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小児矯正で寝るときだけ装着する装置はある?効果を高める方法や注意点も解説

 公開日:2025/09/08
小児矯正で寝るときだけ装着する装置はある?効果を高める方法や注意点も解説

小児矯正は、成長する力を利用して顎の骨の成長や歯の生え変わりをコントロールすることができる治療法です。

歯並びに影響する口腔周囲の癖や習慣を取り除き、筋肉のトレーニングを行うこともあります。

特に、寝るときだけ装着するマウスピース型小児矯正は、子どもへの身体や精神面への負担が少ないため近年注目されている歯列矯正装置です。

起きているときに1時間程度装置を使用してトレーニングを行うことも重要ですが、寝るときだけ装置を使用する場合でも小児矯正の効果を得ることは可能です。

本記事では、小児矯正の代表的な装置を紹介するとともに、寝るときだけのマウスピース型矯正が向いているケースやメリット・デメリットを解説します。

また、小児矯正の効果を高めるコツや注意点も詳しく紹介します。

小田 義仁

監修歯科医師
小田 義仁(歯科医師)

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小田歯科・矯正歯科
院長 小田 義仁
岡山大学歯学部 卒業
広島大学歯学部歯科矯正学教室
歯科医院勤務をへて平成10年3月小田歯科・矯正歯科を開院
所属協会・資格
日本矯正歯科学会 認定医
日本顎関節学会
日本口蓋裂学会
安佐歯科医師会 学校保健部所属
広島大学歯学部歯科矯正学教室同門会 会員
岡山大学歯学部同窓会広島支部 副支部長
岡山大学全学同窓会(Alumni)広島支部幹事
アカシア歯科医会学術理事

小児矯正で寝るときだけ装着すればよい装置

寝ている男の子
子どもの歯列矯正は「子どもが嫌がるのではないか」「学校で見た目を気にして歯列矯正装置を付けられないのではないか」などと不安に感じる保護者の方もいるのではないでしょうか。
そのため、日中は付けなくてよい歯列矯正装置があれば、使いたいと考える方も少なくないでしょう。寝るときだけでよい小児用の歯列矯正装置には、さまざまな種類があります。

主な装置は以下の3種類です。

  • プレオルソ
  • T4K
  • マイオブレイス

それぞれどのような特徴やメリットがあるのか詳しく解説します。

プレオルソ

プレオルソは、成長途中の子どもに対して使用するマウスピース型の歯列矯正装置です。プレオルソの適応年齢はおよそ4〜10歳です。
プレオルソの目的は、歯を動かして歯並びをそろえることではありません。プレオルソは、歯並びを悪くしている原因を取り除き歯並びの悪化を予防します。
その結果、永久歯が正しい位置に生えるようにすることです。
装着時間は日中の1時間程度と就寝時のみと短いため、日常生活への影響が少なくなります。
取り外しができ、素材がやわらかいため、ワイヤーやブラケットなどと比較すると痛みや不快感が出にくいことが特徴です。

T4K

T4K(ティーフォーケー)は、子どもの歯並びに影響する習慣や癖の改善を目的として作られた歯列矯正装置です。
やわらかいシリコン製のマウスピース型矯正装置を、日中の1〜2時間と就寝時に装着します。あらゆるアーチフォームや不正咬合にも適応する歯列矯正装置です。
筋肉や舌の位置を整えることにより、舌癖や口呼吸、指しゃぶりなどの改善を期待します。
T4Kの対象年齢は5〜8歳前後の混合歯列期(乳歯と永久歯が混じり合う時期)です。子どもの成長は一人ひとり異なるため、気になる場合は早めに歯列矯正の歯科医師に相談するようにしましょう。

マイオブレイス

マイオブレイスは、早期予防歯列矯正治療のための装置です。間違った口腔習癖の改善や顎の発達や位置の改善、歯並びの改善などを目的としています。
また、お顔の骨格の適切な発達を促す効果があります。
治療に適した年齢は3〜15歳で、取り外しのできるマウスピース型矯正装置の装着時間は日中1時間と就寝時のみです。
鼻呼吸や上顎につけた正しい舌の位置、正しい飲み込み方などを身につけます。さらに、患者さん専用の訓練を通して、歯や顎の正常な発達を妨げる口腔習癖を正します。

寝るときだけのマウスピース型小児矯正が向いているケース

女児の歯
寝るときだけ使用するマウスピース型小児矯正は、すべての子どもに向いているとは限りません。使用が向いている子どもの症例は以下のとおりです。

  • 歯並びの乱れが軽度である
  • 口呼吸や舌癖がある
  • 永久歯が生えそろっていない

それぞれ詳しく確認しましょう。

歯並びの乱れが軽度である

歯並びの乱れが軽度な子どもは、マウスピース型小児矯正が向いています。例えば、前歯が少し出ている、歯と歯の間に隙間があるなどの状態は軽度な歯並びの乱れに相当します。
寝るときだけのマウスピース型小児矯正は歯並びだけを矯正するのが目的ではありません。
歯列矯正治療をとおして、歯並びを悪くする原因になる悪い習慣や癖を取り除き、歯や顎の正しい成長をサポートするものです。
このような理由から、歯並びの乱れが軽度な場合に向いています。

口呼吸や舌癖がある

可愛い女の子
寝るときだけのマウスピース型小児矯正は、口呼吸や舌癖がある子どもに向いています。
なぜなら、寝るときだけのマウスピース型小児矯正装置は、歯並びを悪くする原因を取り除くことができるからです。
日常生活のなかで、子どもが無意識のうちに行っている口腔に関わる習慣的な行動を口腔習癖といいます。
例えば、指しゃぶりや舌癖、爪を噛むなどがあげられます。舌癖とは、無意識に舌を前に出してしまうことです。
上下の歯の間から舌が出ていたり、飲み込むときに舌を前に突き出したりしてしまうことがその一例です。
舌を前に押し出す癖があると歯並びに影響することがあるといわれています。また、サ行やタ行、ナ行などの発音がしにくくなり舌足らずの話し方になることもあります。
子どもに舌癖や口呼吸があると気がついたら、早めに歯列矯正歯科医院を受診し、早期に治療を開始することが重要です。その後の歯並び改善につながります。
以上の理由から、口呼吸や舌癖がある子どもは、寝るときだけのマウスピース型矯正が向いているといえます。

永久歯が生えそろっていない

寝るときだけのマウスピース型矯正は、永久歯が生えそろっていない子どもに向いています。
混合歯列期は、乳歯から永久歯に生え変わり顎骨の成長が著しい時期です。この時期に歯列や咬合の問題を早期発見できると、歯並びの異常が軽度のうちに治療できます。
軽度だからと放置すると、将来的に大きな問題に発展する恐れがあるため、早めの治療や受診を意識することが重要です。
永久歯が生えそろっていない時期は、子どもへの負担が少ない寝るときだけのマウスピース型矯正が向いています。

寝るときだけのマウスピース型小児矯正のメリット

姉と弟
寝るときだけのマウスピース型小児矯正を使うとさまざまなメリットがあります。主なメリットには次のようなものがあげられます。

  • 痛みが少ない
  • 装着時間が短い
  • 食事の制限がない
  • 学校生活やスポーツに影響が少ない
  • 口呼吸や口腔習癖の改善ができる

マウスピース型小児矯正は痛みが少ないことが特徴です。シリコーンやポリウレタンなどのやわらかい素材でできているため、従来のワイヤー型歯列矯正と比べると痛みが出にくいことがメリットです。
寝るときだけのマウスピース型小児矯正は、装着時間が短いため、日中のストレスが軽減できます。マウスピース型小児矯正装置は取り外しが可能なため、学校生活やスポーツ、音楽の習い事などへの影響が少なくなります。
取り外しができるため、食事も小児矯正装置をつける前と変わらずに摂取可能です。歯磨きがしやすいため、むし歯にもなりにくいことがメリットです。
寝るときだけのマウスピース型小児矯正は、口呼吸の改善もできます。
口呼吸を改善した方がよい理由は、お口からはウイルスやほこりなどを取り込みやすく風邪をひきやすくなるためです。
さらに、お口を開けたままの状態にすることで唾液が乾き、むし歯になりやすくなるため口呼吸は改善する必要があります。
成長期に口呼吸を続けていると、本来あるべき骨格や歯並びではなくなり、口呼吸に順応した骨格や歯並びになる恐れがあるため注意が必要です。
また、口腔習癖を改善することは将来的な歯並びによい影響をもたらすといわれています。
舌癖があると、歯を前に押し出そうとする力が強くなり、外側から押さえる唇や頬の筋力が相対的に弱くなってしまうことがあります。
これらの症状を改善することも、寝るときだけのマウスピース型小児矯正装置を使用するメリットです。

寝るときだけのマウスピース型小児矯正のデメリット

NGポーズ
さまざまなメリットがある寝るときだけのマウスピース型小児矯正装置ですが、いくつか注意するべきデメリットもあります。
寝るときだけのマウスピース型小児矯正はまだ子どもが小さいときに行う治療方法です。そのため、保護者の管理だけではうまく治療が行えません。
たとえ日中の1〜2時間と就寝時だけの装着でも、子どもが嫌がらずにマウスピースを装着しなければ治療の効果が十分に得られないため、子どもの協力が必要不可欠です。
また、マウスピース型矯正装置は取り外しができるのがメリットの反面、紛失や破損のリスクを伴います。また、取り扱い方によっては変形してしまう恐れもあります。
変形した装置を使い続けることは、歯や歯茎にダメージを与えかねません。
寝るときだけのマウスピース型小児矯正は軽度の歯並びには適しています。しかし、症例によっては治療が困難な場合や、治療を行っても十分な効果が得られない場合があります。
子どもの歯並びが気になる場合は、早期治療を行うことで、身体への負担が少なくなるためできるだけ早期に歯列矯正の歯科医師に相談するようにしましょう。

寝るときだけのマウスピース型小児矯正の効果を高める方法

矯正器具
次に、寝るときだけのマウスピース型小児矯正の効果を高める方法を紹介します。主な方法は次のとおりです。

  • 初期は日中も装着する
  • 装着時間の記録をつける
  • MFT(筋機能療法)を活用する

この3点を以下に詳しく解説します。

初期は日中も装着する

基本的に寝るときだけのマウスピース型小児矯正装置は日中に1時間程度の装着です。
しかし、治療初期の段階では日中に装着する時間を1時間以上にすることで効果を高めることができるようになります。
特に、小さな子どもは装置に慣れるためにも、宿題の間や夕方に装着するなど寝るとき以外に装着時間を設けるとよいでしょう。

装着時間の記録をつける

記録
決められた時間に歯列矯正装置を使用することで、期待する治療効果が得られるため、子どものモチベーション維持が重要です。
保護者の方は装着時間の記録をつけるとともに、子ども向けにはシールやタイマーなどを活用して装着の記録を可視化するとよいでしょう。
親と子どもが工夫して、協力しながら楽しく治療できる仕組み作りは、効果を高めることにつながります。

MFT(筋機能療法)を活用する

MFT(筋機能療法)は、歯並びや噛み合わせに影響する舌や唇および頬など、口腔周囲の筋肉の機能を改善する訓練方法です。
お口周りの筋肉の機能を改善すると、筋肉のバランスが整い、お口周りの悪い習慣が改善されます。また、歯列矯正後の後戻りも起きにくくなります。
このようにMFTを活用すると、寝るときだけのマウスピース型小児矯正の治療効果を高めることが可能です。

寝るときだけのマウスピース型小児矯正の注意点

説明を聞く親子
あらためて寝るときだけのマウスピース型小児矯正の注意点を確認しておきましょう。注意を守ることで、治療を計画どおりに進めることができます。
主な注意点は以下の4つです。

  • 装着時間を守る
  • 毎晩正しく装着されているかを確認する
  • 日中の口腔ケアをしっかり行う
  • マウスピースを清潔に保つ

ここでは一つずつ丁寧に解説します。

装着時間を守る

寝るときだけのマウスピース型小児矯正装置の基本的な装着時間は、日中が1時間程度と就寝時です。
定められた装着時間を守ることは、治療を成功させるために重要です。装着時間が短いと、計画どおりに治療が進まず、治療が長期化する場合があります。
装着時間を守るためには小さな子どもだけでなく、保護者もサポートするようにしましょう。

毎晩正しく装着されているかを確認する

歯列矯正治療を始めたら、毎晩子どもが正しくマウスピース型小児矯正を装着できているかを確認しましょう。
慣れないうちは、正しく付けられない場合があります。正しく装着できていないと、計画どおりに治療が進まなくなってしまい、治療期間が伸びてしまうことにもつながります。
そのため、保護者の方が毎晩正しく装着されているかを確認することが重要です。

日中の口腔ケアをしっかり行う

歯を磨く姉弟
マウスピース型矯正装置は取り外しが可能なため、歯列矯正治療前と同様に歯磨きが行えます。治療期間中は、歯と歯の間に隙間ができやすくなります。
そのため子ども自身の歯磨きだけでなく、保護者による仕上げ磨きのフォローと、デンタルフロスを併用した口腔ケアが重要です。

マウスピースを清潔に保つ

マウスピース型小児矯正装置は毎晩使用するため、清潔に保つことが大切です。
就寝中に使用する装置は、細菌や汚れがつきやすいため清潔に保っていないとむし歯や思わぬ口腔トラブルを引き起こしてしまいます。
使用後は、毎回マウスピースをきれいに洗います。または、専用の洗剤で定期的に洗浄するのもよいでしょう。
マウスピースを清潔に保つことで、トラブルのない健康的な口腔環境が維持できます。

まとめ

説明を聞く親子

寝るときだけ装着するマウスピース型小児矯正は、歯並びの乱れが軽度の場合に有効とされ、口呼吸や舌癖の改善ができる歯列矯正装置です。

痛みが少なく、取り外しが可能なことから日常生活への影響があまりありません。しかし、治療中は決められた装着時間を守る必要があるため保護者の協力が重要です。

混合歯列期は、成長する力を利用した歯列矯正治療ができる時期です。歯並びの乱れを早期発見し早期に治療を開始すると、顎の成長を誘導し、永久歯が正しく生えるようになります。

MFT(筋機能療法)を活用すると後戻りしにくい効果が期待できます。

子どもの歯列矯正は、歯並びが気になったらできるだけ早く歯列矯正歯科の医師に相談することが重要です。

この記事の監修歯科医師