抜かずに虫歯が治せる?根管治療における顕微鏡治療とは!
歯の内部の歯髄やその周辺組織にまで虫歯の菌が進行してしまうと根管治療が必要となります。この根管治療は難しい治療で、場合によっては抜歯という選択をしなければならないケースもあります。
しかし近年の歯科医療技術の進歩は、歯髄やその周辺組織の治療である根管治療の成功率の飛躍的な向上をもたらしました。
特に、マイクロスコープとも呼ばれる歯科用の顕微鏡を使用しておこなわれる顕微鏡治療は、歯科医療のあらゆるシーンで活用されており、歯科医療全体の可能性を拡大したと言っても過言では無いのです。
そこで今回は、歯髄やその周辺組織の治療である根管治療における顕微鏡治療の有用性などについてMedical DOC編集部がお届けいたします。
この記事の監修ドクター:
河合 啓太 歯科医師(河合歯科医院 院長)
目次 -INDEX-
根管治療の基礎知識
根管治療における顕微鏡治療について解説するまえに、まずは根管治療の基礎知識についてしっかりと確認しておきましょう。
根管について
根管治療の対象箇所となる「根管」とは、歯の根からのびる神経と血管である「歯髄(しずい)」が格納されている歯の内部のことを指しています。
虫歯が進行すると歯表面のエナメル質を突破し歯の内部の象牙質へと至ります。さらに虫歯が重症化すると象牙質を突き抜けて歯髄にまで入り込み、激しい痛みとともに歯髄を侵食し最終的には歯の欠損をはじめ全身の健康へと悪影響を及ぼしてしまいます。
歯髄や根管にまで達してしまった虫歯は自然治癒することはなく、放置することで重篤な健康被害を招いてしまう恐れがあるため歯科医師による治療が必要となります。
根管治療について
昔々は歯髄や根管にまで達してしまった虫歯には抜歯による治療が一般的でしたが、近年では歯科技術の向上にともない歯を抜くことなく根管を含めた虫歯治療をおこなうケースも増えてきました。
歯根の先端部分まで続いており歯の最深部とも言える根管治療は、その手法や根管の状態によって主に4つの治療法に分類することができます。
抜髄
虫歯などが原因となって歯髄が非常に強く炎症をおこしてしまう「歯髄炎(しずいえん)」の治療としておこなわれます。
抜髄という名が示すとおり、炎症を強く起こしてしまっている歯髄を物理的に除去することで治療がおこなわれます。
感染根管治療
歯髄炎がさらに進行すると歯髄は腐り死滅してしまいます。この時根管内部には膿や細菌が溜まってしまい、根管が細菌によって侵されてしまいます。
この状態は「感染根管」と呼ばれており、さらなる進行を防ぐために腐って死滅した歯髄やその周囲の汚れを清掃・除去する治療がおこなわれます。
この治療を指して「感染根管治療」と呼ばれています。
再根管治療
根管治療を施した根管に再び入り込んでしまったり残ってしまったりした細菌が繁殖し再び炎症を起こしてしまった根管の治療を指して「再根管治療」と呼ばれています。
先の根管治療で補填した詰め物を取り除き、再び炎症箇所の清掃をおこないます。
歯内療法外科
上記のいずれの根管治療でも治らなかった場合には、歯肉を外科的に切開し病巣を取り除く「歯内療法外科」による治療がおこなわれます。
顕微鏡治療についての基礎知識
根管治療の基礎知識についての基礎知識を確認したところで、ここでは歯科治療における「顕微鏡治療」について学んでまいりたいと思います。
顕微鏡治療とは?
顕微鏡治療とはその名の通り顕微鏡を使用した治療のことであり、歯科においてはマイクロスコープ(歯科用顕微鏡)を使用しておこなわれる歯科治療を指して顕微鏡治療と呼ばれています。
マイクロスコープの名で一般的にも知られている歯科用顕微鏡は、肉眼の20倍以上にまで視野を拡大することができ、非常に複雑な構造をしている歯の内部までしっかりと確認しながらの正確な治療を実現します。
この顕微鏡治療のメリットとして正確かつハイクオリティな治療を行うことができ、これらの治療精度の向上は再発リスクの軽減や治療効果の長期化というメリットも同時にもたらします。
顕微鏡治療のデメリットについて
顕微鏡治療のデメリットを強いて挙げるとすれば、歯科用顕微鏡が高額であることや使用する材料によっては自費診療になってしまうケースもあり治療費負担が高額となってしまうことなど、治療を受けるためのハードルが高くなってしまうことが挙げられますが、治療精度そのものについてのデメリットはなく、治療内容においてはメリットしかないと言っても過言ではないでしょう。
根管治療における顕微鏡治療について
根管治療と顕微鏡治療の基礎知識についてしっかりと確認したところで、ここからはこの記事の趣旨である「根管治療における顕微鏡治療」について解説してまいりたいと思います。
歯科用顕微鏡がもたらす根管治療技術の向上
先に解説したように、歯髄が通る管である根管は歯の最深部まで続いており、およそ肉眼で視認することは困難な部位です。
歯科用顕微鏡の登場以前からももちろん根管治療は行われてきましたが、レントゲンを参考にして経験や知識を元に、見えない根管を手探りで治療することがほとんどでした。そのため除去しきれなかった菌や汚れがあった場合は症状の再発があったり再治療の必要が出てきてしまったりするケースもなくはありませんでした。
しかし、根管内部の詳細な視認を可能とする歯科用顕微鏡の登場によって根管治療の成功率は飛躍的に向上しました。
歯科用顕微鏡で根管内部の汚れや患部をしっかりと確認しながら治療をおこなうことができるため、菌や汚れの的確な除去が可能となったのです。
また、治療に際して非常に微細な器具を使用する根管治療では、器具が折れてしまい歯の内部に落ちてしまう場合があります。
従来の手探りによる根管治療では、歯の内部に落ちてしまった器具の断片を拾い上げることが困難でやむを得ず治療を断念する場合がありましたが、歯科用顕微鏡を使用した根管治療では器具破損のリスクも大幅に軽減されたことに加えて、万が一の場合にも歯の内部に落ちてしまった器具の断片を除去し、治療を継続することができるようになったのです。
このように根管治療において非常に高い治療効果をもたらす顕微鏡治療は、歯科医療先進国であるアメリカなどでは根管治療をおこなう歯科医師の教育時に必須とされるほどに絶対的な信頼を得ており、日本においても今後ますます普及が進んでゆくことが期待されている治療技術なのです。
顕微鏡治療がもたらす歯科医療技術の向上
根管治療において顕微鏡治療が絶大な効果を発揮することについて解説しましたが、顕微鏡治療による治療精度の向上は根管治療のみにとどまらず歯科治療技術全体の向上をもたらしました。
欠損した歯を補う治療として近年注目を集めている「インプラント治療」にはインプラント埋入箇所や周辺組織の精密なコントロールが必要となりますが、歯科用顕微鏡を使用する顕微鏡治療は大変精密で確実なコントロールをおこなうことを可能とし、その治療精度の飛躍的な向上をもたらします。
さらに、歯の欠損や身体への健康リスクもある歯周病の治療においても、歯周ポケット内に溜まった歯周病原菌の温床であるバイオフィルムや歯石などの明視野のもとでの除去を可能とするなど、顕微鏡治療によって精密かつ的確な治療をおこなう事が可能となります。
これら以外にも顕微鏡治療の優れた治療効果は、型取り・修復治療・歯の亀裂の発見などあらゆる歯科治療に波及し、歯科治療技術全体の向上をもたらしているのです。
顕微鏡治療の注意点
このように歯科治療において絶大な治療効果を発揮する顕微鏡治療ですが、その強力な視認効果によって従来までは見過ごされていたような微細な歯のトラブルまで発見されるようになってしまうことから、治療が長期化してしまうケースが生じるようになりました。
また、保険診療診療は制約が多く、使えない薬剤があった場合などでは顕微鏡治療が自費診療となってしまう場合も多く見られるため、次々と顕微鏡治療をおこなうことでその治療費負担が増大してしまうというケースも起きているようです。
このような顕微鏡治療の唯一のデメリットとも言える費用負担によるハードルの高さをしっかりとセルフコントロールするためにも、治療に際しては歯科医師としっかりと相談をしたうえでご自身が納得できる範囲内での治療をおこなうよう心がけることをおすすめします。
まとめ
いかがでしたでしょうか?今回は、根管治療における顕微鏡治療について解説いたしました。
根管内部の視認を可能とする歯科用顕微鏡を使用した顕微鏡治療は、根管治療において非常に高い治療効果を発揮することがおわかりいただけたかと思います。
さらに顕微鏡治療の絶大な治療効果は根管治療に留まらず、歯科治療技術全体の向上をもたらすこともおわかりいただけたかと思います。
歯の内部まで虫歯が進行してしまっても顕微鏡治療による根管治療で抜歯することなく治療できる可能性は飛躍的に向上しました。
しかしながら、虫歯は重症化する前に早期治療をおこなうことや、そもそも虫歯にならないためにしっかりと予防した方が身体的・経済的負担を抑えられるということを申し添えてこの記事を締めくくらせていただきます。
監修ドクター:河合 啓太 歯科医師 河合歯科医院 院長
顕微鏡治療でおすすめの歯医者さん 中部編
河合歯科医院
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