矯正中食事で痛みを感じるのはなぜ?痛みの原因や抑える方法・治療中におすすめな食べ物を紹介します
矯正治療をはじめたら「痛くて食事が摂れない…」という人も多いです。特に、装置を装着して間もないころは、痛みに悩まされる人が少なくありません。
多くの場合、2〜3日すれば痛みを感じなくなることがほとんどです。
しかし、場合によっては口内炎などのトラブルがくり返し発生することもあるため、適切な予防ケアを行うことも重要です。
今回は、矯正中の食事で痛みを感じる原因や抑える方法・治療中におすすめな食べ物を紹介します。
監修歯科医師:
酒向 誠(酒向歯科口腔外科クリニック)
目次 -INDEX-
矯正中の食事は痛みを感じることがある
歯科矯正中、特に初期の段階では食事による痛みを感じることがあります。これは、矯正装置の装着によって歯や口腔内に力がかかることが原因です。
また、特にワイヤーやブラケットが口の中に新しく装着されて間もない場合は、慣れるまで痛みを感じる場合もあります。この痛みは、2〜3日から1週間程度で軽減されるのが一般的です。
矯正治療中の食事で痛みがある原因
矯正装置を装着して数日は痛みが出やすいことは先に述べましたが、特に食事中に痛みを感じることも多いです。ここでは、食事で痛みがある原因について解説します。
口内炎が出来ている
矯正装置が口の中に新しく装着されると唾液の分泌が減り、口腔内の細菌が増えやすくなります。これによって、口腔内の炎症が引き起こされるのが、口内炎の原因です。
口内炎が出来やすい部位としては、唇の裏が最も多いです。しかし、頬などの広範囲に口内炎が発生することもあります。これは、矯正器具が粘膜に当たって傷つくことが主な原因です。
しかし、他の原因で口内炎が発生している場合も考えられます。例えば、金属アレルギーによる口内炎です。ワイヤー矯正で金属によるアレルギー反応が出ることもあるため注意が必要です。
矯正器具が当たっている部分の粘膜があまりにも炎症を起こしているようであれば、我慢せず、一度歯科医院へ受診するようにしてください。
噛むときに生じる刺激によるもの
歯科矯正中、特にワイヤーやブラケットが口の中に新しく装着される場合は、噛む時にそれらの装置が歯や舌に当たり、刺激を引き起こす原因にもなります。
これによって噛む時に痛みが生じることも多いでしょう。また、硬い食べ物を噛む時に装置に力がかかることで痛みが発生することもあります。
特に、慣れるまでの間は食事中に痛みを感じる場合が多いです。
硬い食べ物は避け、柔らかい食べ物を食べるようにするなど、負担を軽減する必要があります。
もし、肉や魚などを食べる場合には、食べやすいように細かくカットするなども対処法の1つとなるでしょう。
歯が動いている
歯科矯正中、特に歯が動き始める段階では、痛みを感じやすくなります。多くの場合、装着後数日~1週間程度は痛むことが多いです。
歯が動く痛みの場合、時間と共に落ち着くことがほとんどです。痛みが強い場合には、歯に優しい食材を選ぶこと・食事をゆっくりと噛むことを心がけてみてください。
しかし、あまりにも痛みが辛い場合には、かかりつけの歯科医院へ相談しましょう。
矯正中に口内炎が出来やすくなる理由
歯科矯正中は器具の装着により、唾液の分泌量が減少します。これにより、唾液による自浄作用が阻害され、口腔内の細菌が増えやすい状態になるため注意が必要です。
まず、唾液には口の中の汚れや細菌を洗い流すための「自浄作用」があります。しかし、矯正装置を装着することで唾液の分泌量が減ってしまいます。
また、矯正装置により口が閉じにくくなり、口の中が乾きにくい状態になることもあるでしょう。
そのような状態が続いた場合、口の中の汚れや菌を洗い流せず、細菌が増殖しやすくなってしまいます。
さらに、器具と粘膜の接触により口内炎が引き起こされることもあるでしょう。
その他にも、矯正装置により、歯の間に食べカスなどが挟まりやすくなり、細菌が繁殖しやすくなるのも原因の1つです。
あまりに炎症がひどい場合には、金属アレルギーなども考えられますので、歯科医に相談するようにしてください。
矯正治療中の食事での痛みを抑える方法
矯正装置を装着してから数日間は痛みが強く、食事が摂れないことも多いです。ここでは、矯正治療中の食事での痛みを抑える方法を確認しましょう。
食べ物を変える
歯科矯正治療中の食事によっては、歯や歯茎に痛みを引き起こすことがあります。特に、硬い食べ物は、歯や歯茎に負担をかけます。痛みの強い時期に食べることは避けたほうが良いでしょう。
例えば、アメ・ガム・モチなどの硬くて矯正器具に付着しやすい物も避けるようにしてください。
矯正器具に付着してしまえば、その部分に細菌が繁殖しやすくなります。さらに、無理に取り除こうとすれば、矯正器具がダメージを受けてしまうことも考えられます。
そのため、矯正治療中は、軟らかい食べ物や歯に負担のかからない食べ物を選ぶことが望ましいです。例えば、スープ・ヨーグルト・野菜ジュース・ゼリー飲料などが挙げられます。
また、歯の健康を保つためにも、口腔ケアは重要です。痛みが強い場合、歯磨きを軽く済ませてしまうこともあるでしょう。
しかし、矯正中は虫歯にもなりやすくなるため、毎日の歯磨きは丁寧に行うようにしてください。
痛みが強い時の歯磨き方法に不安があるようであれば、かかりつけの歯科医院で歯磨き方法の指導を受けるのもおすすめです。
口内炎の予防ケアを行う
矯正中の食事での痛みを抑える方法として、口内炎の予防ケアを行うのも大切です。口腔内の清潔を保つことはもちろん、食事内容に気を使うことも予防に繋がります。
例えば、辛い食べ物や酵素が多く含まれるフルーツなどは、粘膜に刺激を与えやすいです。
そのため、特に矯正を始めたばかりの段階では避けることが望ましいでしょう。
一方、口内炎の回復に役立つビタミンを多く含む食材は積極的に摂り入れるようにしてください。例えば、バナナやヨーグルトなどは柔らかく、ビタミンも豊富なのでおすすめです。
また、適度な睡眠やストレス発散を行い、免疫力の向上に努める必要もあるでしょう。
その他にも、過度な飲酒や喫煙は口内環境の悪化に繋がります。口内炎を予防するためにも、避けることが望ましいです。
矯正中におすすめな食べ物とは
では、矯正中の痛みを抑えるためには、どのような食べ物を選べば良いのでしょうか。ここでは、矯正中におすすめな食べ物について解説します。
柔らかい食べ物
歯科矯正治療中においては、歯や歯茎に負担をかけない食べ物を選ぶことがおすすめです。
例えば、スープ・ヨーグルト・サラダ・フルーツなどが挙げられます。
また、骨や硬い皮を取った鶏肉や魚などであれば、矯正中に食べることが可能です。
ただし、歯科矯正装置によって特に初期段階には、軟らかい食べ物だけを食べることを推奨する場合もあります。
歯科矯正治療中の食事については、かかりつけの歯科医に確認するようにしてください。
矯正装置に挟まりにくい食べ物
矯正期間中は、矯正装置に挟まりにくい食べ物を摂るようにしましょう。例えば、肉や野菜は柔らかく煮て、細かくカットするのがおすすめです。
特に、細長いものや硬くて大きなものは避けるようにしてください。
例えば、ニラやえのきなど、細長くて歯の間に挟まりやすいものは矯正器具にも挟まりやすくなります。
その他、アメ・ガム・キャラメルなど、矯正器具にくっつきやすい食べ物も避けたほうが良いでしょう。
これらの食品は矯正器具に貼りついて取れなくなることがあります。また、無理に取り除こうとすれば、矯正器具が歪んでしまったり取れてしまったりすることがあるため危険です。
水分多めの食べ物
水分多めの食べ物は、口への負担が少ないためおすすめです。例えば、スープ・ジュース・スムージー・水分を多く含むフルーツなどが挙げられます。
矯正中は痛みにより食事を摂ることを躊躇してしまうことがありますが、水分補給は重要です。口腔内が乾燥すると細菌が繁殖しやすくなります。
痛みが強くても、十分な水分摂取を心がけましょう。しかし、ペットボトルに口をつけて直に飲むのは避けるようにしてください。
直に口をつけたペットボトルを放置し、また口をつけることを繰り返した場合、ペットボトルの中には細菌が繁殖します。
そのような場合、細菌を自ら口の中に入れることになってしまうため注意が必要です。
コップを使用することや一度で飲みきれるパック飲料などを用いて、清潔な飲料を摂取するように心がけましょう。
ビタミンB2が多い食べ物
矯正中におすすめな食べ物として、ビタミンB2が多い食材が挙げられます。例えば、鶏肉・魚・卵・乳製品・大豆・バナナなどです。
ビタミンB2には、皮膚や粘膜を正常に保つための働きがあります。そのため、積極的に摂り入れることで口内炎の回復や予防に役立つでしょう。
ビタミンB6が多い食べ物
ビタミンB6もまた、矯正中におすすめな栄養素の1つです。ビタミンB6を多く含む食材には、鶏のささみ・まぐろ・レバー・うなぎ・納豆・ヨーグルトなどが挙げられます。
ビタミンB6には、免疫力の強化やストレスを軽減する効果があります。また、ビタミンB2とB6は同時に摂取したほうが効果的です。矯正期間中の食事には、ぜひ摂り入れてみてください。
矯正中の食事で注意すべきことは?
矯正中の食事で注意すべきことは、主に以下の6つです。
- 矯正装置に挟まりにくく、くっつきにくい食べ物を選ぶ。
- 細かいものや固くて大きなものは避け、軟らかく小さなものを選ぶ。
- 水分を十分に摂取する。
- ゆっくりと慎重に食べる。
- 栄養バランスの良い食事を心がける。
- 医師か歯科医師の指示に従う。
矯正中は口にするものに注意が必要ですが、適切な食事を心がけることでトラブルを防げます。
また、いくらビタミンを積極的に摂取しても、過度な飲酒や喫煙を続けていれば十分な効果を得ることができません。
アルコールの分解や喫煙によって、体内のビタミンが大量に消費されてしまいます。その他にも、ストレスや睡眠不足によりビタミン不足になってしまうこともあるでしょう。
口の中の状態を良好に保つためにも、健康的な生活を心がけてください。
矯正中の食事で痛みが気になる場合は早めに相談を
矯正装置の装着による痛みは、時間の経過と共に治まっていくのが一般的です。
しかし、あまりにも矯正中の食事で痛みが気になる場合には、早めに歯科医師に相談をすることをおすすめします。
特に、矯正装置を装着して間もないうちは、口腔内の痛みや不快感が起こることが多いです。痛みを我慢することはストレスとなり、さらなるトラブルの原因にもなります。
必要に応じて痛み止め薬を処方しますので、かかりつけの歯科医に相談してください。
編集部まとめ
矯正治療をはじめると、多くの人が直面する「痛み」について解説しました。矯正治療の痛みには個人差がありますが、中には食事が摂れないほどの痛みを感じる人もいます。
その原因には、口内炎による痛み・歯が動く痛み・矯正装置による痛みが挙げられます。
しかし、多くの場合、2〜3日もすれば痛みは引いていくでしょう。食事中の痛みが強い場合には、口の中に負担がかからない食べ物を選ぶことを心がけてみてください。
ただし、あまりにも痛みが強い場合には我慢せず、かかりつけの歯科医に相談しましょう。
参考文献
- 矯正歯科治療中の痛みはどの程度ですか?|医療法人社団 ファミリアソサイエティ ファミリア歯科矯正
- 矯正歯科治療に伴うリスクや副作用について|神奈川歯科大学附属病院
- 矯正治療について|九州大学病院 矯正歯科
- 矯正歯科治療について|明海大学歯学部付属 明海大学病院 矯正歯科
- 矯正歯科|東京歯科大学 水道橋病院
- 矯正歯科|公立大学法人 九州歯科大学附属病院
- 矯正歯科|東京歯科大学 千葉歯科医療センター
- 口内炎の原因|くすりと健康の情報局by第一三共ヘルスケア
- 治療期間中の注意など|医療法人社団 矯晶会 杉山矯正歯科医院
- 矯正治療Q&A|国立大学法人 東京医科歯科大学
参考サイト