歯周病治療の前提となる歯周病検査とは
歯周病かどうかを診断するためには、歯周病の検査をまず行わなければなりません。
歯周病の検査とは何をするのでしょうか。そもそも歯周病はどのような症状が現れるのでしょうか。
歯周病について、また検査の受け方について詳しくまとめてみました。
この記事の監修ドクター:
星原 英吉 歯科医師(ファースト歯科医院 院長)
目次 -INDEX-
歯周病とは
歯周病とは、歯周組織に生じる病気のことです。歯周組織とは、歯を支えている組織です。
歯周組織は、歯肉(歯茎)、歯槽骨(歯を支えている骨)、歯根膜(歯槽骨と歯根を繋げている薄い靭帯の様な組織)、セメント質(歯根の表面にある、歯根膜を歯根に接合している硬組織)の4つの組織から成り立っています。
歯周病検査の目的ってなに?
歯周病の正しい診断を行うためだけではなく、診断の結果に応じた適切な治療計画を立てるための情報を得るために行なわれます。つまり、これが歯周病の検査の目的です。
歯周病の検査にはいろいろな検査がありますが、全ての検査が必要となるわけではありません。患者さんに応じて必要な検査をピックアップして行います。
最初に行われるのが問診で、その次が歯周組織検査①となります。
歯周病検査の問診で行うこと
歯周病の検査と関係ないように思われるかもしれませんが、診断の第一歩となる検査が問診です。
問診では、まず患者さんが来院した理由を、特に歯周病が気になって来院した場合は、歯周病治療に対する希望を聴取します。
そうでない場合で歯周病を発症しているなら、歯周病に気がついていない、歯周病に対する自覚が少ないということを意味します。
次いで、全身疾患や内服薬の有無、アレルギーがないかを聞きます。たとえば高血圧症の治療薬の副作用で歯肉が腫れてくることもあるので、大切です。
歯みがきや食習慣などの生活習慣のチェックも欠かせません。
歯周組織検査①で行うこととは
歯周組織検査①は、歯周病の診断と治療計画を立てるために行われる検査です。
歯周基本検査
歯周基本検査は、歯周病の検査のベーシックとなるものです。歯周ポケットの状態と歯の動揺度の検査にしぼって行われます。
歯周ポケットとは、歯の周囲をぐるりと取り囲んでいる歯と歯茎の隙間のことです。
歯周病になると、歯周ポケットが深くなっていきますので、その深さを知ることは歯周病の進行度合いを知る上で重要です。
歯周基本検査では、各歯の最も深い歯周ポケットを1歯につき1カ所記録します。
歯の動揺度とは、歯の揺れ動き具合のことです。歯周病が進行していくにつれて、歯槽骨が吸収されていきます。
歯槽骨が吸収されると、歯を支える力が弱くなるので、歯がグラグラ動くようになります。
歯の動き具合もまた、歯周病の進行度合いを知るために大切な要素なのです。歯の動揺度を調べるときは、ミラーの歯の動揺度分類を用いて評価します。
ミラーの歯の動揺度分類で歯の振れ幅をチェックする
ミラーの歯の動揺度分類では、歯の動揺度を0〜3度までの4段階に分類しています。0は、揺れ幅が0.2[mm]以内に収まっている状態で生理的動揺、つまり正常になります。
1度は、唇舌方向に0.2〜1.0[mm]程度動くもので、軽度とされます。2度になると、唇舌方向や、隣り合う歯の方向に1〜2[mm]動くようになります。2度は中等度と評価されます。
3度にいたると、唇舌方向や、隣り合う歯の方向に2[mm]以上動いたり、垂直方向にも動くようになります。
したがって上から歯をおさえたら、歯が沈み込みます。3度の症状を認めると重度と判定されます。
歯周精密検査
歯周精密検査は、歯周基本検査よりも細かく歯周組織の状態を調べる検査です。
歯周ポケットの検査は、歯周基本検査が1歯あたり1カ所だったのに対し、1歯あたり4カ所以上測定します。歯周組織の状態によっては、6カ所測定することもあります。
歯周組織の炎症部位を調べるために、歯周ポケットを測定したときの出血の有無を記録します。出血したら、歯周組織に炎症が起こっていると判断されます。
口の中の清掃状態、つまりどれだけきれいに保っているかを調べます。これを調べるために行われるのがプラークコントロールの状態の評価です。プラークの付着具合は、視診や触診だけでなく、専用の染め出し液を使って検査します。
歯の動揺度も調べます。動揺度の検査は、歯周基本検査と同じくミラーの動揺度の分類に基づいて行います。
必要に応じて、全ての歯の噛み合わせ状態や被せものや詰め物の状態も調べます。
レントゲン写真による検査
レントゲン写真による検査を行うと、目で見ることができない歯槽骨や歯根膜などの歯周組織の内部状態を確認できます。
レントゲン写真は、歯周組織の病変を検査するためには欠かせません。レントゲン写真には、パノラマレントゲン写真撮影とデンタルレントゲン写真撮影が主に行われます。
パノラマレントゲンとは、口内全体を写し出すことができるレントゲン写真です。全体的な状態を一目で確認出来る反面、細かいところまで写し出されないという欠点があります。
一方、デンタルレントゲンは、歯2〜3本程度の狭い範囲のレントゲン写真です。
パノラマレントゲンのように、広い範囲を一度に確認することができませんが、細かいところまで写し出すことが出来るのが、デンタルレントゲンの利点です。
パノラマレントゲンを撮影する代わりに、手間はかかりますがデンタルレントゲンを10〜12枚撮影して、お口全体の評価をすることもあります。
口腔内写真による検査
お口の中のカラー写真を撮影しておけば、カルテに記載する言葉や数字では表すことが難しい歯肉や噛み合わせなどのお口の中の状態を記録することができます。
初診時に撮影しておけば、治療による歯周組織の変化を客観的に比較することも出来ます。
患者さんにとっても、見えにくい奥歯の歯周組織の状態を確認できるため、治療の必要性や効果をわかってもらいやすくなる効果もあります。
その他の検査
歯の表面に付着したプラークや唾液を採取して、そこに存在する細菌を検査することがあり、細菌検査の方法としては、細菌のDNAを調べる方法や酵素を判定する方法があります。
歯周病の原因は、歯周病菌にあるので、プラークの中に含まれている歯周病菌の量や種類を判定することは、特に重症の歯周病の場合に有用です。
噛み合わせの検査もあります。噛み合わせが良くないために、歯周組織がダメージを受けてしまうことがあるのです。これを咬合性外傷といいます。
歯周組織検査②で行うこととは
歯周組織検査②は、歯周組織検査①を行ない、歯周病の基本治療が終わった後に行なわれる検査で、基本治療の効果を判定します。
ここで行う検査の内容は、歯周組織検査①と同じです。
同じなので、治療開始前に行なった歯周組織検査①の結果と比較することで、歯周組織の状態が治療によってどのように変化したかを確認できます。
この段階で、歯周組織の健康状態が回復されたと判断された場合は、治癒となり、歯周病治療は終わりになります。
もし、歯周組織の状態が、健康になったとは判断できない場合は、更に治療が継続されます。以降、これが反復されます。
部分的再評価
進行した歯周病に対して、基本治療ではなかなか効果が得られないことがあります。
この時に行われるのが、歯周外科治療です。歯周外科治療とは、歯周病に対して行われる手術のことです。
歯周外科治療は、全ての歯に行うことはありません。あくまでも歯周病が進行した歯が対象です。
そこで、歯周外科治療では、その効果を評価するため、手術をした患部に治療後の再検査を行います。これが部分的再評価です。
歯周外科治療後の傷が落ち着くのに、一般的に2〜4週間以上の日数が必要です。したがって、部分的再評価は、手術後2〜4週間以上経過してから、歯肉の炎症の状態や、歯周ポケットの状態を中心に検査します。歯周ポケットの深さを調べる際には、歯周精密検査に準じて、1歯あたり4カ所以上測定します。
歯周病を治すには、歯周病の検査が必要です
病気の治療を行うためには、正しい診断を下すことが大切です。診断を下すために必要な行為が検査です。
これは歯周病も同じです。歯周病を正しく診断するためには、歯周病の検査が必要となります。
歯周病の検査としては、問診・歯周組織検査が挙げられます。歯周組織検査とは、歯周病の状態を評価する目的で行われる検査で、歯周基本検査と歯周精密検査、レントゲン検査などが含まれます。
歯周基本検査では、歯周ポケットの深さや歯の動揺度を検査します。歯周精密検査では、歯周基本検査よりも詳細に歯周組織の状態を検査します。
歯周病の治療が終われば、再び歯周組織検査を行って治療の成果を評価します。
また、歯周病の治療で歯周外科治療とよばれる手術を行った場合は、手術を行なったところを選択的に検査する部分的再評価が行われることがあります。
歯周病と疑われる場合は歯科医院を予約し、しっかりと検査を受けるようにしてくださいね。
歯周病は、痛みを伴わずに進行する病気です。ご自身ではなかなか発症に気付かないという、怖い側面があります。そして、痛みが出たり歯が抜けたりしてからでは、できることが限られてしまうのです。したがいまして、自覚症状の出る前から検査を受け、健康な状態を維持していくのも歯周病治療に含まれるでしょう。むしろ、昨今の傾向としては、こうした動きが高まりつつあります。ぜひ、普段使っているハブラシを持って、歯周病検査を受けてみてください。歯周病の早期発見は元より、「健康であること」がわかっただけでも大きな成果です。定期検診を続け、その状態を末永く守っていきましょう。
監修ドクター:星原 英吉 歯科医師 ファースト歯科医院 院長
歯周病治療でおすすめの歯医者さん 関東編
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出典:https://www.haisha-guide.jp/
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