矯正治療中は虫歯のリスクがあるって本当?矯正治療別の虫歯のリスクや予防方法を詳しく解説します
矯正治療中は、虫歯や歯周病のリスクが高まることをご存知でしょうか。実は、歯に専用の器具を装着する矯正治療中は、器具の部分に食べカスや歯垢が溜まりやすくなります。
また、器具の装着により唾液の分泌量が減り、細菌が繁殖しやすくなることも多いです。
さらに、器具を装着することでお口の隅々まで清潔にすることが難しくなるのも虫歯のリスクを高める原因のひとつです。
今回は、矯正治療別の虫歯のリスクや予防方法について詳しく解説します。
監修歯科医師:
古田 博久(歯科医師)
目次 -INDEX-
矯正治療中は虫歯のリスクがある?
矯正治療中は、器具の装着により歯肉や歯の間に食べカスや歯垢が残りやすくなります。また、それらにより細菌が増殖し、虫歯や歯周病を引き起こす可能性があるため注意が必要です。
そのため、治療開始前に比べ、より日頃の口腔ケアが重要となります。
虫歯が原因で矯正治療できない例
あまりにも虫歯が進行しすぎている場合、矯正治療ができないこともあります。特に、虫歯が歯根部にまで進行している場合には、矯正治療が困難になるケースが多いです。
歯根部の炎症や感染がある場合は、矯正治療を行う前に、まずその炎症や感染を治療しなければいけません。
歯周病が重症化し、歯の根元に炎症が広がっている場合も同様です。その場合にも、歯周病の治療が先になり、矯正治療を行うための準備が必要です。
矯正治療の適応については、歯科医によって判断されます。そのため、矯正治療を考えている場合には、早めに歯科検診を受けることが大切です。
また、虫歯になりやすい食生活や不適切なケア方法を見直す必要もあるでしょう。矯正治療の種類にもよりますが、矯正期間は1〜2年に及びます。
安心して矯正治療を開始するためにも、事前に虫歯治療を受け、虫歯になりにくいセルフケア方法を身につけることが重要です。
矯正治療別の虫歯のリスク
矯正治療といっても、マウスピースを用いるインビザライン矯正から金属の器具を装着するワイヤー矯正まで様々です。ここでは、矯正治療別に虫歯のリスクについて解説します。
インビザライン矯正
インビザライン矯正は、透明のマウスピースを用いて行う矯正方法です。インビザライン矯正では、長時間マウスピースを装着することが必要です。
それにより、口の中が乾燥しやすくなることで細菌が繁殖しやすくなるといわれています。唾液には、口の中を健康に保つための自浄作用があります。
つまり、唾液が食べカスや細菌を洗い流してくれるのです。
しかし、マウスピースの装着により唾液の分泌量が減ると、歯周病や虫歯を引き起こす可能性があります。そのため、定期的な歯科検診や毎日の口腔ケアが重要です。
表側ワイヤー矯正
表側ワイヤー矯正は、歯の表側に金属装置とワイヤーを装着して行う矯正方法です。歯の表側に矯正器具が見えるタイプの矯正方法で、目にしたことがある人も多いのではないでしょうか。
ワイヤー矯正の場合、歯に直接金属の器具を装着するため、基本的には取り外しができません。そのため、矯正装置の金属部分などの細かい部分まで歯磨きができないことがあります。
また、一般的に1~2年の長期で装着する必要があるのも特徴です。磨き残しがあると、その分虫歯のリスクが高くなってしまいます。
この場合、歯科で一時的に矯正装置を外してクリーニングを受ける方法もあります。その他にも、歯科衛生士指導のもと、適切な歯磨きの仕方を身につけたりすることが必要です。
裏側ワイヤー矯正
裏側ワイヤー矯正は、歯の裏側に金属装置とワイヤーを装着して行う矯正方法です。主に、下側の歯列を矯正するために使用されます。
一般的に、歯の裏側は表側に比べて汚れが溜まりにくいという特徴があります。また、歯の裏側は表側に比べて見えにくく、さらに歯ブラシが当てにくいのも難点です。
しかし、歯の裏側には唾液が溜まりやすいため、唾液による自浄作用を受けやすいという特徴があります。
そのため、裏側ワイヤー矯正は表側ワイヤー矯正に比べて、歯周病や虫歯のリスクが比較的少ない矯正方法です。
しかし、歯の裏側は表側よりも歯が磨きにくいという難点もありますので、歯科で裏側に磨き残しがないかチェックしてもらうことも大切です。
虫歯になりにくい矯正治療とは
では、虫歯になりにくい矯正治療を選ぶにはどうしたらよいのでしょうか。ここでは、矯正の中でも比較的虫歯になりにくい矯正治療をご紹介します。
インビザライン矯正
マウスピースを用いて行うインビザライン矯正は、いつでもどこでも取り外しが可能です。
例えば、汚れが付着しやすい食事中などは取り外すことができるため、比較的虫歯になりにくい矯正方法といえます。
また、装置自体を毎日取り外して洗浄できるため、清潔を保てるのもポイントです。しかし、逆にマウスピースの洗浄や歯磨きが不十分な場合には注意が必要です。
汚れが着いたままの状態でマウスピースを装着し続ければ、細菌が繁殖し、虫歯や歯周病のリスクは高まります。
裏側ワイヤー矯正
金属装置とワイヤーを歯の裏側に装着する裏側ワイヤー矯正は、表側矯正よりも虫歯になりにくいといわれています。
装置が裏側にあることで、口の中の乾燥を避けることができるのも理由のひとつです。装置付近が常に唾液で満たされた状態になるため、比較的細菌が繁殖しにくい状態となります。
ただし、歯の裏側は表側に比べて歯ブラシが当たりにくく、磨き残しが多くなることもあります。
歯垢が除去できていない箇所があれば、虫歯のリスクは高まるでしょう。裏側ワイヤー矯正を行う場合は、歯の裏側が適切に磨けているか歯科医院で確認する必要があるでしょう。
矯正治療中に虫歯になってしまった場合は
矯正治療中に虫歯になってしまった場合、歯科医による早期発見と早期治療が重要です。虫歯を発見した場合には、すぐに歯科医院へ受診することをおすすめします。
また、矯正専門の歯科医院では虫歯の治療を行っていない場合もあります。矯正専門の歯科医院で矯正を行う場合には、一般歯科で定期的に検診を受けることも必要です。
矯正治療中の虫歯予防方法
しかし、矯正治療中に虫歯になれば、治療がしにくくなってしまうこともあります。日頃のケアを丁寧に行い、虫歯を予防することが大切です。
ここでは、歯科矯正中の虫歯の予防方法について解説します。
歯磨き指導を受ける
矯正治療中の虫歯予防には、歯磨き指導が重要な方法のひとつです。矯正装置が歯に影響を与えるため、歯の間隙や隠れた部分に食べカスや歯垢が残りやすくなります。
そのため、矯正治療中には、歯磨きをより適切に行うことが重要です。
歯磨き指導では、歯磨きの方法・歯ブラシの選び方・歯磨き粉の選び方など、歯磨きをより効果的に行うためのアドバイスを受けられます。
例えば、矯正器具に付着した細かい汚れを描きだすために、平らな形状のブラシや歯間ブラシなどを活用することもあるでしょう。
これらを用いる場合も、適切に使用されなかった場合には、矯正器具を傷めてしまう恐れがあります。
歯科衛生士指導のもと、正しい使用方法を身につけることが重要です。
また、染色液を用いて、磨き残しチェックを受けることも有効です。正しい歯磨き方法を身につけることで虫歯を防げるでしょう。
専門クリニックでクリーニング等のケアを行う
矯正治療中には、専門クリニックでクリーニングを行うことが推奨されています。特に、取り外しができないワイヤー矯正では、金属装置の部分に汚れが溜まりやすくなります。
専門クリニックで専門の機械を用いることで、普段磨ききれない部分の洗浄が可能です。
矯正専門クリニックでは、矯正器具を取り外してクリーニングをしてもらえるケースもあります。
矯正を受けるクリニックが、矯正装置を取り外してのクリーニングに対応しているかどうか、事前に確認しておくと安心でしょう。
食生活を見直す
矯正治療中には食生活を見直すことも重要な予防方法のひとつです。特に、糖分や澱粉の多い食品は虫歯や歯周病のリスクを増加させるため、控えるようにすることが望ましいです。
また、アメやガムなどは、矯正器具に付着しやすいため避けたほうがよいでしょう。もしこれらの食品が矯正器具に付着してしまった場合、自分では取り除くことができなくなる可能性があります。
また、無理やり取り除こうとしてブラシで強く磨いたり、手で引っ張ったりした場合、矯正器具がダメージを受けてしまうことがあるため注意しましょう。
それ以外にも、過度な飲酒や喫煙は虫歯や歯周病のリスクを高める恐れがあります。
口の中の健康を保つためにも、食習慣や生活習慣には気をつけましょう。
矯正装置のケアをしっかりする
矯正治療中には、矯正装置のケアをしっかりすることが重要な予防方法です。矯正装置を装着している間には、歯の間に食べカスや歯垢がたまりやすくなります。
これらが腐敗すれば、虫歯や歯周病を引き起こす原因になります。
そのため、矯正装置を装着している時は、専用の歯ブラシを用いて装置に付着した食べカスや歯垢を取り除くことが必要です。
また、矯正装置を装着する際には、歯科医師からの説明を受け、正しい装着方法やケア方法を学ぶことも重要です。
定期健診をしっかり受ける
矯正治療中には、虫歯や歯周病のリスクが高まるため、定期的な歯科検診を受ける必要があります。
また、虫歯ができてしまった場合には、矯正治療を中断しなくてはならない場合もあります。そのため、矯正中でも3〜4か月に1回程度は歯科検診を受けるようにしてください。
虫歯ができてから受診するのではなく、できる前に予防することが重要です。
矯正治療中の虫歯が心配な方は歯科医に相談を
矯正治療中においての虫歯や歯周病が心配な方は、まず歯科医に相談しましょう。
特に、矯正治療開始前には検査をしっかり受け、口の中の状態を確認した上で治療を開始する必要があります。
また、虫歯になりやすい人は、虫歯になりやすい生活習慣や歯磨き方法を見直す必要もあるでしょう。
歯科医院では矯正器具に合ったケア方法の指導を受けられます。磨きやすい形状の歯ブラシ・フロス・歯間ブラシを用いて、適切なケアを行いましょう。
編集部まとめ
歯並びや咬み合わせを治すために行われる矯正治療ですが、治療期間中は虫歯や歯周病のリスクが高まります。
特に、不適切な歯磨きにより磨き残しが増えれば、そこから細菌が繁殖してしまいます。そのため、矯正治療中は毎日のケアと定期的なクリーニングを行うことが重要です。
普段磨ききれない部分まで洗浄することで虫歯や歯周病のリスクを軽減できます。また、定期的な歯科検診も受けるようにしてください。
矯正器具の状態や口の中の状態を定期的に確認することで、虫歯や歯周病の早期発見・早期治療が可能になるでしょう。
参考文献
- 矯正歯科治療中のケア方法|公益財団法人 ライオン歯科衛生研究所
- 医療法人三美会 のぶしま矯正歯科
- インビザライン中の食事・飲み物について|医療法人 真摯会 まつもと歯科
- マウスピース矯正は虫歯になりやすい?なったら治療は?|医療法人 真摯会 まつもと歯科
- 矯正治療中のお食事|利府デンタルクリニック
参考サイト