「歯周病」でも『インプラント』はできる? 治療を成功に導く3つのポイントと考え方

「歯周病だとインプラントはできないのでは?」と治療を諦めかけている人や、不安に感じている人も多いのではないでしょうか? インプラントを成功に導くためには、手術前の徹底した準備や治療後のケアにくわえ、「インプラントの設計」や「価値観にあった治療の選択」も重要なようです。そこで、歯周病の人がインプラント治療に際しておさえておきたい3つのポイントを、葛西駅前あなたの歯医者さんの久保田先生に解説してもらいました。
目次 -INDEX-

監修歯科医師:
久保田 達也(葛西駅前あなたの歯医者さん)
インプラント治療前のステップ:徹底した歯周病治療の重要性

編集部
歯周病がある状態で、インプラント治療を受けることはできるのでしょうか?
久保田先生
基本的に、歯周病がある状態でインプラント治療をおこなうことはできません。お口の中に歯周病菌が多いと、インプラントも細菌に攻撃されてしまい、良好な結果を得ることができないからです。インプラントは天然歯に比べて防御機能が弱いため、まずは土台となるお口の環境を整えることが絶対条件となります。
編集部
インプラントが天然歯よりも「防御機能が弱い」のはなぜでしょうか?
久保田先生
編集部
その「徹底的な治療」とは、具体的にどこまでおこなうとよいのでしょうか?
久保田先生
ここが重要なポイントで、ただ歯医者さんでクリーニング(歯石除去)をするだけでは不十分です。とくに進行した歯周病(中等度~重度)では、歯周ポケットの奥深くに入り込んだ細菌を除去し、さらにポケットの深さを改善する「歯周外科治療」が必須だと考えます。くわえて、自身でしっかりとセルフケアをおこなえるようになることも、インプラント治療に臨むための前提条件です。
編集部
つまり、歯周病患者さんがインプラント治療に進むためには「お口の環境改善」と「セルフケアの向上」の両方を確立しておく必要があるのですね。
久保田先生
はい。インプラントを長期的に維持するうえでは、事前にその土台となるお口の環境をしっかり整えておくことが非常に重要です。そのような意味において、歯周病治療は単なる前準備ではなく、土台づくりそのものといってもよいでしょう。そして、土台を万全にしたうえでさらに注意すべきなのが、インプラント特有の病気である「インプラント周囲炎」です。そのリスクを回避するためにも、セルフケアの向上と徹底は欠かせません。
インプラントの歯周病「インプラント周囲炎」のリスクを減らすには?

編集部
治療後に警戒すべき「インプラント周囲炎」とはどのような病気か、詳しく教えてください。
久保田先生
インプラント周囲炎は、インプラントが歯周病になった状態を示します。先述のように、インプラントは防御機能が弱いため、天然歯の歯周病よりも進行が非常に早いのが特徴です。また、インプラントの表面はザラザラしているため、天然歯に比べて細菌がつきやすく、一度つくと取り除きにくいという性質もあります。
編集部
天然歯よりも細菌に感染しやすく、さらに進行が早いため、徹底したセルフケアが必要なのですね。
久保田先生
もちろん、インプラント周囲炎を防ぐうえで日々の歯磨きや定期メンテナンスは必須です。しかし、個人的に一番リスクになるのは「インプラントのポジション(位置)」と「上部構造(被せ物)の形状」だと思います。そもそも、磨きにくい場所に磨きにくいインプラントが入っていたら、どんなに歯磨きを頑張ってもきれいに磨くことは難しいわけです。これは患者さんの問題ではなく、設計する歯科医師側の問題だと考えます。
編集部
セルフケアの徹底にくわえ、「磨きやすい設計」でインプラントを入れることが重要ということでしょうか?
久保田先生
はい。仮に今は上手に磨けていても、年齢を重ねれば誰でも手先が不自由になる可能性があります。だからこそ、患者さん依存の治療ではなく、特別な道具や技術がなくても清掃しやすい、将来を見据えた設計にすることも我々歯科医の大切な責任だと考えています。
重度歯周病とインプラント:骨が足りない場合、治療をどう考えるべき?

編集部
重度の歯周病で歯を失った場合、インプラントに必要な骨量が足りないケースも多いと思います。その場合でも、治療は可能なのでしょうか?
久保田先生
歯周病で骨を多く失った場合でも、「骨造成」という骨を増やす手術をおこなえば、インプラント治療は可能です。一方で、骨造成には半年から1年と長い期間がかかるため、その間はしっかり食事ができない可能性があります。そのため、骨造成をしてまでインプラントを入れる必要があるかどうかは、慎重に判断することが大切です。
編集部
骨造成をすればインプラントが入れられても、それが最善の選択とは限らないケースもあるのでしょうか?
久保田先生
例えば、高齢の患者さんにとって長い期間、食事がしっかり摂れないことは健康面において大きなデメリットです。したがって、インプラントで長い治療期間をかけるよりも、別の方法で早く噛めるようにする方が、生活の質を上げるという点において最良なケースもあります。いずれにしても、どの治療が最善かは患者さんの価値観次第ですから、メリット・デメリットを理解したうえで選択していくことが重要です。
編集部
技術的に可能か否かだけでなく、「年齢」や「生活の質」をふまえて治療を選ぶことも重要なのですね。
久保田先生
はい。「骨が足りなかったら骨造成」と安易に考えるのではなく、その人の年齢や生活状況、健康状態などを考慮して、インプラント以外の選択肢も検討することが大切です。患者さんによって歯周病が重症化した背景もさまざまですから、その人にとって最善のゴールはどこなのかを見極めることも、我々歯科医の役割だと考えます。
編集部
最後に、読者へメッセージをお願いします。
久保田先生
歯周病のある人のインプラント治療では「インプラントができるか・できないか」という技術面の問題に目が行きがちです。しかし、インプラントを入れることは治療全体のゴールではなく、あくまで手段の1つに過ぎません。大切なのは、目先の問題にとらわれず「最終的にどうなりたいか・どうしたいか」という理想のゴールを設定することです。その実現のために、インプラントが最適な手段だと感じたら、信頼できる歯科医に相談し、納得のいく選択をしていただけたらと思います。
編集部まとめ
歯周病の人がインプラント治療を受けるにあたっては、「歯周病治療の徹底」「インプラント周囲炎への備え」「自身の価値観にあった治療の選択」の3点が重要な指針となります。まずは、最終的にどのようなゴールを目指すかを定め、そのゴールに向けて最良の選択を一緒に考えてくれる歯科医を見つけていきましょう。
医院情報

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| 診療科目 | 歯科 |




