょうか?

櫻木 慎也先生櫻木先生

早期歯科介入は時期を逃すとできない治療もあるため、できるだけ早い時期に受診することが大切です。目安としては幼稚園から小学校入学前、遅くとも7歳ごろまでに一度相談してみることをおすすめします。この時期に「いつから始めればよいのか」「何歳ぐらいまで待てばいいのか」などのアドバイスを受けておけば、お子さんにとって最適なタイミングに治療を開始することができます。

編集部

その場合、どのようなクリニックを受診するとよいでしょうか? 歯科医院選びのポイントを教えてください。

櫻木 慎也先生櫻木先生

まずは、「子どもの患者さんが多く通っているか」が大きなポイントです。小児の症例を多く扱っている歯科医院は、成長段階に合わせた判断や対応ができます。くわえて「矯正治療の症例数がどれぐらいあるのか」「カウンセリング時に丁寧に説明してくれるか」も重要なポイントです。さらに、お子さんの場合は「通いやすさ」も大切です。月に1回程度の通院が必要になることもあるため、自宅から近くアクセスのよいクリニックを選ぶと通院の負担が少ないでしょう。

編集部

治療を嫌がる・怖がるお子さんに対して、どのような工夫や対応をしていますか? 保護者ができるサポートもあれば教えてください。

櫻木 慎也先生櫻木先生

一番は「褒めること」です。子どもは褒めることで自信がつき、少しずつできることが増えていきます。無理に頑張らせるのではなく、「今日はここまでできたね」と小さな成功を積み重ねていくことが重要です。ご家庭でも「よく頑張ったね」と声をかけてあげることで、お子さんが歯医者さんを嫌がらずに通えるようになります。できない場合も焦らずに、時間をかけて慣れさせていくことが大切です。

編集部

最後に、読者へメッセージをお願いします。

櫻木 慎也先生櫻木先生

お子さんの歯並びは、成長とともにどんどん変化していきます。そのため、「もう少し様子を見てみよう」と思っているうちに、治療の適切なタイミングを逃してしまうことも少なくありません。お子さんの歯並びに少しでも不安を覚えたら、早めに歯科医院で相談して現在の状態や治療の必要性を知ることが大切です。お子さんの将来のためにも、後悔のない選択をしてもらいたいと思います。

編集部まとめ

「早期歯科介入」は歯をきれいに並べるための土台作りであり、将来の抜歯リスクを減らすことにもつながる重要な治療であることがわかりました。治療には保護者のサポートが不可欠ですが、成長という限られた時間の中でしかできないアプローチがあるのも事実です。お子さんの歯並びに少しでも気になることがあれば、「そのうちに治るかも」と様子を見るのではなく、まずは一度歯科医院で相談してみましょう。

医院情報

さくらぎファミリー歯科

所在地 京都府京都市山科区西野山中臣町41-1
診療科目 小児歯科、歯科、歯科口腔外科
診療時間 月火水金 9:00~13:00/14:30~18:30
土日 9:00~13:00/14:00~17:30
休診日 木・祝

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